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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 四百三十九話 想像を形にして

 魔力は、精神に関わる原動力の様なものだ。それ故に、ロバートの闘気みたく直接肉体に作用させづらい傾向があると予想出来る。それでは、精神の何をどうすればロバートが口にする感知能力を向上させられるのかとアレルは考える。

 そうして、少し悩んだ後にふとアレルは瑠璃の存在を思い出す。


(そういえば、瑠璃との会話も精神の波長が合ってるみたいな感じなのか?)


 アレルは、瑠璃の声が聞こえてくる仕組みを、一種の精神感応の様なものだと考える。すると、アレルの考えは徐々に加速していき様々な考え方が頭に浮かぶ。

 もしかしたら、自身の魔力が闘気と同様に使える特殊なものだからこそ、瑠璃とも波長が合って会話が成り立つのかもしれない。また、闘気が肉体に作用するものなら、魔力は精神に作用するものと仮定する事が出来る。それならば、物理法則を超える可能性を持つ精神を上手く扱う事で、何かしらの超常現象を引き起こせるかもしれないとアレルは考える。


(元々、魔法なんて奇跡みたいな力自体が超常現象そのものだ。変な常識に縛られず、想像のままに好きにやれば良いだけか)


 そうして、悔しさやわだかまりに鬱憤など一先ず全てを忘れ去り、割り切ったアレルは強引に心躍らせようと笑みを作る。他の誰とも違う自分だから、自分だけの何かをこの場で創造するしかない。その為に、もっと心躍るような想像が必要になる。

 泉から水が湧き出すみたいに、あれがしたいこう出来ればという妄想から想像力を引き出し、その想像を新たなものを創造する為の贄とする。それはまるで、世界を知らぬ子供に戻ったかの様な自由さで、目茶苦茶だけどドキドキやワクワクが止まらない、そんな妄想に唯一残した冷静な部分の自分が形を与える。

 そうして、アレルはいくつかの可能性を用意してから、再びロバートへと挑んでいく。まずは、瑠璃とのやり取りから着想を得た精神感知をアレルは試していく。やり方としては、意識だけになった際に力の奔流を外へと流した時みたいに、魔力で擬似的に拡張した精神を周囲に拡げる感覚だ。


(······なんか、自分が薄くなっていくみたいで気持ち悪い。ただ、これで実際にどうなるか試してみないとな)


「いくぞ、ロバートッ!」


 そう宣言して、アレルが笑みを作った時点で既に構えていたロバートに、アレルは正面から突っ込んでいく。それに、ロバートはどこか落胆したかの様な反応を見せた瞬間、またもアレルの視界から消える。

 ただ、今度はアレルの方が先に反応して後方へ飛び退く。すると、アレルの視界に直前までアレルがいた場所の手前で沈み込んだロバートの姿が捉えられる。


「何か、掴まれましたか······ですが、私もまだこんなものでは御座いませんよ」


 そう言うと、ロバートは再びシュッとアレルの視界から瞬時に消える。そこで、アレルはロバートの行っている事の真相を知る。要は、ロバートが行っているのはアレルの死角から死角へと高速移動しているだけなのだ。

 ただ、それが判ったところでロバートは更に速度を上げて即座に対応してくる。やっている事が簡素であるが故に、判ったところで対処がしづらい。その辺りを踏まえた上で、ロバートは闘気による活性化の特性を活かした戦法を選択している。

 反対に、アレルは選択を間違えた事を自覚し始める。何故なら、仮に精神拡張とでも呼ぶべきそれは、姿を消した瑠璃の居場所が何となく判るのと同様にロバートの所在を掴む事は出来る。しかし、アレルが常に感じている自分が薄くなる様な感覚が足を引っ張り、攻撃に移る際に反応の遅れが顕著に現れる。

 それ故に、アレルはこの精神拡張は移動中などの非戦闘時になら使えるが、戦闘中はあまり積極的には使えないと判断する。


(クソ、瑠璃とのやり取りで慣れていたお陰か一発で成功出来たのに、結果はこんなものか。仕方ない······あとのは上手く出来るか判らないが、取り敢えず片っ端から試していくか!)


