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今日は蓮見さんとはじめての


翌日。


結局昨夜は、ひまに夜中の3時まで付き合わされて……本当に、本当に酷い目にあった……。

まさかマジで、目当てのレアアイテムが出るまでやらされるとは思わなかった……あいつはなれるぜ……立派なエリートハムスターに……!


そんな状態でも、遅れずに目覚める事が出来た俺を誰か褒めてもいいと思うんだ。

ちなみにひまは、今も俺の部屋のベッドですやすやである。

ちくしょう、母さんになんやかんやあって怒られろ!



そんなわけで、今日は日曜日、蓮見さんとの約束のある日だ。


蓮見さんとは朝の11時に駅前で、と約束しているが、さすがに人生初めての、心春以外の女の子との待ち合わせだ、遅れるわけにはいかない。

自分が先に待っている分には全く問題ないんだから、ということで30分ほど早く、待ち合わせ場所に着いたわけだが……。


「おはよう、天方くん」

「おはよう、蓮見さん……ま、待たせちゃったね」

「ううん、待ち合わせは11時だから、天方くんはむしろ早いほうだよ?」

「……一体いつから待ってたの、蓮見さん?」

「ふふっ、大丈夫です、私もさっき来たところです!」


なんだか男女が待ち合わせるときのテンプレート会話をされた気分だ。

でも、蓮見さんはとても嬉しそうな顔で、にこにこと笑いながら「一度、言ってみたかったんです」と、ぺろりと舌を出すんだから、もう何も言えない。

というか……うむ、あざと可愛い。

クールな蓮見さんは死んだ! もういない!!



「ところで天方くん」

「うん?」

「何か、私に言う事があると思いませんか?」


そういうと、蓮見さんが俺から少し離れ、くるんとその場で一回転。

ふわっと蓮見さんの香りが広がり、少し心臓が跳ねる。

シャンプー? 香水??

わからないけど、蓮見さんってほんと、いい香りがするなあ……。


そんな蓮見さんですが、今日は休日ということで、もちろん制服ではない。

膝下までの長さのグレーチェックのスカートに七部丈のカットソーと、全体的にモノトーンでまとまった色合いだけど、少し大人っぽい着こなしが、すごく蓮見さんに似合っている。


「うん、似合ってると思う、いつもと雰囲気違って、大人っぽくて凄く可愛いよ」

「かわ……そ、そうですか……ありがとうございます」


うん、頬を赤く染めて照れる蓮見さんも、やっぱり可愛いね。



「さて、今日はどこに行こう、ってか特に決めてなかったけどどうしよう? 行きたいところ、ある?」

「私も、特にどこに行きたい、というのはないんですが……そうですねー」

「どこでもいいよ、蓮見さんの行きたい所で」

「あ、じゃあ……動物園とか、どうですか?」

「動物園?」


これまた、蓮見さんから出てくるとはなかなか想像しづらいスポットが出てきたな。

動物園か……随分長いこと、行ってないなぁそんな所。

最後に行ったのはどれくらい前だったか……?


「実は今年、改装されてペンギンやアザラシが見れるようになった動物園があるんですよ」

「へぇ、ペンギンかぁ……そういえば、本物見たことない気がするなぁ」

「ですよね! あと、カピバラの赤ちゃんもいるんですよ、今! これがもうすっごく可愛くて……」


その後も、ニコニコとあれが可愛い、これが可愛いと話し続ける蓮見さん。

そこにあったのは、普段の姿からは想像も出来ない程に可愛らしい、年齢相応の姿だった。


いつも大胆なことや、ちょっとズレた事を言う蓮見さんだけど、もしかしたら、こうやって動物について目を輝かせてる蓮見さんが、本当の姿なのかもしれない。


……今は歪んでるけどな!



「それでね、お昼からはアリクイの散歩が……って、な、なんですか天方くん、その目は……」

「ううん、なんでもないよ」

「嘘です、今なんだか、すっごくいやらしい目をしてました! 天方くんのえっち」

「そんな目、絶対してなかったよね!?」


え、してなかったよね?

気付いてないだけで、実は俺って蓮見さんをいつもそんな目で見てたりしますか!?

やだ、そうだとしたら恥ずかしい……もうお嫁にいけない……っ!


「ふふっ、嘘です!」

「へっ?」

「天方くんからちょーっと父性的な視線は感じましたけど……えっちな感じはしませんでしたよ?」

「父性って」


なにそれ、俺、実はお父さん属性だったの?

安心の紳士なの?


「ふふっ、さて、そろそろ行きましょうか? ケープペンギンが私たちを待っていますよ!」

「……了解しました、お姫様」



小走りで右隣に並んだ蓮見さんが、ちらちらと俺の右手を見ているのがわかった。

ああ、これは手を繋ぎたいけど自分からいって、また失敗したらどうしよう……って悩んでる顔かな?


そう思った俺は、何も言わず蓮見さんの左手を取ると、一瞬驚いた顔をした後に、今日一番のステキな笑顔を見せてくれた。


……相変わらず、耳まで真っ赤だったけど。

でも、喜んでるみたいだから、いいよね?

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