格ゲーの女キャラ、エッチな服着がち
連コ前提なので、初投稿です。
上手いか下手かは置いておいて、俺は格ゲーが好きだ。
何で好きかと言えば、それは自分の一分一秒のコマンドの選択が顕著にその試合模様を決めるからだ。
それにキャラバランスにおいてはゲームによるが実装した当初のキャラが壊れていたり、いつまでも不遇なキャラが居るなど話にも事欠かない。
それ以上に、俺を惹きつける要素としては世界観が割と自由なことが挙げられる。
例えば忍者や侍が居たと思えばシスターが居たり、果てには普通の学生や人外など様々。
レーザーなどの近未来な兵装を使うキャラも居れば、銃など現代もしくは昔の兵装...挙句の果てには拳だけなど十人十色。
一本筋の通った設定がある中でも、自由に...悪く言えば無秩序だ。
それが、やっていて楽しいのだ。
マンネリとは無縁のゲーム性、それが格ゲーだと俺は思う。
まぁ、俺は多分そんな格ゲーをやる人間の中では下手寄りなのだろうけど。
間違っても上手いとかは言えない。
だって上には上が居て、そもそもフレーム単位を常に意識して操作しているような化け物が居るくらいなんだから。
まぁそういうわけで、格ゲーが好きな俺はその日も夜遅くまで格ゲーに興じていた。
夜の冷たさからゲーセン内の熱気とのギャップを生み出し、なんとなく虚しくなった。
そんなことに、ガラにもなく気取られたことへの神様の痛烈なツッコミなのか。
すっげぇ眩しくて、しかもギュッギュッッッ~~!!!みたいな音を聞いた。
横を見れば、道路。
そこを逸れて、一台の車がこちらへと向かっていた。
フロントガラス越しに惰眠貪ってやがるドライバーの屑が見える。
刻一刻と迫りくる車、死を間際にしたからか引き延ばされたかのようにゆっくりとこちらへと迫ってきていた。
ここで某有名格ゲーのボーナスステージであれば鉢巻付けたゴリラ体系主人公の拳や蹴りで面白いくらいに車がミンチになっていることだろうが、あいにく現実世界において人間は走行中の車に対して逃げること以外の方法を持ちえない。
今度は走馬灯まで見えてきた。
特筆すべきことのないつまらない、それでいて確かに俺が生きてきた時間の光景。
唯一の心残りは、自分を捨てた両親がどれほど見下げ果てたクズなのかをこの目で見てみたかったってことだけだ。
もっと時間があればそれ以外の心残りが見つかったかもしれなかったが、時間はそれほど待ってくれなかったみたい。
やれやれ、僕は死亡した。
暗く沈み込むような感覚。
まるで微睡んでいるかのよう。
死亡した後ってこんな感じなんだろうか?
だとしたら、もしかしたら人間は毎晩ちょっとだけ死んでるのかもな。
そう思っていると、微かにこもった音質でありながらも何か音が聞こえた。
なんかこれ....金属同士をぶつけるような音。
立て続けに発砲音が聞こえてくる。
なんだこれ....趣味の悪い目覚まし時計か?
にしたって、俺は確実に死んでるしなぁ....。
永眠したわけだからそんなの無駄でしかないんだが....。
そう思っていると、引き揚げられるかのようにゆっくりと意識がはっきりしてきた。
なんだ...さっきは聞こえなかったけど、声も聞こえるじゃないか。
なんなんだ一体。
「...きなさ....起きなさいっ!」
「ほがっ!!....ほぇ....俺、生きている....?」
眼を覚ませば、頭上は月が光放つ夜。
星空は今まで見たことがないくらいはっきりと輝いていた。
身体も...ある。
足もある....四肢も動く。
それになによりも背中が硬い物の上の横たわっていたことで痛んでいた。
俺は....生きている?
