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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 四百七十六話 魔力の性質と夜光蝶の役割

 それまでは、宿を覆う事さえなかったアレルの魔力による感知だったが、瑠璃の助言によって変化したそれは宿の敷地を優に超えて両隣の建物に及ぶ程範囲を広げる。アレルは、そうして成功した事にも驚くが、範囲拡大に伴い意識の薄まりも酷くなると考えていた。

 しかし、実際には意識の薄まりは水を想像していた際と変わりはなく、その事からアレルは意識の薄まりが消費魔力に比例しているのではないかと考察する。


(それで瑠璃、この状態でも聞こえるか?)


 ──はい、全く問題ありません。


 瑠璃の返事に、アレルは取り敢えずの安堵を得る。しかし、そこでアレルはふと昨日のロバートからの手解きの事を思い出す。

 思い返せば、ロバートと感知法を試していた際に一度魔力を霧状に散布していた。ただ、直後にアマデウスの暴走なんかがあってアレルはすっかりその事を忘れていた。


(そういや、ロバートが言うには相手の感知に対して魔力的チャフ効果があるんだよな。なあ、瑠璃は今俺の事を感知出来ているのか?)


 ──ええ、ルリはいつでも主様のいる場所を認識出来ていますよ。


 その返しに、アレルは一瞬ロバートか瑠璃のどちらかが嘘を言ってるのではないかと疑う。しかし、直ぐにそれだけは無いなとアレルは少しでも疑った自身を恥じる。

 ただ、そうなると増々瑠璃の事が不思議に感じられてしまう。ロバート程の手練れですら、この霧状の魔力散布には闘気による感知が働かなくなったと言っていた。それにも関わらず、瑠璃は感知出来ていると口にする。

 可能性としては、魔力と闘気の違いなんて事も考えられはするが、感知阻害の起因が自身の魔力の性質にある事を知るアレルはその考えは的外れな気がしている。だとするなら、瑠璃とロバートの違いで真っ先に思い付くのは妖精と人との違いしかないとアレルは考える。

 治療時のメリルの言葉を振り返ると、瑠璃の行った治癒には魔法的な痕跡が見られなかったと言っていた。そこから考えを広げると、そもそも妖精である瑠璃には人と同じ常識が通じない可能性がある。つまり、瑠璃が普段使っている能力は魔力由来の能力ではなく、妖精としての種族由来の能力だったのではないかとアレルは考える。


(そうか······瑠璃はチャフとか判らなかったと思うけど、俺の魔力散布には周囲の感知を阻害する力があるみたいなんだ。だから、瑠璃も感知出来なくなるんじゃないかと思っていたけど、単なる杞憂にしか過ぎなかったな)


 ──阻害······ですか? 確かに、今の主様はアリシア様の魔力が少し混じっているから判り易いですけど、今の様に隙間無く主様の魔力を撒くとヒトには判らないかもしれませんね。


(アリシアの魔力が、何だって?)


 まるで、それが共通の認識みたく瑠璃がサラッと口にした内容に、アレルは大きく動揺してしまう。しかし、そんなアレルの動揺なんてお構い無しに瑠璃は話を続ける。


 ──あの、主様はこちらの世界に来た際にアリシア様の魔力に触れられたのではありませんか? たぶんですけど、その際に主様の魔力がアリシア様の魔力を取り込む形で、主様は魔力を使える様になったんだとルリは思います。


 瑠璃の言う通り、アリシアに魔力を引き出して貰った際に、どこか体内に流し込まれたアリシアの魔力を喰らう様な感覚が確かにあった。その魔力が、未だ自身の中に残っている事にアレルは少なからず衝撃を受ける。


 ──主様には判らないと思いますが、主様とアリシア様の魔力は性質こそ違えど近しい部分があるんです。そのせいで、そんな事になっているのだと思いますが、今の様に主様が魔力を使われている内に残っているアリシア様の魔力も体外へ押し出されて無くなると思います。その、元は主様の体内に存在しない魔力なので。


(それ、アリシアには何か影響はあるのか?)