 そう頭を切り替えたアレルは、回避で防戦一方だったところからロバートが背後に回った瞬間に反転し、そのまま後方へ二歩三歩と飛び退いて大きく間合いを取る。

 すると、ロバートの方も足を止めて構えを解く。


「おや? 上手く私の位置を捉えていたと思ったのですが、どうかなさいましたか?」


「······白々しいな、どうせ理由は判ってんだろ」


 ロバートの言葉を、挑発と受け取ったアレルに対して、ロバートは全てを察しているみたいにフフッと笑みを返す。

 それというのも、先程の攻防の中でアレルは何度かロバートの動きを先読みして攻撃を合わせようと試みていた。しかし、精神拡張の反応の遅れが邪魔をして、攻撃に移る予備動作の時点で避けられてただの一度も成功しなかった。


「それでも、目で追う事はせずとも私の動きは捉えられていたので御座いましょう?」


「まあな」


 言いながら、不貞腐れるみたいに鼻を鳴らすアレルに、ロバートはそれではと一つ前置きをしてくる。


「ここで、マスラオ様から教わった事を一つお伝えしましょう。あくまでも闘気の話ですが、私は今まで身体に満たす感覚で闘気を使っていたのですが、マスラオ様から教えられた活性化は体内で闘気を燃焼させる感覚で行っております。まあ、その分消耗は激しいみたいで御座いますが」


「満たす感覚から、燃焼に······」


 ロバートの言葉から、アレルは新たな着想を得る。アレルの感覚では、満たす物と言われれば水を、燃焼と言われれば炎を連想する。同様に、アレルが魔力を身体へ流す感覚も水などの液体を想像している。

 そこから、アレルはロバートが活性化の際に闘気を燃焼させる感覚で行っているなら、自身も魔力を燃焼させる感覚でやってみたらどうかと考える。


(言ってみれは、ロバートがやっている事は闘気そのものの性質を変化させている様なものだ。ただ、ロバートの言う闘気による活性化は、闘志を燃やすという言葉もある様に炎の心象と結びつきやすい。でも、魔力は精神に作用するものだ。少し炎とは縁遠く感じる。······そう、どちらかと言えば精神というものは自分という芯を残しつつも、広く満たしていく感じで、誰もが波紋を立てずに水面を歩く事が出来ない様な······)


 そこまで考えて、アレルは雷にでも打たれたかの様な衝撃が身体を貫く。精神も魔力も、水を連想させるのであれば、わざわざ性質を変化させる必要なんてない。感知に使うだけなら、自身の周囲を少しだけ満たしてやれば良い。それだけで、満たした水の波紋から自然と相手の位置が判るのだから。

 そうして結論を出したアレルは、早速自らの考えを実行に移す。今度は、先程とは違い精神までは拡げずに、ただ水に見立てた魔力を自身の周囲にだけ流れさせる。これに使うのは、循環の際に微増する使う当てのない僅かな魔力だけで良い。


「······ロバート、少し思いついた事を試してみた。もう一度、頼んでも良いか?」


 言いながら、アレルはロバートに対して徒手格闘の構えを取る。それに、呼応するかの様に構えるロバートはどこか楽しそうに笑みを浮かべる。


「構いません。アレル様が望むなら、何度でもお相手致します」


 そう口にした直後、ロバートは再びアレルの視界から消えてみせる。足音は聞こえない。そこは、流石のロバートだと感じるも、アレルにはその動きが途切れ途切れだが確かに居場所を追えている。

 途切れ途切れなのは、アレルが初めての魔力の使い方をしているから安定してないのが理由なのだろう。それでも、ロバートが向かって右側を回り込んで後方から近づいてくるのがアレルには判る。だからこそ、アレルは敢えて振り向く事なく、ロバートの攻撃に合わせて左手側に身体一つ分動いてそれを躱す。


「それ、癖なのか? さっきと同じ動きで同じ場所を狙うのは?」


「いえ、復習がてらに試しているだけに御座います。ですが、一度だけでは偶然と受け取る事も出来ますので、まだいきますよ」


 すると、ロバートの気配は再び離れていく。ピチャ、ピチャと、途切れながらもアレルに届く魔力上の波紋はロバートの居場所だけでなく、その狙いまでもが薄っすらと伝わる時もある。それによると、死角からの攻撃は止めて闘気の活性化を用いた正攻法に切り替える腹積もりのようだった。

 ただ、比較的安定しているみたいに見えるロバートに比べて、アレルの方はいくら使い道の無い魔力を利用しているとはいえ、その魔力量が安定してない為かハッキリ伝わる時とそうでない時の落差が激しい。操作自体は、微増する魔力を留めずに垂れ流しにする感覚なのでそこまで難しくないし、強化や循環には影響も与えない。

 それでもアレルは、どうにかしてロバートが相手をしてくれてるうちに、実戦で使える程度までにしたいと焦りを感じるのであった。



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