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心春ちゃんと遊ぼう!


「――――というわけで、今日は一日、ゆっくりモンスレして過ごそうと思う!」

「……何がというわけでなのか、分からないんだけど?」


 結局。

 俺と心春は何をすればいいのかがさっぱりわからず、週末を迎えてしまったわけで。

 どこへ行きたい? と聞いても、特にイベントのないこの期間に行きたいところも特になく……。

 なんだよ、そんなジトーっとした目を向けられてもお前も何にも思いつかなかったんだから同罪だろ、心春!


「だからって、あまりにもいつも通り過ぎるよハル……!」

「て言っても、夏休み前はだいたいこんな感じだったじゃん」

「ま、まぁそうなんだけどさぁ」


 そうだ、蓮見さんや柾人だって言ってたじゃないか、特別な事をする必要はない、って。

 だから多分、俺と心春はこうして過ごすのが一番いいんだと思うんだよね。

 それに……。


「お前、夏休み前にモンスレ買ってるだろ?」

「買ってるけど……」

「どうせ全然進んでないだろ」

「ふん! 夏休み、ハルが一緒に遊んでくれなかったのが悪いんじゃん!」

「だから今日は狩ろうぜ! ってことだよ!」

「わからない……本当にこれでいいのか、ボクにはわからないよ……!」


 心春は頭を抱えてるけど、これで間違ってないはずだ。

 今更気取ってデート、なんて俺と心春には無理無理。

 逆にギクシャクしちゃう未来しか見えないよもう。


「それじゃあ飲むもん持って来るから、準備して待っててくれな」

「うう、絶対違う……絶対違うよこれは……!」


 ……間違ってない、と思う。

 間違ってないよね、蓮見さん、柾人!?



 そんな風に頭を抱える心春を部屋に置いてリビングへと行くと、珍しく日向咲がぼーっと座っているのが目に入った。

 休日だというのに家にいるのは本当に珍しい……今日は何も用事はないんだろうか?


「どうしたんだ? ひまが休みにいるなんて珍しいじゃん」

「んー? うん、まぁそんな日もあるでしょ」

「ふーん、そんなもんかぁ……あ、これから心春とモンスレやるけど、ひまもやるか?」


 先週から、ひまがモンスレにどハマりしているのは知っているのだ。

 あれから何回か付き合わされたからね。

 気がつけばゲーム内実績も面倒なの除いてあらかた取り終わってるし、やりすぎでしょう!? って言いたくなる。


「んー……いや、今はいいかなぁ……」

「そか、やりたくなったら来いよ、部屋にいるから」

「ん、わかった。 ね、おにぃ」

「なんだよ」

「私がいるんだから、心春ちゃんとエロいことすんのやめてよ?」

「しねーよ!」


 なんなの!? 俺ってそんなことするような男だと思われてんの!?

 いやまぁ、夏休み前ならしたかもしんないけど、少なくとも今は何もしないよぉ……!


「ふん、おにぃはすけべだから信用ないんですよーだ!」

「おいこらひま!」



 そう言って自分の部屋へと逃げ帰ってしまった。

 くそ、心春が帰ったら覚えてろよ……!


 * * *



「はぁ、ひまはほんと、どんどんマセていって、お兄ちゃんは悲しいよ……」


 などと考えながら少し濃いめに入れたカルピスを持ち部屋に帰ると、なぜか心春が部屋の隅っこで蹲っていた。

 なんだろう、あそこに何か置いていただろうか?

 それとも、ゴミでも落ちているのか……?

 そう思いそっと心春に近づくと……「うわぁ……ヤバイってこれは……」という呟きが聞こえてきた。

 一体、何をしてるんだろう……?


「心春? どうしたんだ?」

「ひえっ!?」

「うわっ!」


 えっ、何!? そんなに驚くことあったか!?


「な、の、ノックくらいしなよ! レディの部屋だよ!?」

「いやここ、俺の部屋だし……それに誰がレディだ」

「なんだとー! 例えここがハルの部屋でも、レディがいるならノックはいるし! もしボクが着替えとかしてたらどうするつもりだし!?」

「その時はああ、こいつ痴女なのか……とそっとドアを閉めるわ」


 だいたい、この部屋で脱ぐ危険性があるのなんて蓮見さんくらいだろう。

 あの人には既に前科があるからな……!

 まぁ、それはそうと。


「で、必死になってさっきから何隠してんだ?」

「!!? か、かかか隠してなんてないし!?」


 うん、嘘だな。

 目線が泳ぎまくってんだよ、どう見ても嘘だよ。

 これで嘘じゃなかったら逆にその演技力に脱帽だよ。


「そっか、何も隠してないのか」

「もちろん! なんも隠してないし? それよりもほら! はやくゲームやろーよ!」

「おお、そうだな……あ! そういや心春ってこれ、好きだったよな?」

「えっ? あっ! そ、それは……!」


 そう言いつつ俺が取り出したのは……幼馴染の心春ちゃんが小さい頃から大好きだったお菓子、『キットカルト』だ。

 カルト的な人気を誇るお菓子で、宗教の教祖のように崇められている、もはや伝説のお菓子である。

 しかも俺の手にあるのは、1個が100円を超えるビッグサイズ版だ。

 敬虔なキットカルト信者な心春にとっては、よだれが出るほど惹かれるお菓子なわけで……。


「ほら投げるぞー心春ー」

「えっ! あっ! ちょ、ちょっと待って……!」

「ほーれぽーいっと」

「わわわっ! お、落ちる! キットカルト様が落ちるー!!」


 様て。

 まぁ、それはそうと。

 心春が隠そうとしたものは既に忘却の彼方だ、そこまで必死になって心春が隠そうとしたものはなんだったのかなー……って!


「ふぅ、危なかった……もう! 酷いよハル、キットカルト様を投げるなんて! って……あ」

「ふ、ふふふ……心春ぅ……お前これ、どこから出してきたんだ……?」

「え、えーと……えへっ?」

「えへっ、じゃねぇよ! おま……これ!」


 そう、心春が持っていたもの……それは俺が厳重に!

 分かりづらいよう辞典のカバーの中に隠して偽装し!

 蓮見さんですら(多分)気がつかなかった!

 男子なら誰しもが持っている本だったのだ……!


 蓮見さんはまだしも、心春に見つかるのは本当にヤバい代物だったわけで……!


「いやー、もしかしてと思ったら本当にあってびっくり? みたいな?」

「俺がビックリだわ! 何してくれちゃってんの!?」


 見られたこともヤバいけど、それよりもヤバいのは……。


「ねぇ、ハル」

「……なんだよ」

「ハルって、背のちっちゃい子が好きなの?」



 その一言で、俺は崩れ落ちた……。

 もう無理マジ死にたい……。 

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