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挨拶に来ただけだこれ!

 

「そうそう、今晩は夕飯、召し上がって行ってくださいね、天方さん」

「え、っと、そこまでお世話になるわけには……」

「いいえ、是非召し上がっていってください、そのほうが鈴七も喜びますので……ねぇ、鈴七?」

「お、お母さん! もー、いいからほらー!」


 ぐいぐいと背中を押して部屋から出そうとするも、そこはさすが蓮見さんのお母さん、全くその場から動かない……これが母親パワーか……!


「そ、そこまでしていただくのは申し訳が……」

「いいんですよ、今日は天方さんが来るから、と朝から鈴七が張り切って……」

「もうっ! お母さんはそろそろお稽古の時間でしょ! お弟子さん来るんじゃないの!?」

「はいはい……はぁ、本当にこの子はもう……くれぐれも……くれぐれも、年齢相応の節度のあるお付き合いをするのですよ?」

「~~~~っっ!」


蓮見さんは顔を真っ赤に染めて絶句しているがいやそれも仕方ないよね、うん。

良くも悪くも、花七お姉さんの影響力が、この家は強すぎる……!


「それでは天方さん、娘を宜しくお願いします」

「あ、はい、こちらこそ宜しくお願いします」


 はぁー、と最後にまた大きな溜息をつき、蓮見さんのお母さんが部屋を出て行く。

 そんなに溜息ばっかりついてたら、幸せ逃げますよ? 溜息一回で幸せが一つ、逃げるんですよ?

 今度また来る機会があったら、ストレス解消グッズでも持ってきてあげようかなぁ、なんだか疲れてそうだし。


「ほんとにお母さんは……ごめんね、天方くん?」

「ううん、大丈夫だよ。 いいお母さんじゃない」

「普段はああでもないんですけど……もうっ」


 そういいながらも、蓮見さんの表情からは本気で嫌がっている、という雰囲気は感じられなかった。


 うん、これはただ照れてるだけだな。

 ほんとこういうところが可愛いんだよなー蓮見さんって。

 そんな蓮見さんを見ていると、口角がついつい上がってしまうのを止められず、それを見た蓮見さんにじろっと睨まれてしまう。

 おっと危ない、危ない……。



「そんなことよりもほらっ、勉強しますよ天方くん!」

「あー……そういやそうだった、今日は俺、勉強しに来たんだったね」

「それを忘れるなんて……それじゃあ何しに来たのかわかんないじゃないですか、もうっ」


 ほんとだよ!

 蓮見さんのお母さんがあまりにも衝撃的過ぎて、ついつい本来の目的を忘れるところだった……これだと蓮見さんのご両親に挨拶しに来ました! になっちゃうよ。

 俺も、心春の事言えないなぁ……反省反省。


「さて……それじゃあちょっと、先に準備して待っててください」

「あれ、蓮見さんは準備しないの?」

「私も勉強をするために、ちょっとした準備がありますので、部屋で待っていてもらえますか?」

「ふーん……りょーかいしました、蓮見先生」

「ふふっ、いい子ですねー」


 そういいながら、さらっと俺の頭を撫で……。


「私の下着類は、ベッドの下の右端にある引き出しですからね?」

「今その情報、俺に伝える必要ありましたか!?」

「ふふっ……大丈夫です、私信じてますから、天方くんのこと」


 それはどっちの意味で信じてるんだろう。

 絶対開けるほう? 絶対開けないほう?

 うん、どっちを選んでも後々、ろくなことになりそうにない件について。

 こうして俺は、もやもやしたものを抱えながら、蓮見さんが帰ってくるのをひたすらに待ち続けるのだった……。



 そして、待つこと大よそ15分。


「――――お待たせしました、天方くん」

「お帰り蓮見さん、遅かった……ね……」


 そして帰ってきた蓮見さんは……。

 いつか言っていた、メガネと、第二ボタンまで開けたスーツを装備していた……!



「さぁ、蓮見先生の個人授業、始まりますよー!」



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