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二年生 夏・インターミッション

「とんでもないことになっているようだね」

 

 その日の夜。私はお父様と夕食の時に、学校の惨状をお話ししました。間諜のようなことはしたくないと言いましたが、この状況は想定外もいいところです。到底、学生の身の上だけで解決できそうにありません。

 

「聖女の話は聞いている。教会や、王家にも話は聞いているが……学園でそういうことになっているとは、初めて聞いたな」

「ええっ!?噂にもなってないんですの?」

「私が聞いたのは、聖女が生まれ、学園に通っていること。将来的には王家に(とつ)いでほしいこと。そして、王子との仲は良好だということだ。

 そういえば、王子の婚約者がどうなったのかは聞いていなかったな。完全に、聖女と第一王子が結ばれる前提で話をしていた」

「なんという……」

 

 ラプンツェル様の話では、まだ婚約者はラプンツェル様であることでした。つまり、ノアさんのやっている事は略奪愛であり、王子がやっていることは立派な浮気です。

 しかし、男子生徒らが言うのは、あくまでノアさんの手伝いをしているだけで、恋人関係などではない、と口をそろえて言うのです。

 親経由での苦情も、まったく同じ回答であり、らちが明かないということでした。

 

「しかし、まさかガトー君が懇意と噂の娘が聖女とはな」

(あら?お父様、ノアのことを聖女だと知らかなったのね。

 元々は、聖女の取り巻きにガトーがいる、っていう()()()()わたしは王国に来るはずなのに)


 そういえば。と私はもう一人の私に相槌を打ちます。

 確か、噂を確かめるべく学園に入り、ノアさんとガトー様が二人きりでいるところを見て、私はノアさんに敵愾心を持つはずです。あんな堂々と正門で男子生徒を侍らせる、なんて、乙女ゲームとしても常識的に考えてもおかしい光景ですわね。

 ガトー様と二人きりのところじゃない――二人きり、か。

 パキ、と小気味良い音が鳴りました。お父様が、目を丸くてして私――私の手元を見ています。

 目線を追ってみると、私のお皿が割れています。

 どうやら、思わず力が入って、フォークがお皿を()()してしまったことが原因のようですわね。

 私は、にっこり、とお父様に笑いかけて、話の続きを促しました。お父様は、一つ咳払いをして仕切り直しを図ります。


「ノア、といったか。空恐ろしい娘だ。遠目にも見てわかる」

「お父様も、ご覧になったんですか」

「あれだけ噂を耳にすれば、自分の目での確認するさ。確かに、教会の言う通り虹色の瞳をしていた。

 それに、あの()()だ。成長すれば、確かに傾国の美女といっても差し支えないものになるかもしれないな」

 

 ……成長?

 

「お父様。お父様からはノアさんの見た目をどう思いましたか?その例えば……御髪(おぐし)、とか」

「ん?ああ、珍しい色をしていたな。染めたようには見えなかったから、()()()()()。あの光沢のある鼠色の髪も、聖女として目覚めた影響だとは思うが。

 何か気になることでも?」

「……いいえ。まだ、確証が持てませんので」


 そうしてその日の夕食は終わり、私は自室へと戻るや否や、ベッドに倒れかかるように横になりました。

 

(作戦会議ィーーーーっっ!!)


 同時に、枷が外れたようにもう一人の私が、高らかに声を上げました。


(どういうこと!?他の人には、()()ノアが()()()()()()()の!?)

「おかしいとは思っておりました」

(髪が光沢に光るグレーってどういうことだ―!?)

 

 そう。

 ラプンツェル様の派閥に入った際にも、ノアさんの評判や印象を他の方々にも聞いてみたのです。それに、彼女(?)がいない間に、男子生徒にも。

 その時の評判は、もう一人の私も首を捻る者でした。

 

「憎らしくなるくらい肌がきれい」

「美しい瞳をしている」

「いい匂いがする」

「可憐な歩き方で目が離せない」

 

 等々……。

 肌がきれいも何も、ノアさんの体は言ってしまえばドラム缶に虹色に発行する電球が付いたお椀が乗っているようにしか見えず、肌というより鉄板のそれです。

 瞳はもちろん、なぜか7色に発光し続ける電球。

 香水を付けているのか体臭なのかはわからないですが、少なくとももう一人の私は「香っても油かガソリンかサビの臭いだろう」と言っております。

 何より可憐な歩き方も何も、彼女の足は連続した車輪――もう一人の私に言わせればキャタピラと言うらしいのですが――ですので、到底歩き方も何もないと思うのです。

 お父様に、試しに見た目存在しない御髪の話を振れば、全身同じ光沢の装甲を、髪の色だと錯覚しておりました。

 

「……私の目が悪いのでしょうか」

(目が悪いとかどうとかそういうレベルの何かじゃないと思うのだけど)

 

 私が自信なく呟けば、呆れたような声でもう一人の私がぼやきます。

 

「これからどうすればいいのでしょう」

(ラプンツェルの派閥に入ったからには、もう一蓮托生よ。ただ、ガトーへのアタックをメインにしましょう。

 他の悪役令嬢組には悪いけど、私たちは私たちの目的を達成するのよ)

「――そうですわね」

 

 たとえ、相手がなんであろうとも、私の目的は一つ。ガトー様と添い遂げることですわ。

 ご拝読・ブックマーク・評価ありがとうございます。

 ノアを見て「ロボだこれ!」ってなってるのはチェリッシュだけです

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