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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 四百三十六話 託された導き

 確かな手応えに喜ぶアレルだったが、身体の方は正直で苦痛で体力を削られたせいで片膝をついてしまう。流石に、それには集中していたロバートも気付き、心配したのかアレルに駆け寄ってくる。


「どうかなされたのですか?」


「いや、色々と試していたら少しな。······それより、集中途切れさせたみたいで悪いな」


「別に構いません。どのみち、私の闘気は少々流れが悪いみたいなので、循環を習得するにはもっと練度が必要だと判りましたので」


 そのロバート言葉から、アレルはやはり人それぞれに流れやすさや欠点なども違うらしい事を悟る。ただ、欠点を知ったからといってロバートが簡単に諦める訳もなく、今後も修練を重ねるつもりなのがその目から何となく感じ取れる。


「そうか······こっちは、放出の真似事に指先引っ掛けた所だ。それでも、俺の魔力操作は強化も同様に行われるから循環は強化の出力を一定にしながらでないと出来ないし、膨張した魔力を扱うには一工夫必要で大変だよ」


「そうで御座いますか。お互い、場所は違えど壁にぶつかってしまった様ですね」


「ああ、でもマスラオの奴の事思い出せば、一朝一夕で習得出来るものではないのも解るからな。俺が、ロバートより先に進めているのだって、マスラオが身体を使っていた影響があるんだろうしさ」


「随分と、熱心に集中されてると思ったら、その影響を利用されていた訳ですか」


 言いながら、ロバートは片膝をついたままのアレルに手を差し伸べてくる。アレルは、そんなロバートの善意に甘えてその手を取って立ち上がる。


「それにしても、アレル様は不思議な事が多いですね。魔力操作が、そのまま強化に繋がるとは聞いた事も御座いませんので」


「そうなのか?」


「はい、そもそも魔力と闘気を両方使える位保有している方なんていませんし、ましてや魔力を闘気の様にお使いなられるなどとは目の当たりにしてなければ信じられない程で御座います」


 そう言うロバートは、まるでアレル自身が特別なんだとでも言っているみたいな様子を窺わせる。しかし、当のアレルは果たして本当にそうなのかと疑問を抱く。

 ロバートの言う不思議な所、それが全て自身が異世界人というだけで説明出来るならアレルも納得は出来る。ただ、マスラオを始めとするアマデウスとしての能力を踏まえると、それだけは異世界人である事とは無縁な気がアレルにはしている。

 まだ、魔力や闘気の性質が違う程度なら、そこは異世界人だからという理由で片付けられる。だが、アレルの意識の奥深く、無意識の更に向こうからマスラオ達はやって来る。それも、彼等が携えてくるのは明らかにこの世界で培われた能力であり、アレルの世界とは何一つ関わりがない。

 そうなると、あくまで特別なのはマスラオ達なのであって自身は別に特別ではないとアレルは思う。元を正せば、魔力や闘気に関してもマスラオ達に起因していると考えられるので、もしアレルを特別だと言うのであればアマデウスである事の一点に絞られるべきだとアレル自身は結論づける。


「······そんなの、マスラオとかの影響の一つだろ」


「そうかもしれません。ですが、マスラオ様の御力を宿されているという事自体、アレル様がその御力を受け止められるだけの器を持っていた事に他なりません。私は、それだけでも充分に誇れる事だと考えます」


 ロバートは、どこか卑屈になるアレルを励ますかの様な言葉を伝えてくる。それに、いつまでも卑屈になってるだけじゃ前に進めないと感じたアレルは、頭を切り替えて無理矢理明るい表情を作る。


「まあ、そんな事はどうでも良いんだよ。それより、何かしらマスラオから言われていた事があるんだろ? そっちを先に済ませよう」


 そのアレルの無理矢理感に、ロバートは一瞬だけ言葉を失うも直ぐに口元に笑みを浮かべる。


「······全く、あなたという人は」


 と、呟きながらロバートは仕方ないですねと肩を竦める。


「承知致しました。アレル様がそう仰るのであれば、マスラオ様より託された事をお伝え致します。託された事は二つ、一つはアレル様がお一人でやられていたご様子の魔力や闘気の扱い方について。そして、もう一つはアマデウスとしての力をある程度任意で引き出す方法で御座います」