「えぇ、今のところは!!..っくぅ....はぁっ!!....そんな風にいつまでも鉄火場で寝ていたら...っ!...いずれ死んじゃうでしょっっ!!」
呆然として、言葉を口にする。
すると、その言葉を誰か女の声が拾っていた。
そちらの方向を見る。
まず目に入るのはキラキラと輝く金色のロングヘア―。
そんで次に目に入ったのはその恰好。
シスター服...っぽいデザインであるが背中はガッパー開いているし、何の限界に挑戦してるの?ってくらい短いミニスカートにはスリットまで入っている始末。
太ももには黒いガーターベルトが映えていた。
なんていうか...癖を集めて形にしたらこういう恰好になるんだろうと思う。
つーかあくまでシスター服っぽいって言ったの色合いと頭にベール被ってるからだし。
本職の人が見たら気絶しそうな有様である。
「コスプレ...色物シスター....?」
「はぁ!?何言って....つぅ...!早く逃げて!!これ以上は、守り切れない...っ!!」
そう言われてハッとする。
そうだ、恰好なんかどうでもいいじゃないか。
目の前の彼女は二挺のなんかそこそこデカい銃を二挺持ちしてなんなく振り回しながら扱っている。
絶対アレ、あの細腕で扱うのに二挺持ちは無理があるでしょ。
そして彼女と相対しているのは....モノアイな感じの全頭ヘルメットを付けた何か。
両腕が機械腕になっていて、ボディースーツに身を包んでいる。
そんでもって背中には機械仕掛けの翼のような物が生えていた。
...なんか、目の前の女の子と君...世界観違わない?
目の前の少女は色物シスター服ではあるものの銃使ってて、君だけなんかメカニカルな感じなんですか。
...なんだこの状況、目の前で繰り広げられている状況がカオスが過ぎてついてけないぞ。
ただでさえ、死んだと思ってたら生きてたのに目の前でこんな人達が漫画も驚きなバトルしてたら脳味噌パンクしちゃうぞ。
腕からブレードのような物を出して、目の前の彼女に対して斬りかかっていて色物シスターの方は銃身を交差させて受け止めている。
そして刃をスライドさせて逸らすと、即座にトリガーを引いて発砲する。
「...っ。」
発砲された方のメカニカルな何かが首を動かして避けた。
...弾丸を避けた!?
どんな反射神経してんだよ.....。
「...そこっ!!」
けれど、色物シスターも反射神経は大したもので弾丸に意識をやったのを良いことに蹴りを入れた。
蹴り飛ばされながらも空中で不自然に姿勢を整えて着地するメカニカル。
そんな相手を前に、彼女は銃を持った手を十字に交差させてまっすぐに見据えた。
「貴方がなぜ魔書を求めているのか知りません...でも、執行者として番外魔書を渡すわけにはいかないんですっ!その罪...私が裁きます!管理機関嘱託組織が一つ聖詠教会所属、第三尉官マリー=アンジャスティス、魔書使用許可申請...申請受諾。《魔書開帳》!!」
そう言葉を口にすると、持っていた二挺の銃が光の粒となって霧散する。
そして一冊の本のようになる。
そのまま彼女は目を閉じて、本を開く。
開かれたページに手を翳した。
俺はそんな彼女の様子を見て、何故か....何故だか分からないが一瞬彼女の顔のカットインのような物が見えた気がした。
もしかしたら格ゲーやり過ぎて頭がおかしくなったのかもしれない。
俺のFPSやりまくった友達が日常生活してて、なんとなく照星が見えるときがあると聞いた時はカッコつけてんじゃねぇよと笑ったものだが最早俺は人の事を笑えないのかもしれない。
幻視に苦悩する俺を他所に、彼女は目を開くと本に翳していた手をまるで銃を突きつけるかのようにメカニカルな何かに向ける。
その瞬間、信じられないことに彼女の頭上に沢山の銃器とか砲台みたいなのが出現して宙を浮いている。
わぁお...物理法則じゃあ考えられない事象だわ!
