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先にバカって言ったのは誰だったのか


 朝イチで心春にLINEを送り、今後は一人で登校するので先に行くように!

……と、促したにもかかわらず、心春がいつもの場所で待っている件について。

解せぬ。


「おはよう、ハル! 早く行かないと遅刻しちゃうよー!」

「お、おはよう……」


もう心春が何を考えてるのか、さっぱりわからない。

もしかして心春のなかでは、あの告白はなかったことになってるんだろうか?

それで元の幼馴染に戻ろう、ってか?

うーん……。


……今や心春は、俺の憂鬱の元凶その1だよ!


「それにしても、もう九月なのにあっちーねー!」

「そうだなぁ……」

「朝なのに日差しが暑いっていうかもはや痛いよねっ!」

「そうだなぁ……」

「ねぇねぇハル! 今日のボクのぱんつ、何色だと思う?」

「そうだなぁ……」

「……あっ! 一万円落ちてる!」

「そうだ……いてっ! 何蹴ってんだお前!」

「ふん! 人の話聞いてないハルが悪いし!」


 なんだ!? と隣を見ると、ぷくーっとほっぺたを膨らませながら、心春が俺を睨んでいた。

なんだその顔、小学生かお前は。


ていうか……こいつ今、思いっきり人の足蹴りやがったな!?

何考えてんのかわかんない上に全力ローキックとか、ほんとなんだこいつケンカ売ってんのか!


「ハルは乙女心がまっっっったくわかってない!」

「なーにが乙女だちびっこのくせに! お前の蹴り、痛いんだからやめろ!」

「誰がちびっこだ! そんなちびに告白したのはどこのどいつだハルのばーか!」

「いてっ! ~~~っほんとお前、もう先に行けよバカ!」

「バカって言う方がバカなんだけど!?」

「お前が先にバカって言ったんだろ、バカ!」

「バカバカいうなハルのおばかーー!!」


うわーん、と走り去る心春を黙って見送る俺。

小学生か。


だけど……ふぅ、これで一人静かに登校する事が出来る……。



「朝から痴話ゲンカですか?仲がよろしいことで……」



 そういいながら、そっと横から俺の腕を取ってくっついてくる人が一人。


……前言撤回。

全然一人静かな登校にならないわ。


「おはようございます、天方くん」

「おはよう、蓮見さん……」


出たな憂鬱の元凶その2……!


「ふふっ、朝から天方くんに会えるなんて、今日はツイてます! これはもう結婚するしか……」

「ツイてるかどうかはわかりませんが……その、腕、離してもらえないですか……?」

「え、なんでですか?」

「なんでって……! そ、そんなに密着するとですね……!」

「ふふふっ、胸が当たる、ですか? 大丈夫です、わざと当ててますから!」

「わざと!?」


この柔らかいものが当たってるのがわざと!?

やばいですすっごい柔らかいんです、お、俺も健全な男子高校生なんで、朝からそんなことされたら、色々と意識しちゃうんでー!


「す、すいません蓮見さん……ちょっと刺激が強すぎるんで、離れてもらえますか……?」


鼻血でそう。


「わざとやってるんだから楽しめばいいのに……天方くんは将来、損をするタイプですね!」

「……こ、こういうの、あんまりやらない方がいいよ? 相手が勘違いするから!」

「こんなこと、天方くんにしかしないしっ……それに! 男性に好意を示すのは、過剰気味にやった方がいいと叔母の花七お姉さんが言ってましたし?」

「その叔母さんの言ってること、あんまり鵜呑みにしない方がいいと思うよ?」


どうも話の端々から、その叔母さんの過激さが見え隠れするんだよなぁ。

そのうち叔母さんは言ってました! とか言って、さらに蓮見さんが過激な行動に出ないか、今から心配だよ俺は……。


それはそうと。



「改めておはよう、蓮見さん……そういや朝に蓮見さんと会うのって初めてだけど、家はこのへんだったの?」

「えっ? ……ええ、そうですねっ、この辺ですね!」


 ――嘘だな。


本当にこの辺に住んでいるなら、小中と俺たちは同じ学校だったはずだ。

少なくとも、同級生の中に蓮見さんはいなかった、これは間違いない。

いやまぁ、私立に通っていた、って言うんならその限りではないけど!


「ほんとにこのへん? ちょっと遠回りしてない?」

「はぁ……よくわかったね、天方くん……うん、ちょっと遠回りしたかな?」

「まぁ、この辺住んでるなら、知らないわけないからね。で、またなんで遠回りなんて無駄なことを……割と遅刻ギリギリの時間になってるよ?」

「そんなの、天方くんと学校に行きたいからに決まってるじゃないですか言わせないで下さいよ恥ずかしい」

「お、おう……」


なんだこの人、意外と可愛いところあるんだな。

昨日のあれで、俺はこの人の事を勘違いしていたのかもしれない……。


「と、言っておくと男の子は喜ぶってこの本に」

「返せ! ちょっと可愛い人だなと思った俺の純粋な気持ちを返せ!」

「おやおや~? ……ふふっ、天方くんは、私を可愛いって思っちゃったのかー!」

「まぁ、幻想でしたけどねっ!」

「でも、可愛いとは思ってくれたんだから一歩前進だよねっ!」


つ、疲れる! 蓮見さんの相手するの、めっちゃ疲れる!!

蓮見さんと話していると、上げて落とすが多過ぎて疲れるんだよなぁ。

テンションの落差が激しいというかなんと言うか……。


「それじゃあ天方くん、手を繋ぎましょう! ふふふ、仲良く登校、嬉しいな!」

「え、いや繋がないけど……」

「えっ……な、なんでですか……? 唇は私と天方くんの唾液でつながったのに……手は嫌だと……?」

「往来の場でまたそういうことを……!」


ほら! 前を歩いてた女の子が、びっくりして振り返ってるじゃないか!

ああ、違うんです……僕たちはそういう……不純異性交遊はしてないんです誤解なんです……!

それどころか、お付き合いすらしてないんです……!


「酷い……あんなに夢中になって私のくちびるを貪ったくせに……!」

「してねぇよやったのあんただよ!?」

「てへっ」

「ああもうめちゃくちゃだよ……」


ほらもー! 前を歩く女の子の表情が、汚らしいものを見る目になってるよ!

ほんとなんです信じてください俺じゃないんです……っ!



「あ、そうそう、天方くんはいつもお昼ってどうしてるんですか?」

「えっ、ごめん、話の展開についていけない……え、お昼? 昼はいっつも、購買でパン買ってるけど」


 昼にパン買いに行くの、結構しんどいんだよなぁ。

同じくパンを買う連中が多いから、毎回争奪戦になって……。

うぐいすパンとかかにぱんとかいらないから、他の数増やしてよ!


「了解しました、それでは今日のお昼、私に時間をください!」

「え、なんで?」

「ふふっ、それはお昼休みのお楽しみってことで♪」

「うん、まぁ、いいけど……」

「ふふっ、約束ですよっ!」



にこにこと、嬉しそうに笑う蓮見さんの笑顔に一瞬どきっとしてしまった。

これは……不整脈だろうか?

まずいなぁ、最近あんまり寝れてないし、一度、病院へ行ったほうがいいかもしれない……。



「ハルのおばかー! 変態キス魔ー! うわーん!!!」

「あ、しまった……心春のこと忘れてた……」

「何気に酷いですね、天方くん」


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