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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 四百六十三話 全ては銀の継承者に

 色々とアリシアから話を聞く中で、アレルは公国の存在理由について色々と疑問を抱かざるを得なくなってしまった。

 まず一つに、まるでクーデターが起こる事を予め察知していたかの様に、様々な方面での対処が周到過ぎる事がある。アリシアの保護に関しては、事前に騎士団長のガルシアへ話が通っていた事もそうだが、クリムエーラ商会への依頼もあまりにも速やかに行われている。その点においては、レクスから公国まで距離がある上にクーデターの情報は周囲には伏せられていた。そこから考えると、クリムエーラが関わる前にこの世界基準で異常な速さの情報伝達が行われたとしか考えられない程、公国の動きはあまりにも早すぎる。その不自然さから、予め事が起こった際の対処を詰めていた可能性がある。

 次に、それを踏まえての両騎士団長の関係だ。アリシアの話では、ガルシアがヴォルフラムと会った機会は数回が関の山だ。それにしては、あまりにもしっかりとした信頼関係があった様に感じられる。そこから考えられるのは、両者が個人間での関係ではなく互いに信頼が揺るがない何者かの名代として関わっていた様に思える。そうなると、両者の関係は何者かによって仕組まれた関係であり、どちらもその何者かの思惑を承知の上で関係性を構築していた疑いがある。


(そして、その何者かとは一人ではなく、ルクスタニアとヴァンハート両国に一人ずつ······つまり、アリシアの父ルクスタニア国王とその兄弟である大公だと考えるのが普通だ)


 そう考えると、ヴァンハート公国建国の理由やその存在理由についても見えてくる事がある。要は、それも先程アレルが感じた王族の血脈を存続させようとする仕組みを構築する為の一環だったのだろう。何故、そこまで血脈を守る事に固執しているのかは判らない。けれど、おそらくルクスタニアとヴァンハートの両国が最重要視している人物がアリシアである事は間違いないとアレルは考える。

 アレルには、ヴァンハート公国が建国された時期は正確に判らないが、少なくともティエルナ事変の後であるのは確かだ。更に言えば、ティエルナ事変は二十年前でアリシアの年齢は十七だ。普通に考えれば、間の三年に建国とかなんて生まれるか判らない子供の為に一つの国を作るなんて馬鹿げている。だが、そこでアレルは全てを逆に考えてみる。

 そう、元々血脈を守るという意味で公国を建国する予定はあって、そこで偶然生まれたのが銀髪を継承した女児のアリシアだったとアレルは推測する。そう仮定すると、現在の公国がアリシアを守ろうと様々な根回しをしている事から、何故ルクスタニア王家がそこまで血脈を存続させる事に固執していたのかも見えてくる。


(そうなんだ、全てはアリシア······いや、銀髪を継承した女児が何よりも望まれていた一族の悲願の様なものだったんだ)


 一体、そこにどの様な意味があるのかまでは判らない。それでも、二千年もの間初代女王レイナーレから一度として生まれる事の無かった銀髪の女児に、何かしらの期待をしていたのは確かなはずだ。

 そして、その大き過ぎる期待からアレルは、ルクスタニア王家にとって銀髪の女児が単なる王位継承者ではなく、他に何らかの役割があるのではないかと睨み始める。


(そういえば、マスラオも気になる事を言っていたな。マスラオが、話せる様になったのも確かアリシアのお陰みたいな······それに、俺の本質とアリシアの本質とが相反するとかも。それって、もしかするとアリシアの······いや、ルクスタニア王家銀髪の女王の本来の役割みたいなのに関わりがあるのか?)