「《人工魔書、銃工....鎮魂歌》!!!」
なんだろ、声だけなのに結構な当て字されてたような気がする。
詠唱?だけならなんかカッコいい感じなのに。
しかし、驚くには早すぎたようで彼女が体の向きを変えて両腕を挙げて頭上で斜め十字に腕を交差させる。
丸出しの脇を両腕を挙げることで見せつけるようにしていてエロチックなようで、どこかオサレな...良い言い方をすればスタイリッシュな感じがするポーズを取る。
その瞬間、頭上で浮いていた銃や砲台が一斉に凶弾をメカニカルな何かにトリガーハッピーした。
大小さまざまな弾丸で抉れる地面に立ち込める硝煙か埃か分からない靄。
「これが、最新鋭の天罰ですっ!!」
彼女が高らかに声を上げる。
反面俺はすっげぇ爆音と揺れる床に滅茶苦茶な有様を見てドン引きしていた。
え...なにこの...なに?
戦争かい?...戦争なのかい?この感じ。
まぁ確実なのは俺は生きているけれど、明らかに俺の知っている世界ではないということ。
これってまさか...いや、そんなまさかね....。
「...終わり、かな。」
フラグか?
グミ撃ち終わりか?は相手にとっての生存フラグだぞ。
しかし、そういうお約束など知りもしないと言った様子で彼女は俺の方へと翡翠色の瞳を向けた。
なんか普通にレベルの高い美少女だった。
ちょっと身構えちゃった。
ほら、俺ってアーケードゲームガチャガチャやってるタイプのオタクだもん。
「それじゃ今度は...貴方ですけれど、なんで書庫に入り込んでいるんですか。見る限り...戦闘できるわけでもないですし...でも、こんなところにただの一般人が迷い込むなんて無理が....。」
こちらを見て、俺の質問しているのに答えを聞くまでもなく顎に手を添えて悩みだす彼女。
確かに周りを見れば鎖でグルグル巻きになった本棚のような物が沢山並んでいた。
その恰好で悩まれるとなんていうかちょっとウケる。
だけれどそんなお気楽な気持ちは、薄れゆく靄越しに見えた立っている人のシルエットを見てサッと消えた。
つーか背筋に冷たい物が走った。
「ちょっ、後ろ!!まだ!!!」
「え...?かっ...ぁぁぁあああああぁぁあぁああ!!!」
靄の向こうから何かが彼女目掛けて飛んでくる。
それは、メカニカルな何かの機械仕掛けの腕。
飛んできた腕は彼女の肩を掴むと、バチバチと音を鳴らして電流が流れた。
傍から見ても電流って分かる。
だって彼女の身体がビクビクと痙攣しているし、バチバチとけたたましい音と彼女の身体から電光が見えるもん。
これ、結構な電圧じゃないか??
死ぬタイプの奴じゃないか!!?
目を凝らしてよく見たら煙出てる気がするのは気のせいか!?
衣を裂くような叫び声。
リョナラーが聞いたら勃起ものだろうが、そのような趣味がない俺にとっては心配以外の何者でもない。
崩れ落ちる彼女。
そしてメカニカルな何かの方では靄が完全に晴れて、シルエットの主が顔を出す。
「え....!?」
「対象を無力化...謝罪。けれど、番外魔書はどうしても手に入れなければならない。」
そこに居たのは一人の可憐な銀髪の少女だった。
背中の機械仕掛けの翼は片方だけしか残ってなくて、機械腕は右腕がなくなっている。
まぁその右腕は先ほどまで色物シスターをビリビリさせていたわけだからないのも当然なんだが。
ボディースーツはビリビリに破けてほぼ半裸状態で彼女の控えめな胸部や華奢なウエスト、人とは思えない程に白い肌を外気に晒していた。
そして彼女の顔立ちは整っている物のどことなく生気が伺えず、切れ長の目つきに硬く閉ざされた口元からまるで抜身の刀のような剣呑さであった。
「そんな...私の全力を受けて、まだ立っていられるなんて.....。」
「危なかった、貴方は凄い。それでも、私の任務の障害足り得なかった。それだけ。」
表情を変えることもなく、色物シスターに告げる。
俺と一瞬目が合うも、すぐに視線を外す。
なんていうか明らかあられもない姿であるのに、恥ずかしがったりもしないんだな。
そう考えると、どうにも人形を前にしているような気分だった。
表情筋凝り固まっているんじゃないの???