 ──いえ、全く問題ありません。もし、それで何かしらの影響があるならヒトは体外へ魔力を放出する事など出来ませんから。


(そっか······なら、良いんだ)


 アレルは、アリシアへの影響が無いと聞いて心底安堵する。ただ、同時にマスラオがアリシアのお陰でと言っていた事にも合点がいく。つまり、その取り込んでいたアリシアの魔力をどうにかして、マスラオ達は自身へ語り掛けてきていたのだとアレルは思う。

 しかし、逆に新たな不安も感じ始めたアレルは、それを瑠璃に確かめる。


(なあ、もしかしてアリシアが本来のアマデウスなんて事はないよな?)


 ──あり得ません。おそらくですが、アリシア様の先祖のどなたかに主様と同じアマデウスの方がいらしたのではありませんか? それなら、魔力が近しい理由にも納得がいきますので。


 瑠璃はそう言うものの、それではまるで魔力の性質には遺伝的側面もあると言っている様なものだと思う。ただ、そうなると異世界人である自身はその遺伝的な部分での欠損が生じているのではないかとアレルは考えてしまう。


 ──主様、どうかしましたか?


(いや、瑠璃は随分と魔力関係の話に詳しいんだなと思ってな)


 ──はい、ルリも妖精郷を出るまではそこで色々と学びましたから。


(妖精郷?)


 元の世界にも、アヴァロンを始めとした理想郷や楽園の伝説は多々ある。しかし、瑠璃がここで口にしたのはこの世界に実在している場所を指しているみたいだった。


 ──ご存知ありませんか? 妖精郷とは、ルリの様な妖精全ての生まれ故郷にして妖精達の楽園です。そこは、この世界に隣り合う世界とも重なる世界とも言われていて、普通には行き来する事の出来ない異界という場所に存在しています。


 異界と、どこかSFやオカルト染みた話になってきたと感じるアレルだったが、一生懸命に話す瑠璃の言葉に耳を傾ける。


 ──そこでは、こちらに来る前に様々な(ことわり)について学ぶんです。魔力の事は勿論、その源となっている霊子の事についても。それと、ルリ達がこちらに来ているのにも理由があって、ルリ達は失われた神樹の代わりにエーテルの海の流れを正して、瘴気を浄化する役目を担っているんです。


(あっ、だからあんなに魔光蛾を敵視しているのか)


 ──はい、あれ等は正常な流れを乱す存在なので。でも、ルリ達に本来出来るのは、大気に満ちる霊子をエーテルの海に運ぶ事だけなんです。だから、ルリ達夜光蝶の群れは一つ所に留まらずに世界中を巡るのです。


 瑠璃はそう説明するものの、あまりに壮大な話にアレルは少し衝撃を受けてしまうも、色々と疑問が生じたその中でどうしても訊いておかなければならない一つを口にする。


(なあ瑠璃、それなら何で俺に付いてきてくれたんだ? 話を聞くに、瑠璃達の方がこの世界にとって人よりも上位の存在だよな?)


 その質問に、瑠璃は少しだけ間を置く。もしかしたら、背後でアリシアの相手が忙しいだけかもしれない。それでも、声を伝えてこない瑠璃からはどこか戸惑いに似たものがアレルには感じられた。

 なので、アレルは訊いたらいけない事を訊いてしまったのかもしれないと、その答えを聞く事を諦める。


(悪いな、変な事を訊いて──)


 ──待って下さい! 話しづらいとかではないんです。ただ、順序よく話すのにどこから話せばと考えていたんです。


 だが、そうして話を終わらせようとしたアレルを遮り、瑠璃はそんな事を言ってくる。


(えっと、それじゃあ?)


 ──はい、お話します。でも、少し長くなるかもしれないのでそれだけは覚悟して下さい。


 瑠璃は、そうしてアレルの覚悟を促してから、瑠璃が現在アレルの(かたわ)らにいる理由を話し始める。



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