 しかし、それを紐解くにはアレル自身の本質が解っていないと取っ掛かりがなく手詰まりになってしまうが、現在のアレルはその本質に見当すらついていない。そうして、結局は肝心なところで手札が尽きてしまったので、仕方なくアレルは思考をヴォルフラムを特定する方法へと戻していく。

 そこへ、アレルの様子を窺っていたのか、丁度アリシアが話し掛けてくる。


「何か、良い方法思いつけた?」


「ん? え〜っと、戦い方なんて早々に身につくものじゃないから、出会い頭に襲い掛かって対処の動きから本人かどうか調べるとか?」


 アレルは、色々と推測した結果から様々な疑問の中核となっているものに指先を引っ掛けたものの、当のアリシア本人が期待されている役割に気付いていない以上この場での追及を諦める。そして、別の事を考えていたのを悟られない様に、質問する前に考えていた事でアレルは誤魔化しに掛かる。


「もぉ〜、それだと後が険悪な雰囲気になっちゃうでしょ?」


「まあ、それに偽物がそもそも騎士団の中にいる奴だったら、戦い方は騎士団長とだって似ているだろうしな」


 と、上手く誤魔化されてくれたアリシアに、アレルは自らの考えを指摘してみせる。更にアレルは、アリシアにはそのまま別の事に考えを向けてもらおうとする。


「そういや、騎士団ってどこも特徴みたいなのあったりするのか?」


「うん、ある所にはあるよ。ルクスタニアも、他と比べれば剣術を習得してる人が多いから剣の騎士団とか言われたりするの。あとは、レガリティアの方だとほとんどの騎士が魔法を修めていて魔法騎士なんて呼ばれ方をしてるよ」


 その話に、あとはミスティアークが加われば始まりの三国が揃うなと思うも、流石のアレルも現存してない国の事を口にするのは気が引けた。なので、自然と聞き慣れない言葉の方へと思考が流れていく。


「魔法騎士って、やっぱり剣と魔法の両方が扱える万能戦士みたいなやつなのか?」


 その質問に、アリシアは少し困った様な表情を浮かべながらもちゃんと答えてくれる。


「言い方が悪かったね。騎士とは言っても、レガリティアの騎士は魔法主体の騎士なの。でも、騎士の一人一人が魔法使いみたいなものだから集団戦最強の騎士団なんて言われ方もしてるよ」


「へえ、そんな言われ方をされてんなら、戦闘の開幕と共に魔法による集中砲火を浴びせてくるぐらいはしそうだな」


「うん、確かに火力といった面では敵わないと思うけど、そこは戦略を練った上で個々の戦術でどうにか出来るみたいな事をガルシアが言ってたかな」


 つまりは、広範囲魔法を撃ち込まれない程に接近出来る様な戦略を用いて、乱戦にでも持ち込めば大きな魔法は使用しにくくなるので勝ち目が出てくるという事なのだろうとアレルは考える。ただ、そこで話が戻る事になるが、盾騎士の防壁ならば魔法を防げるはずなので、他の兵科もいるだろうとはいえ今度は魔法騎士の方が手詰まりの様な状況になるのではと思ってしまう。

 しかし、そんなアレルの考えはアリシアにも伝わっていたみたいで、苦笑いをされながらアレルはそんな思考に待ったをかけられてしまう。


「一応言っとくけど、ルクスタニアとレガリティアは友好国だから互いの騎士団が戦う事は無いし、それは公国も変わらないからね」


「いや、それは解るけどさ······男ってのは、常に一番強いヤツってのを知りたいものなんだよ」


「何よ、それぇ」


 クスッと、アレルの子供の様な理屈にアリシアは笑顔を浮かべる。ただ、これもアレルがどこか子供じみた発言をした狙い通りではあった。

 何故なら、ビットーリオ率いるクーデター派に乗っ取られている現状では、ルクスタニアの騎士団が今までと同じでいるとは限らないからだ。今はまだ大丈夫かもしれないが、いずれルクスタニアの剣はどこかの国へ向けられる可能性がある。アレルは、目の前のアリシアがその可能性に気付かない様に、例え自身が笑われてもいいからと道化を演じる。

 しかし、それで完全にヴォルフラムの事を考えられる様な空気ではなくなってしまった為に、アレルはその事を後回しにするしかないなと諦める。そうして、アレルは道化を演じながらアリシアと共に残りの餃子に手を伸ばすであった。



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