「アマデウスを······任意で······」


 そんな事が可能なのかと、可能であっても反動はどうするのかなど、様々な考えが浮かんでは消えを繰り返してアレルは続く言葉が出てこない。

 そんな様子のアレルを気遣ってか、ロバートはそのまま説明を始める。


「勿論、アマデウスによる反動の危険性は私も聞かされました。しかし、その反動もアレル様の命を脅かすものでない以上、最後の切り札として準備しておくのは肝要かと思われます」


「切り札······か。確かに、死ぬ一歩手前で動けなくなるかもなんて心配は無駄だからな」


 アレルは、先程の指先一本すらも動かせなくなった時を思い出しながら、そんな事を口にする。ただ、アレルはそれはさて置きと真剣な表情を作る。


「んで、任意になんて一度も出来た覚えがないんだけど、本当に出来るのか?」


「マスラオ様が仰るには、可能だそうで御座います。ですが、いくら任意とはいえどの様な力が出てくるかは賭けの要素が強いそうです」


「それ、ハズレ引いた瞬間に人生終わらないか?」


「ですから、最後の切り札としてとお伝え致しました」


 しれっと、ロバートはそんな事で言い逃れをしてくる。それに、そこはかとなく感じてきて信憑性のなさでアレルは最早聞かなくてもいいかなと思い始めるも、聞くだけ聞いておいても損はないかと思い直す。


「んで、その具体的な方法は?」


「はい、そちらにはいくつか条件を整える必要があるそうです。まずは、前提としてアレル様が窮地に立たされている事」


「まあ、窮地でもなければアマデウスになんて頼らないからな」


 アレルは、それまでのやり取りで疑いの気持ちの方が強くなり、ちょっとした茶々を入れる。しかし、そんなアレルの茶々を気にする事なくロバートは話を続ける。


「次に、それまでにアレル様の身体に魔力か闘気のいずれかが一度でも隅々まで行き渡っている事」


「なあ、今まではそんな事してなくても出てくる事があったけど、その辺は?」


「任意か、そうでないかの違いでは御座いませんか?」


 至極真っ当な返しに、アレルはぐうの音も出ずにその口を閉ざす。


「続いて、相手が強敵であるもしくは状況がどうしょうもない程に困難である事。そして、最後が一番重要だとマスラオ様が仰っていた事で御座いますが、アレル様が勝利を諦めていない事だそうです」


「最後に、なんて言うからどんな凄い条件かと思ったら、その程度で構わないのか?」


 アレルは、諦めない事なんて当たり前の事だろうと軽く考える。というのも、アレルが力を振るう時はアリシア達を守る時がほとんどだ。それなら、諦めは自身だけでなくアリシア達の終わりにも繋がる為、初めからアレルの中に諦めるなんて選択肢が無いのだ。

 そんなアレルは、諦めない事を然程難しく捉えていないが、ロバートは静かに首を左右に振る。


「いいえ、本来なら諦めない事よりも諦める事の方が簡単で御座います。諦める事自体は、ただ望みを手放せば良いだけで簡単に出来ます。まあ、後に後悔が付き纏ったり諦めるに至るまでに苦しむ事もあるでしょう。ですが、私個人は諦めない事の方が難しいと思います。なんせ、人というのは楽な方へと流れていくのが常で御座いますので」


 その言葉は、元の世界を知るアレルにこそ刺さる言葉だった。どんどん便利になる世の中で、人がその手で行うべき事は段々と少なくなっていく。そんな世界からやって来たアレルだからこそ、ロバートの言い放った言葉が身に沁みてくる。

 故に、アレルはそういう話ならば、確かに諦めるという選択肢が無い今の自身の状況は異常なのかもしれないと思うのであった。



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