プロローグ1 ~今と狭間と~
小説初挑戦です。
よろしくお願いいたします。
ただ真っ暗な空間。
目を開けることも喋ることも身体を動かすことも出来ない。
しかし不安も恐怖も感じない。
「…………………………」
遠くから声が聞こえる。
懐かしく感じられるその声はしだいに近く、大きくなっていく。
「……………………………」
しっかり聞き取れるが理解出来ない。
おそらく自分とは違う言語で話しかけているのだろう。
「……タ………ケ…………」
何か理解出来そうな言葉だったがその声は遠ざかっていく。
そして声の聞こえた方から光が広がっていく。
目が覚めるとそこは教室。
いつものことだ。
今のは夢。
最近よく見る夢。
どのくらい寝ていたのだろう。
陽はだいぶ傾き西日が差し込んでいる。
「また寝てたの?」
呆れた顔をしながら教室に女性が入ってくる。
「うるさいな、恋歌。放課後なんだし、教室で寝てたっていいだろう。」
「うるさいとはなによ!わざわざ起こしに戻ってきてあげてるのに!」
こいつの名前は葉山恋歌。
クラスは違うが同級生だ。
部活が終わって教室に戻ってきたようだ。
ちなみにバスケ部らしい。
「頼んでないだろ。昨日は放って帰ったじゃないか。まさか…」
「そのまさかよ。今から晩御飯の買い出しに行くから荷物持ちよろしくね。」
同じアパートのお隣さんでもある。
俺と同じで独り暮らし。
理由は事故で両親を無くしたから。
少し前まで施設に居たのだが何故か隣に引っ越ししてきた。
俺のことも話しておこう。
名前は月城 晴輝
高校二年生。
恋歌と同じで両親はいない…というか記憶が無い。
簡単に言うと記憶喪失だ。
名前以外はまったく思い出すことが出来ない。
公園で寝ていた所を警察に保護されたらしい。
警察では身元確認出来なかったらしく、色々面倒なのか書類をいっぱい書かされ、警察関係の施設や保護施設なんかを転々としていた。
どうも戸籍とかもないってのが問題のようで引き受けてくれる所が無かったようだ。
最終的に落ち着けたのは戸籍などの手続きが終わった後、恋歌がいた小さい施設が面倒をみてくれて現在にいたる。
アパートで独り暮らしなのは、その施設がとても小さいのと入っているのが女性ばかりだったから。
かなり無理を言って出させてもらった。
記憶が無いこととか色々不安だったが恋歌が気にかけてくれて、いつも明るく接してくれたので最近は不安を感じることも少なくなった。
「何してるの?行くよ。その……バイトだってあるでしょ?」
アパート暮らしの為アルバイトは必須だ。
ちなみに学校には独り暮らしとバイトは禁止なので内緒になっている。
恋歌とスーパーでの買い物を終え大量の袋を抱えて部屋に着いた頃には暗くなりかけていた。
「じゃあなるべく早くご飯作って持ってくるから。後でね。」
そう言うと恋歌は部屋に入っていった。
毎日ではないけど晩御飯を作ってくれている。
(色々お世話になりすぎだよな…いつか何かお返ししないとな…)
そんなことを考えながら自分の部屋に入った。
買い物袋を片付けてバイトに行く準備。
たいして時間は掛からない。
時計を見る。バイトまで二時間くらいある。
(もう少し寝ておこうかな。)
教室で寝ていたのもそうだが暇さえあれば寝ている。
それは体力と気力のため。
保護されてからの記憶だけど一日持たない。
昼休みや休み時間に寝て持たせている。
特に病院の検査で何もないので問題はないのだろうけど…
恋歌がご飯を持ってくるまで休んでおくことにする。
…
……
………
眠っていたのだろう。
辺りはもう真っ暗だ。
…え…真っ暗?
ってヤバッ!バイトの時間!
…あれ?時計止まってる?
時計はさっき見た時と同じ時間を指している。
それより真っ暗なのになんで時計が見えるんだ?
辺りを見渡すと恋歌が机の所に座ってこちらを見ている。
「?いつ入ってきたんだ?鍵だってしてたのに…」
俺の問いに恋歌は答えない。
「恋歌?」
『……………………………』
どこからか聞こえてきた声はまったく理解出来なかった。
でもどこかで聞いた声。
それは…
「夢の中の声?」
思わず声が出てしまった。
しかし理解出来ない言葉は続いた。
耳がおかしくなるほど色々な言葉が飛び交った。
『………この言語ならどうかな?』
「あっ…」
聞こえてきた言葉が急に日本語に変わった。
女性の声のようだ。
『わかるみたいだね。この世界は言語が多くてあなたが理解できる言語になかなかたどり着かなかったよ。』
恋歌の声ではない。
何処から聞こえているのかわからない。
でも何故だろうか。
普通なら慌てたり戸惑ったりするのだろうが俺はいたって落ち着いていた。
『混乱してないみたいだね。もう少し慌てたり驚いたりするかと思ったけど。』
「…自分でも何故かはわかりません。」
『そうか。まずは今の状況から説明していこうか。』
声がそう言い終えると周りの景色が変わった。
いや、消えたと言った方がいいか。
ただ光に包まれた空間になっている。
ただ恋歌は存在したままだ。
『ここは君の知る言葉で言うなら異空間かな。空間と空間の隙間のような場所。私達[管理者]でも一部の者しか関与出来ない場所だよ。ここには時間という概念が無いんだ。だから先程の世界の時間は止まっていることになるかな。』
管理者?時間の概念?なにがなんだか…
とりあえず質問してみる。
「恋歌は無事なんですか?まったく反応しませんが…
あとあなたは一体何なんですか?姿がまったく見えませんし[管理者]というのもなんですか?」
『私は五十人いる[管理者]の一人。[管理者]は空間の管理やトラブルの改善をするお仕事だよ。こうやって空間の中の君たちと接触するのは緊急なときだけ。それで君の言ってる恋歌と呼んでいる彼女は一応無事だよ。』
よかった。無事なんだ。って俺に接触してる今は緊急時ってことだよね。
「一応ってどういうことですか?」
『………正直に言うと彼女も[管理者]なんだよ。トラブル改善の為に君の所に行ってたんだけど………。』
少し口ごもったような…
恋歌も[管理人]?
『…落ち着いて聞いてほしいんだけど、実は君はここに居てはいけない存在なんだ。』
え?どういうこと?
自分に小説を書く力があるかどうかわかりませんが頑張ります。
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