唐突に彼女は手を虚空に掲げる。
すると、彼女の左腕の手の甲...そこに突いてるなんか宝石みたいなのが仄かに光始める。
「引っ張り出す。...番外魔書の該当する波長を検出、同波長に調整、波長を放射...共鳴を開始。」
淡々と言葉を吐きだす。
それと同時に彼女の左腕が小刻みに震え始める。
そしてその震えは大気に伝播して...。
「なに...この...なんか気持ち悪。」
いや、違う。
この不快感。
これはただの震えじゃない。
大気が『脈動』している...彼女の左腕に共鳴して。
その脈動は段々と大きく...強くなっているように感じた。
それは段々と本棚にも伝播していく。
そして、しまいには周りの本棚に巻き付いていた鎖や銃前がバラバラに崩れて中から大量の本が空中へと吸い込まれるように巻き上がっていく。
舞い上がる本。
それは途方もない高さからか見えないこの場所の天井目掛けて飛んで行く。
よくよく考えればこの場所はとても不思議な場所だ。
部屋全体が薄暗くて床も壁も全部青白くのっぺりとしていて、周囲は鎖で封じられた本棚の数々。
そんでもって天井は高すぎて見えないと来ている。
なんなんだこの場所は。
色物シスターは書庫と言ってたけど....。
「ゃらせな....っあぁあああ!!!」
倒れながらも、銃口を向けようとするも再度バリバリと電流が走ってタラリと腕が下がる。
正直、煙まで出てたのに生きてるどころか腕が動くこと自体が驚きである。
頑丈すぎるだろ....っ!
無言で本たちが吸い込まれて行く天井を見上げている彼女。
すると、全ての本が吸い込まれたのか何一つ本が吸い込まれなくなる。
...そして、暫くすると上の方からキラキラと光っている何かが見える。
なんやあれ、箒星か??
するとやはりこちらに降りてきているのか段々と光の点にしか見えなかった物が一冊の黒塗りの本であることが分かった。
あれだけたくさんの本のリターンがこれか。
あの沢山の本がどのような扱いなのかによって物理法則乱れるな、いやもう今更ではあるけど。
あの本全部集まってあの一冊なのか、それともあの本が集まったから上から本が降りてきたのか。
「番外魔書...残穢。」
メカニカルだった彼女はそう呟くと、手を伸ばす。
多分自分の方に降りてくる本を受け取ろうとしているのだろう。
本はゆっくりと降りていく。
段々と少女に近づいていくと....今度は横に動いた。
ん....?
「なに...?」
メカニカルな彼女は首を傾げる。
当然だ。
だって呼び出したはずの彼女の手から平行移動で遠ざかって行っているのだから。
彼女からしてみれば予想外だろう。
「こっちに来てる....?!」
ズタボロになりながらも顔を上げていたシスターが声を上げる。
ははぁ...俺には“先”が読めたぞ。
これはアレだな、あの本が色物シスターの所へと行って呼び出したのはメカ女だけど選ばれたのはシスターでしたって展開か。
平行移動する本はシスターの方へと近づいていく。
そしてそのまま直下に落ちればシスターの頭上。
....そこを通り過ぎた。
...え?
なんで??
予想が外れて戸惑う俺を他所に、本は移動を続ける。
そして、本はある程度移動すると宙に浮いたまま停止した。
....俺の目の前の高度で、俺のすぐ目の前で。
「...え、俺???」
なんで???
あの...人、間違ってない???
ほら、シスターバリバリ目見開いているし!
なんならメカニカルだった彼女に至っては俺を見たままフリーズしてるしよぉ!
「あ、あの...ほら....俺じゃ..ないっすよ。うん。あの、あっち...あっちの方だと思うんですけど...。」
そう言って一歩踏み出した瞬間。
「ぁえ....???」
本が開いたと思えば、墨汁みたいな黒い何かが飛び出してきて俺を取り囲むように広がっていく。
「待っ....!!!」
慌てて制止するも聞き入れるはずもなく。
俺は目の前が真っ暗になった。
なんていうか、二度目の死は直ぐに来たな。
やっぱりあれって死に行く魂が最後にみた夢的な何かじゃないの?
