4回目 絶縁状を出して、さてどうするか
エドマンドの行動は早かった。
縁を切ると決断したその直後に、近くの郵便局へと向かう。
そこで各事業者への紹介窓口へと向かう。
この世界の郵便局は、配達範囲内の様々な事業を紹介もしている。
工場に会計・法務などの事務所に、医者やマッサージなど。
そういった案内を行う事で、地域の利便性に貢献していた。
それを利用してエドマンドは弁護士の所へと向かった。
今回の事が法律的に問題があるかどうか。
あったとしても無かったとしても、どう対応していくべきか。
それを相談する為である。
17歳と若いながらも、一応は社会に出ている。
様々な本も読んでいる。
そのほとんどは小説であるのは言うまでもない。
その中には、こういった場合には即座に法律的な対策をとるべきだと示すものもある。
その通りだと思ったので、エドマンドはすぐに相談に出向いた。
おかげで、法律的には問題がない事。
それでも一応は対策をとる事にした。
その作業は弁護士に依頼していく事にした。
その事は崇高出版にもその日のうちに連絡をした。
電話が普及してきてるので、用件を伝える時間は早くなってきている。
これが崇高出版内ではそれなりの騒ぎになった。
大きな問題にはならなかったが、少しばかり物議を醸し出す事になった
そんな出版社内での出来事など関係なく。
エドマンドは帰りの汽車の中でため息を吐き続けた。
後悔はしていない。
気持ちはすっきりしている。
だが、
(どうするかな、これから)
その事について悩みはした。
これからどうやって生活をしていくか。
その事を考えねばならない。
小説家としてやっていくなら、他の出版社にあたる事になる。
だが、そうでないなら、本格的に身の振り方を考えねばならない。
その場合、なんらかの仕事を探す事になる。
だが、上手くいくかどうか。
何らかの職業経験があるならば。
また、資格や技術、知識に学歴があるならば。
それほど就職に問題はないだろう。
しかし、前職小説家というのは果たして業務経験になるのかどうか。
それが悩ましい。
勢いで飛び出してきたのは良い。
しかし、これからの事を考えると、少々憂鬱になる。
それでも、
「まあ、いいか……」
そうつぶやける程には気持ちは晴れやかだ。
もうカミラの暴言と、目障りな抗議文に触れずに済む。
それだけでもありがたい。
幸い、親兄弟もそんなエドマンドの選択を支持してくれた。
「良かったなあ」
「あんた、ここ最近顔色悪かったからねえ」
「やったじゃん」
父、母、弟の順でそう言ってきた。
喜色満面といったその調子から、自分が思っていた以上に悪い雰囲気を出していたのだと気付いた。
絶縁状を叩きつけて本当に良かったと思った。
そうして、久しぶりに穏やかな気分で自室に戻り。
ベッドに寝転がりながら雑誌に手を伸ばす。
崇高出版から送られてくる、自作の掲載号から。
好きで読んでる他者の小説雑誌に単行本。
読む暇もなくて積み上げられたそれらに手を伸ばす。
(いや……)
浮かんだ考えを少し訂正する。
読む暇が無かったのではない。
読む気力が無くなっていただけだ。
それもこれも、全部カミラと抗議文、引いては崇高出版のせいである。
それらのせいで消耗しまくり、他の事に気を向ける気力が無くなっていた。
(本当にふざけてるな)
あらためて悪い影響を受けていたのだと感じた。
それでも、いつか読もうと思って買っていた本。
それらに手をつけていく。
生活や仕事の事を考えると不安はあったが。
今はこれからの事を忘れて、失っていた楽しみを取り戻したかった。