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天方くんは甘いです!


その後、お手洗いと昼食に一度席を立った以外は黙々と二人で勉強を続け、時間は早くも午後6:00。


二人で勉強、と言いつつも、俺が分からないところを蓮見さんに質問し、それについて教えてもらうという形式なので、結局のところ蓮見さんにとっては勉強会でもなんでもない、というところが辛いところである。

俺にも、蓮見さんの役に立てるようなことがあればよかったんだけど……。


そう申し訳なさそうに言う俺に『それが蓮見先生の役割ですから! キリッ!』と、メガネをくいっとさせる仕草が、そこはかとない知性を……感じないんだよなぁこれが……。

なぜだろう、メガネといえば知性の象徴だというのに、蓮見さんがドヤ顔でメガネをくいくいさせればさせるほど、残念さが増して行くのだから不思議だ、不思議すぎる……。


そんな残念女教師蓮見さんだが、教師としての能力は本物で、このたった数時間の間に、今回のテスト範囲でどうしてもわからずお手上げ状態だった箇所も、あらかた潰す事が出来たので、大助かりだ。



「うー……ん、結構集中してやれましたね」

「だねぇ、これで中間も多分、大丈夫……だと思いたい……」

「ふふっ、大丈夫ですよ、多分出るだろうなぁって所は、あらかた教えましたから」

「蓮見先生にはマジでありがたみしかない……!」

「うむ、その感謝、忘れるでないぞ」


ははーっと頭を下げる俺と、腕を組んで俺をふんすと見下ろす蓮見さん。

目を合わせ、思わず二人で笑ってしまった。


「忘れないけど……何かお礼をしなきゃいけないなぁ」

「お礼ですか? うーん……でも、今日は2週に1回のデートですし、お礼をもらうほどでは……」

「いやいや、これだけじゃなくて心春の件もあるし」


心春の件は、マジで感謝してるんだよこれでも。

今思うと、夏前の俺はどうかしていたとしか思えない……心春に告白して、心春が俺の彼女になったら一夏を遊んで過ごす? バカが、何を夢見てるんだよ、天方日葵。


彼女になったら……彼女になったからこそ、勉強させなきゃいけないんだろ……っ!

やだよ、同い年の彼女が次の年から先輩って呼んでくるとか、なんの嫌がらせだよ、その日から俺も下級生の間で噂の的だよ、留年した三枝先輩の彼氏だってー! ってな。


……ん? 待てよ。

もしかして、こうやって蓮見さんと仲良くなれたので一番得してるのって、実は心春なのでは……?

あの夏のままだと、多分心春って留年してるよね?


……んん?



「ごめん待って、やっぱ心春の分は俺がお礼するのおかしい気がしてきた……」

「私もそう思いますよ、三枝さんについては、それこそ天方くんではなく、三枝さん本人からいただくべきですし」

「うん、だよね……俺も今、マジでそう思いました」

「だいたい、天方くんはちょっと三枝さんに甘いと思います!」

「え、そう?」


……そんなこと、初めて言われたかも。


心春とはもう10年以上の付き合いだし、誰からも俺たちの関係について口を出す人なんていなかったから考えたこともなかったけど、外から見たらそんなに変に見えるんだろうか……?


「甘いですよ、普通の幼馴染ってもっとこう……ドライじゃないですか?」

「そう? 他に幼馴染っていないからよくわかんないんだけど」

「これは、私がちょっと縁があって知っている幼馴染の二人組みの話なんですが」

「うん」

「天方くんと三枝さんみたいに、小さいころは仲がよかったのに、いつの間にか疎遠になりまして」

「ほうほう」


幼馴染って言っても、そう上手くいくことなんてないんだろうか?

まぁ、確かに俺の回りに、俺たち幼馴染なんですーなんていうの、一組もいないんだけど。

男同士ってのはよくみるんだけど、男女ってなるとほんとに少ないよね。


「気がついたらそのまま自然消滅、男の子は別の女の子と付き合い始めましたとさ、という……お互い、小さい頃は好きあってたはずなんですけどね」

「うーん、それは幼馴染だからってんじゃない気も……」

「まぁ、間が悪かったとか、何か些細なきっかけがあるかもしれません……が!」

「が?」

「幼馴染って、割とそういう、ドライな関係な事が多いと思うんです」

「うーん……そうかな……そうかも……?」


そうなんだろうか?

自分と心春に関係を置き換えてみても、なぜかそういう風になる絵が見えなかった。

夏休み前のあれはともかくとして、何もしなければ多分、俺と心春ってずっとなぁなぁの関係だった気がするし。


「だいたいですね、幼馴染とはいえ、血縁関係のない男女が二人きりで部屋にいて、何もないのがおかしいんですよ!」

「血縁関係のない男女二人」

「ええ、そうです! 聞けば天方くんの家には、頻繁に三枝さんが通っていたとか! この時点でなにもないなんて、天方くんは甘い――――」

「二人きりで部屋に」


ここで、ぴたり、と蓮見さんの動きが止まった。

うん、今、自分が何を言ったか気付いたのかな?

血縁関係のない男女が二人、二人きりで部屋にいて何もないのがおかしい状態……。



「い、今更ですけど……ふ、二人きりですね、天方くん……」

「そうだね、今日の朝から二人きりだったね、蓮見さん」


ほんとに今まで気付いてなかったのかよ。

いやまぁ名目上はデートってことになってるんで、二人なのは当然なんだけど。

あ、なんかそう意識したらこっちまで恥ずかしくなってきたかも。


「二人きりで……何も起きないはずも……はずも……よし!」


……何がよしなのかな?


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