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来襲・蓮見さん

 

 ……昨日はあれから、大変だった。

 もはや思い出すのも辛い……辛い記憶だ。

 もうマヂ無理学校行きたくない……。



 そんな時は眠るに限る。

 俺はもう夢の世界から帰りたくない……夢万歳。


「んっ……天方くん……」


 なんか今聞こえちゃいけない声が聞こえた気がしたけど、多分気のせいだろう。

 だって、今俺は眠ってるんだから、夢の世界にいるんだから。

 それにしてもなんだか凄いいい匂いがするなぁ……なんだろう?

 最近、どこかでこの匂いに出会った気がするんだけど……。


 それとなんだか……すっごく柔らかい何かが、右手に触れているような。

 温かくて、柔らかくて……弾力があって……すべすべしてて……なんだこれ?


 半分覚醒した状態で、右手をムニムニと動かすと、手の中の何かは俺の手の動きに合わせて、ぷにぷにと形を変えた。

 本当になんだろう、気持ちいいなぁ、癖になりそうだなぁとつい夢中で触っていると……。


「……ぁん……」

「えっ!?」


 耳元から発せられた、艶かしい声に一気に意識が覚醒した。

 すわ何事!? と目を開くと……


「すぅ……んふふふ……天方くぅん……」


 すぅ、すぅ、と俺の隣で寝息を立てている、下着姿の蓮見さんの姿が目に入った。

 下着姿の。

 下着姿の。

 ここ、とても大事なことなので2回言いました。

 そしてなぜか、俺も着ていたはずの上着がなくなり、上半身裸というこの状況。

 はは、朝からクラスメイトが隣で寝てるなんて、どこのライトノベルだよ。


 人間、異常な状況に遭遇すると逆に頭が冴えるものなのか、冷静に状況を観察する事が出来た。

 時刻は朝の7時過ぎ、いつもならあと5分寝ていられるところだ。

 そして隣には、下着姿で天使のような寝顔を晒している蓮見さん。

 上半身裸の俺。


「なるほど! つまりこれが朝チュンってやつかって納得できるかっ!!」


 おかしいだろ! 朝起きたらクラスメイトが下着姿で寝てるなんて!

 どこのラブコメ主人公になったんだよ俺は……!


「ちょ、ちょっと蓮見さん、起きて……!」

「んぅ……やぁ……天方くん……そこらめぇ……」

「どんな夢見てんですか!? お、起きて! 早く起きてー!!」


 あとやめて! 妙に艶かしい声で喘ぐのやめて!

 俺もKENZENな男子高校生なんですよ!?

 ゆさゆさ、と蓮見さんの肩を揺するとそれにあわせて胸部もゆさゆさと揺れいかん!!


「は、蓮見さーん!」

「んー……ふあ……はぁ……あ、天方くん……おはようございます……」


 まだ少し寝ぼけているのか、とろんとした目で見上げてくる蓮見さんが凄く可愛くて、思わず見蕩れ


「おはようのちゅーですー……」

「むぐっ!?」


 ちょ、ちょっと待って蓮見さん! 何ナチュラルにキスなんてしてきてんの!?

 ああっ、ちょっと待って! 口を割らないで! や、やめてぇぇぇぇぇ……!!



「ぷはっ……はぁ、ご馳走様でした♡」

「っはぁっ! ご馳走様じゃないよ! 何やってんの蓮見さん!?」

「おはようのちゅーって言ったじゃないですか」

「いや言ってたけど! 本当にやる奴がいるかっ!」

「ここに」

「ああそうだねここに一人いるねっ!」

「三回目のキスの味は……なんかわかんなかったんでもう一回いいですか?」

「やだよ……って三回目!?」


 待って、2学期初日に一回は覚えてるけど、三回って何!?

 二回目のキスどこでやった! 俺、全然知らないんだけどそれ!!

 あっ! もしかして昨日の昼休み、寝てる時か!?


 混乱する俺を見ながら、妖艶に微笑む蓮見さんという、非日常な光景に困惑する俺。

 そしてそこに登場するのはもちろん……。



「ちょっとおにぃ! 朝から何騒いでんの! うるさい……んだけど……」

「あっ」

「「…………」」


 そう、もちろん登場するのは、愛しの妹様の日向咲である。


 兄の部屋のベッドの上には、半裸の女性。

 そして兄も上半身裸。

 状況的にはどう考えても……。


「お、お母さーん! お、お、おにぃが女の子連れ込んで、えええええええっちなことしてるーーー!!!」

「ま、待ってくれ日向咲……ひまーーーー!!」

「ふふ、朝から賑やかだね、天方くんのおうちは」

「あんたのせいだからな賑やかなの!?」


 どうしてこうなったんですか……

 どうしてこうなったんですかー!!



「あ、あと見てくださいこれ」


 蓮見さんがどこからかすっとスマホを取り出し、俺に画面を見せてくる。

 なんだ? と覗き込むと……。


「ふふっ、上半身裸で眠る天方くんに寄り添う下着姿の私です!」

「ってこれは消そう! これはダメだよ蓮見さん!?」

「待ち受けにしますね♡」

「やめてー! もうやだこの人ーー!!」


 もうほんとやだ……!


「て言うか、どうやってうちに入り込んだの」

「どうやっても何も、普通に天方くんのお母様にご挨拶して、普通に入ってきましたよ?」


 もうほんとやだ……。

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