...感覚は変わらずある。
どうやらまだ俺は生きているようだ。
いちいち紛らわしいんだよなぁ....。
閉じていた目を開く。
すると、そこに自分以外の人物がいることが分かった。
全面真っ黒、まるでパレットに広げた黒い絵の具の上に立っているかのような周囲の中でポツンと畳が6畳敷かれている。
そしてその上でその人物は胡坐を搔いていた。
「自らが追放した道理を切り開く刃を今度は欲するか。全く度し難き傲慢さぜよ....エヴァ・メビウス=ハート。宿業辿りし、転生体よ....。男性の身体とは...元の身体は使い物にならなくなったか?」
烏のように黒い髪を降ろし、胸元ががっぱー開いてたわわを全面に押し出したような袴を身に着けている。
そして首元には緑色の勾玉が輝く。
なんともミステリアスな美女。
しかし、目を見開くとその印象は大きく崩れた。
「....え、誰??」
「いや、こっちのセリフなんすけど....あの、エヴァって人じゃないですよ。多分人違い..じゃないすか??」
めっちゃ目を丸くしていた。
さっきまで不敵な笑みを湛えていた人物とは到底同じとは思えない反応。
いや正直俺も同感なんだけど。
ちょっと転生体って言われたのが霞むくらいには人違いされてびっくりしていた。
滅茶苦茶自信満々に見当違いな事言われたんだもん、そりゃそーよ。
すると、目の前の女性は今度はもっと狼狽えだす。
「いや....でも、転生陣を用いているみたいだし、そんな奴メビウスのたわけしか...いや、でもよくよく感じ取ってみればよく似てるけど転生陣じゃないぞ....空間移動にも似てるような....。いやそんなことよりもっと別の...それこそこの世界には存在してない...今までの輪廻の間では感じ取ったこともないような異質な力。このような力は記憶にない....。」
彼女の独り言を聞いて、俺は確信した。
...どうやら俺は、俗に言う異世界転移とやらをしてしまったらしい。
要素として考えてもこれ以外の結論はあり得ない。
何も変わらず、轢かれたはずなのに動く身体。
いつもと同じ自意識。
四肢も身体も感覚も確かにあって、目が覚めるとよく分からないところに居た。
目の前で戦っていた少女達は明らかに元の世界では考えられないような物理法則を超越したことを平気で行っていて、武器とか平気で持ってたし。
なんか魔書とか言って本が変な挙動してたし。
そんで現状、この世界にはない異質な力という発言。
もうこれ確定でしょ。
多分、目の前の人はこの世界自体にこの世界の能力的な感じで転生している奴が居て、それと俺とを勘違いしたんだろうな。
俺の場合はこの世界では俺の世界の神様にこの世界に送り込まれたわけだし、この世界の人間にとっては異質な力纏っているように思えても普通だろう。
そうなると、今度はまた一つの仮説が脳裏を浮かぶ。
ははぁ...もしかして、この世界...格ゲーの世界だなぁ?
だって女の子みんな極端に露出度高かったり、業の深い癖の匂いがする恰好しててそれが普通って感じで戦ってたし。
コスプレ会場でもないのにみんな金髪銀髪であんな珍妙な恰好してるのはおかしい話だ。
つーか戦ってたしな!!
明らか二人とも片方シスターでもう片方ロボな感じで魔書っていう共通の設定があるっぽいけど、見た目はどうにも無秩序だったし!
あれでしょ、あのメカニカルだった女の子はシリーズ続いて後から追加された系の子でしょ。
それに武器とか物理法則超えてたし、そもそも色物シスターが大技っぽいの使おうとしたら一瞬カットイン見えたしね!!
多分アレ、幻視じゃないよね!!超必打つ時に作品によってある奴だよね!!!?
そんでもって超必の規模の描写が大きいのも格ゲーの特徴!
