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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 四百二十二話 遺された言葉

 自身が扱う魔法が、この世界の魔法とは違うと知った時と同じくらいの衝撃がアレルの全身に走る。なんせ、それまで思っていた事と真逆の事を言われたのだから、それも仕方ないと思える。

 しかし、今はそれよりも新たに浮上した疑問がアレルを悩ませる。何故、自身の魔力の運用法が闘気のそれになってしまっているのか、もしかして自身が魔力だと思っていたのは闘気だったのではないかと、アレルは戸惑いの中で混乱する。

 そんなアレルの堂々巡りを止めたのは、目の前にいるロバートが続ける言葉だった。


「アレル様の魔力の使い方は、私が扱う闘気法と同様の内勁というもので御座います」


「内勁?」


「はい、私はそこまで扱いが上手く出来ませんので体内に闘気を巡らせる内勁しか扱えませんが、もう一つ闘気を体外へ放出して攻撃や防御に転用する外勁の二つが主な闘気法となっております」


 その説明で、内功の方が外功よりも一段階高い評価になっている気功とは違うんだなと、アレルは残っている元の世界の知識から考える。しかし、そんなアレルの感想を置き去りに、ロバートは話を続ける。


「それで、一つお訊きしたいのですが、アレル様はどの様にして魔力を身につけられたのでしょうか?」


「それは、連れに一度体内に魔力を流し込んでもらって、その後で無理矢理引き摺り出したって感じかな」


 その返答に、ロバートは少し黙り込む。そんなロバートの反応に、もしかしてアリシアのやった事は何か禁忌に触れる行いだったのかと、アレルは謎の焦燥感に煽られる。

 もしも、その事でアリシアに何かしらの不利益があるなら、ここでは誰が行ったかは口に出来ない。なので、アレルは最悪の場合、ミリア辺りに泥を被ってもらおうと考える。


「······おかしいですね。その方法ならば、アレル様が魔力と闘気を勘違いされて使っている可能性が消えましたね」


「どういう事なんだ?」


 不意に、ロバートから聞こえてきた言葉に、変な事を考えていたアレルは反射的に言葉を返してしまう。それに、声に出していたかといった風に口元を隠したロバートだったが、直ぐに今更かと諦めてアレルへ説明を始める。


「いえ、先程も説明した通り魔力は精神、闘気は肉体の活動力で御座います。なので、双方で同様の扱いが出来る訳がないのですが、アレル様はそれが出来てしまっている。······その辺りは、私では門外漢なので一度メルキアで調べて頂いた方がよろしいかもしれませんね」


「メルキア······ね。まあ、色々と落ち着いたら一度行ってみようとは思っていたけどな」


「そうなのですか?」


「ああ、そこの短剣を創った奴の師匠がいるらしくてな。他にも、俺の記憶喪失がどうにかならないかと思ってとか、取り敢えず明確に行くと決めてる訳じゃないけど色々とついでにな」


 アレルがそこまで言うと、ロバートは少しだけ間を置いてそれならば良いかと真剣な表現をアレルへ向けてくる。


「アレル様、一つだけ落ち着いて聞いて頂きたい事が御座います」


「何だ?」


「実は、闘気の内勁には感知能力を高める効果も御座いまして、目の届く範囲に限りますが魔法を使う際の魔力の波動なども感知出来ます。昨日の戦闘中、私は幾度か内勁を使っておりましたが、アレル様が身体強化を使っていた時も使用を継続していました。ですが、目視で明らかにアレル様が身体強化を使用しているのに、私にはアレル様から魔力の波動を感じられなかったので御座います」


 ロバートが言う事を理解するなら、それはアレルが使う身体強化は魔法ではないという事になる。しかし、先程の魔力の引き出し方のやり取りから察するに、アリシアが行った方法ならば間違いなく引き出されたのは魔力であったらしい事が判る。

 つまり、ここまで来るとロバートの感知が誤作動を起こしていたのか、それともアレル自身が特異な存在かという話になる。ただ、そんな結論を出しておきながらも、アレルはロバートが間違いを起こす訳が無いと信じ、自らが特異な存在であると自覚する。


