5/9
第六夜 寝肥り-ねぶとり
目を瞑って横になっていると、右腕がだんだん膨らんで重たくなってくるような気配がした。
おや、と思いながらも目を開けずにいると、今度は左腕まで重たくなってくる。
いよいよ寝苦しくなって寝返りを打つと、両腕はどんどん大きくなって布団に沈み込んでしまった。それでも膨らむのは止まない。
腕を動かそうと思ってもさっぱり力がはいらず、もう動けなくなってしまった。
そうしている内に、じりじりと妙な感覚が腕から足に移ってきた。
温かいような痺れるような感じが広がって、足も腕もどんどんと嵩を増していく。
どんどん嵩を増しながら、溢れた溶岩が冷えるように外側からじわじわと固まっていって、そうして私は頭を残したまま、体中がぶわぶわと大きな石になってしまった。
ほんの少しの間に起き上がることも出来なくなってしまったので、一体これはどうしたものだろうか、と考えた。
すると部屋のどこからか、碁石のように小さな鼠が一匹出てきて、わたしの左の爪先をちょん、と囓った。
その破れ目からふぅっと空気が抜けて、たちまち体は元に戻っていた。
-了-