俺の経験からするとこの感じは多分格ゲー。
つーかそれならそれでテンション上がるわ、格ゲーだし。
そんでもって同時にテンション下がるわ、俺喧嘩なんかしたことないし。
ある意味めっちゃ物騒な世界だからね。
つーか格ゲーのストーリーモードとか一般人絶対被害ヤバイだろっていうの多いしな。
ナチュラルにモブ厳だよね。
「あー、俺異世界から来てるっぽいんで、なんか紛らわしかったっすよね...すんません。」
「あぁ、別に良いんぜよ!儂が間違えただけっぽいからのう!ちゅーか若い者がすぐに頭なんか下げるんじゃない、老いぼれが勘違いして迷惑だとのたまえるくらいの威勢の良さを見せんか若人!」
なんだこの人、見た目クールビューティなのに滅茶苦茶親しみやすいんだけど。
見た目に寄らなすぎでしょ。
「しかし確かに今まで観測してきた人間の中におまんのような顔は見なかったのう...ふむ。だとすれば一体なぜ....輪廻の輪に居なかった外からの男...なるほど、少し見えてきたのう。」
「?なにがっすか??」
なんか一人で納得してる...。
すると目の前の女性は笑顔をこちらに見せた。
「なぁに、なんにも問題はない。そんなことより、おまん異世界から来たんだとしたらこの世界のこといっちゃんなんも知らんじゃろう?寄る辺もないはずじゃ。」
「は、はぁ...まぁそうっすけど。」
そんな考えてみれば誰でもわかるようなこと言ってどうしたんだ。
いや確かにこの世界を知って、生活できるようにするっていうのは目下の課題だけどさ。
「ならば、この魔書という名の箱庭から儂が暫しの間指南してやろう。そうすればおまんは知識を得ることが出来て、尚且つこの魔書を使えばもし降りかかる火の粉あれば払うことも出来るじゃろうて。」
「え、まじっすか!?良いんすか!?」
俺は即座に食いついた。
当然だ。
現地の人が教えてくれて、しかもこんな美人からなんて。
魔書からっていう部分はよく分からなかったが、それでも食いつくには値する良い話だ。
目の前の女性はチッチッチッと指を振る。
「勿論、交換条件じゃ。儂は今言ったことをおまんに与える代わりに、おまんは儂を...いやこの魔書を所有して外へと連れ出してくれ。いい加減、こんな辛気臭い場所に閉じ込められて必要となった人間に引っ張り出されるのは飽き飽きじゃ。おまん、さっき初対面の時に言っていた儂の言葉...これっぽっちもわからんじゃろ?」
「うす、わかんないです。」
なんか刃がどうたら~とか、転生体が~とか言っていたような気がする。
ただでさえ勘違いとかの件で覚えているのも奇跡なのに、その意味なんか分かるはずもない。
いや、なんとなく格ゲーゲーマーとして何作品もストーリーモードやってきた身としては多分重要な単語なんだろうなっていうのは分かったけどさ。
「ならばよい。で、どうじゃ?この話受けるか...受けざるか?」
「受けます!」
即答した。
だって今のところは俺にうまみしかないし。
俺の答えを聞くと、目の前の女性はニカッと笑顔を見せた。
「そうか、よいよい。では儂のことは....そうじゃのう....。...まぁ、今は残穢と呼んでおけ。現状、儂の本名を知ったところで意味などないし、この魔書の名前に馴染んでおくほうが重要じゃろうて。」
「残穢さんっすか....うす、よろしくおねがいしまーす!」
どうやら本名は教えてくれないらしい。
まぁ会ったばかりだしな、なんか色々教えてくれるならそれでいいや。
「で、おまんの名前はなんじゃ?これから儂らはいつまでか分からぬが一蓮托生。呼び名が分からなければ困ろうて。」
呼び名....。
本名を向こうに教えてもらえなかったが、残穢さんの場合はどうにも他に呼ぶべき名前があるからそれ教えてくれたわけだ。
そして俺はそんなものを持ちえない。
だから素直に名前を教えることにした。
「七井円です。」
「ほう、マドカ=ナナイか....。よろしく頼む、マドカ。」
七井円なんだが....まぁ別に良いけど。
すると、周りの風景が段々とぼやけてくる。
え、なんだなんだ?