(まあ、そもそも異世界人だしな。今は色々と腹づもりも決まってきたし、そんな事実を突きつけられた所で動揺もしないけど······な)


 不思議と、以前の様な足元が崩れていくみたいな感覚を感じないアレルは、そこでロバートの見立ての方が気になってくる。


「それで、ロバートはどう考えてる?」


「そうで御座いますね······アレル様が使っておられるのは魔力で間違いないと思います。しかし、感知が働かなかった上にアレル様が口にした使い方は闘気の内勁のそれで御座いました。それが、一体どういう事なのか······まず、アレル様が無意識に魔力と闘気を併用していて、その副次的効果で感知が出来ない状態になっている。もしくは、元々アレル様の魔力が感知しづらい上に闘気と同様の使い方が出来る特異なものだった······現状、私の知識で考えられる事はこれぐらいでしょうか」


「闘気なんて、身につけた覚えないけどな。······俺、幽霊や魂なんかとの境目が曖昧だから、そのせいで魔力や闘気の境目も曖昧なのかね」


「境目が······曖昧······」


 アレルの言葉に、ロバートはそれだけ口にすると口を片手で覆い、しばらく黙り込んでしまう。それが何なのか、アレルには判らない。ただ、ロバートには何かしら判ったのかもしれないと、アレルはロバートが口を開くのをジッと待つ。

 すると、不意に手を下ろしたロバートがやけに神妙な面持ちでアレルへ視線を合わせる。


「アレル様、一つだけ覚えておいて頂きたい言葉が御座います」


「ああ」


「魔力と闘気二つの道交わりし時、霊子解放への扉が開かれる······この言葉を、覚えておいて下さいませ」


 霊子解放、今までアレルが聞いてきた話では、霊子というものは全ての源であり魂という器に注がれた根源的なものという認識だ。それを解放なんてしてしまうのは、魂の消滅を意味するのではないかと思うアレルは、その不穏当な響きに思わず身震いする。


「なんか、あまり良い事ではなさそうだな」


「ええ、とても古い文献に一節だけ書き記されていたとされる言葉で御座います。後世の為にというより、どちらかと言えば戒めの為に遺された言葉の様に感じます。普通ならば、魔力と闘気は混じり合ったりしないはずなのですが······アレル様は、お気を付けになられた方がよろしいかと思われます」


「ああ······覚えておくよ」


 戒め、そうであるならばその一節を遺した者は一体何を見たのか、そして霊子解放とは何が起こるのか、それをしっかり遺して置いてくれと思いながらもアレルは返事を返す。ただ、今はアリシアの護衛中だ。出し惜しみしている様な余裕は、アレルには無い。

 それ故に、例え危険だとしても使えるのならば何だって使ってやるとアレルが決意すると、それを感じ取ったのかロバートがため息を返してくる。


「やはり、アレル様の現状を考えると、私の忠告などあまり効果はありませんね」


「別に、そんな無視しているみたいな事は──」


「ええ、解っておりますよ。なので、アレル様みたいな方への対処も心得ています。という訳で、今から徒手格闘と並行して闘気の扱いも可能な範囲でお教え致します」


 その言葉に、正直アレルは驚いて直ぐには返事が出来なくなっていた。直前まで、アレルはロバートの事だから危険な事からは遠ざけられるのではないかと思っていた。

 ただ、それはロバートという人間を見誤っており、この場面でロバートは敢えて扱い方を教えると提案してきた。そうして、予想外の言葉にアレルが戸惑っていると、ロバートが続けて説明をしてくる。


「······よろしいですか? どうせ、アレル様みたいな方はお止めしても窮地に立たされれば、危険だと判っている事すら行ってしまうので御座います。それならば、ここで正しい扱い方を教えておいた方が、まだ安心出来るというものです」


「ちょっと待て、それ俺を案じてというより貶しにきているよな?」


「その様な事は御座いませんよ」


 しれっと、澄まし顔で答えるロバートに、アレルは疑惑の目を向け続ける。だが、ロバートの申し出自体は願ったり叶ったりではあるので、アレルはこれ幸いとロバートの申し出を受ける事にしたのであった。



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