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蓮見先生と秘密の個人授業

「というわけで、本日勉強を教えてくださる蓮見先生だ」

「お二人が進級できるよう、微力ながらお手伝いさせて頂きます蓮見です、よろしくおねがいします」

「は、蓮見先生! 宜しくお願いします……!」


 そういいながら、蓮見さんがくいっ、とめがねを押し上げ……え、そのめがね、どこから持ってきたの?

 赤フレームのめがねがめちゃくちゃ似合ってるんだけど!


「ちなみに、伊達めがねです」

「伊達なんだ……」

「私、視力には自信あるんです、両目とも2.0ですから」


 えへん、と胸を張る蓮見さんのとある部分が凄いことになってて目が痛い。

 そして、左隣の心春からの殺気が凄い……仕方ないじゃないか、お前にはない武器をお持ちなんだから!

 見ればその差は一目瞭然……痛い! 脛を蹴るな!!


「さて、お二人の不得意科目ですが……天方くんは数学だけですね」

「そうだね、文系は特に問題ないと思う」


「文系に関しては特に心配ないと思いますよ、特に社会科目がお得意なようで」

「よく知ってるね!?」

「ふふん、お隣の席だとなんでもわかるようになるんです」


 さすが、蓮見さんだ。

 その自信がどこから出てくるのか、全く分からない。


「ちなみに今、天方くんが一番興味ある教科は保健体育だと……」

「変な邪推するのやめてくれない!?」

「でも、視線が私の胸」

「見てません! ほんと見てませんから!!」

「そうですか?」


 こてん、と可愛らしく首を傾けないでください!

 ほんと、隣の席の三枝さんの視線が痛いんだから、今!



「で、問題の三枝さん、です、が……」

「よ、宜しくお願いします蓮見先生!」

「得意科目は体育、家庭科全般……その他、壊滅、と……さすがですね」

「へへへっ、そんなに褒められると照れちゃうっス!」

「褒めてません」

「そんなー……」


 はぁ、と溜息をつきこめかみを押さえる蓮見さん。

 うーむ、その仕草もまた、とても似合っている。

 なんならピシっとしたスーツを着てきて欲しいくらいだ……女教師・蓮見さんの秘密の個人授業、という単語が今頭をよぎったが、気のせいということにしたい。


「まず、現段階で三枝さんがどの程度できるのか知りたいので、この問題を解いてください」

「あの……このテスト、足し算と掛け算からはじまってるんですけど」

「もしかしたら出来ない可能性も在るかと思いまして」

「ないよ!? ボクのこと、どれだけバカだと思ってるの!?」

「「いや、バカですよ」」

「くそー! 二人してハモらせて! ボクの底力を思い知れ!!」


 そう、男前に宣言して始めたわりに、ペンの進みは遅い。

 おい待て、なんでお前、そんな序盤で手が止まってるんだ……?

 思わず蓮見さんと二人、溜息をついてしまうのも仕方ないと思ってもらいたい。



「さて、三枝さんはあれでいいとして……いえよくはありませんが」

「ごめんね、蓮見さんまで巻き込んで……あれに」

「ふふ、いいんですよ、本来なら今日は、放課後こうして天方くんと過ごせない番でしたから」


 そう言う蓮見先生は、とても嬉しそうな顔を見せてくれて、ちょっとくすぐったい。

 いつもと同じ、右隣に腰掛ける蓮見さん。

 でも、距離はずっと近くて……。


「それに、好きな男の子に頼られて悪い気のする女の子なんて、いませんよ」

「蓮見さん……」


 徐々に、蓮見さんの綺麗な顔が近づいてくる。

 その光景になぜか逆らう事が出来ずに、俺は……。


「ハルー! どうしよう、これ全然わかんないんだけどー!?」

「「…………」」


 またしても、二人で揃ってため息を零してしまう。

 心春……お前ってやつは……。

 これは本当に、来年の春には来るかもしれない。

「天方先輩と凄くウザい心春後輩」が!


「よーくわかりました、三枝さんには、小学校高学年の算数からやり直してもらいます」

「えーっ!!」

「口答えは無用です! 三枝さんのおばか!」

「なんだとー!」

「なんですか!」

「ま、まぁまぁ、ここ図書館だからさ……うるさくしすぎるのは……ね?」


 それでも二人の言い合いは止まらず。

 司書さんに怒って止められるまで、二人の言い合いは続くのだった……。



「はぁ……でもまぁ、心春が危機感を持ってくれたのは良かった……のかなぁ?」

「天方くん天方くん」

「はい、なんでしょう蓮見さん」

「(今度二人っきりの時は、スーツ、用意しておきますね♡)」

「えっ!?」


 驚いて振り向いた俺の目に飛び込んできたのは、それはそれは艶やかな笑みを浮かべた蓮見さんで。


「ふふふっ、蓮見先生のひ・み・つ♡の個人授業、楽しみにしててくださいね?」


 そんな蓮見さんにそう呟かれては、固まるしか選択肢はなく。


「ハルー、どしたの? そろそろお姉ちゃんと帰るよー?」


 心春に蹴りを入れられるまで、その場に立ち尽くしたのだった……。

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