戸惑っていると、残穢さんは再度畳の上で目を閉じた。
「時間じゃ...いつまでもここにおってもなんもならん。表に出してやる....すまんかったのう、勘違いとはいえ突然引き込んでしもうて。されど、良い出会いであったぞマドカ。」
その言葉を最後に、俺の目の前は再度真っ暗になった。
瞼越しに光を感じて瞼を開く。
目の前には残穢さんに会う前の風景。
なんかあの空間は一体なんだったんだろう....。
「...残穢が、人と適合した。あり得ない...。」
メカニカルな彼女はこちらをジッと見ながら、言葉を漏らす。
何をそんなに驚いているのか...そう思って自分の足元を見る。
そこにはユラユラと黒い影が自分を中心に広がっていた。
「おわっ!なんだぁこりゃ!!」
『狼狽えんでも良いぜよ。これが、儂と...残穢と一蓮托生になった証。降りかかる火の粉を払う手段を手に入れたことの証左ぜよ。...にしても、なんじゃこの状況。めんこい子が沢山おるのう。』
「いや、状況を聞かれると俺もわかんないっていうのが本音なんすけど。」
足元の影の方から残穢さんの声がした。
でも悲しいかな...俺も降り立ったのついさっきなんで状況なんかこれっぽっちも分からないんですわ。
だけれど多分降りかかる火の粉を払う手段を得た証左ってことはこれで格ゲーのキャラ相手にも残穢さんを使って対抗できるってことだよな??
なんだろ....テンション上がらないかと言われれば少しだけ嘘になるな。
しょうがないじゃん、男の子だもん。
「そんな...一体...なにが..起こって.....。」
色物シスターは俺を見て更に驚いていた。
まぁ普通の一般人って思ってたもんね。
一般人に変わりはないんだけど。
「...状況変化。しかし、彼から魔書を得れば良いだけである以上は作戦は依然遂行可能。早急に障害を排除する....。」
そう言って彼女は左腕をこちらに向ける。
目を細めて、冷たい視線をこちらに向ける。
こっっわ...。
「おぉい、相手やる気じゃん!」
『心配いらんぜよ、ドーンと構えておけ。儂と一蓮托生であれば、こちらから火の粉を払ってやるくらいの気概は見せて欲しいぜよ。』
「分かってるけど....抵抗出来るってことは分かってるけどさぁ!」
でも怖いもんは怖いんだよ!
こちとら喧嘩なんかしたことないんだぞ!!
いま格ゲーっぽい動きで戦えって言われても出来る気がしないわ!
魔書とやらに頼りきりになるわ!!
そんな風に考えている間にもメカニカルな彼女がこちらに翳した手が光を段々と帯びていく。
あれかな?
手から光弾とか出すのかな?
そう思っていると、メカニカル彼女がびくんと身じろぎしたかと思えば腕を下げて手を耳に当てる。
な、なんだ.....?
「...異常事態が発生、番外魔書が人と適応しました。持ち主のスペックは平均。こちらから武力的アプローチを掛ければ十分入手可能と...はい。なるほど...了解しました。」
なんだ...誰かと通話してんのか?
独り言を言い出す彼女を身構えながら見ていると、耳に付けていた手を降ろす。
「....優先順位が変わった。さようなら、いずれそれはもらう。撤退行動開始、スラスター損傷によりスラスター最大稼働。オーバーヒート時の冷却時間を考えて活動時間は....。」
「あ..ちょっ...!!」
俺の制止を聞き入れるはずもなく彼女は横を見ると、陸上のクラウチングスタートの姿勢を取る。
すると背中の片翼がブルブルと震え出したかと思えば凄まじい初速で横の壁をぶち破って去って行った。
こっちまで衝撃が来た....。
遠くの方でドカンドカン壁ぶち抜く音がずっと響いてるし....。
やっぱバリバリロボット感出してんな。
そんなことを思いながらも、周りを見回す。
さっきの彼女の逃亡で無惨にもぶち破られた壁。
魔書とやらと適合?して影漂っている俺。
そして電撃で意識はあるものの、未だ立ち上がれていないシスター。
『拍子抜けではあるが...これにて一件落着って感じじゃのう。』
「あはは...いや、一件落着っていうか...これ、どうすればいいわけ??」
なんていうか....色々置いてけぼり感あるんだけど。
....どうしよ、これ。
未だに状況分からないし。
目の前の状況に唖然としながらも、ただただ立ち尽くす俺だった。