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第二夜 柿の木-かきのき
残酷な描写あり(保険)
宛てもなくぶらぶらと散策していると、「落ちるぞ」と声がした。
何事かと思って振り向くと、柿の木に男の生首が生っている。
生首は「ほうい」と声を上げると、そのまま木から落ちてぐちゃりと潰れた。
唖然としながら見ていると、どこからともなく小さな赤い蟹たちがガサガサと湧いて、潰れた生首を残さず食べてしまった。
そしてガサガサガサと草むらに消えていく。
見上げるとまたさっきと同じ生首が、さっきの枝にさっきと全く同じ格好で生えていた。
柿の根本から「落ちるぞ」と、さっきの声がする。
それに生首は「ほうい」と返事をすると、茎からぷつりと離れて落下した。ぐしゃりと潰れて、辺りに血や肉や、よくわからないものが飛び散る。
そこへまた蟹が湧いてきて、アスファルトに散った生首を全部こそげて食べてしまう。
4回ほど繰り返したのを見たところでふと我にかえると、辺りはすっかり日が落ちて、星が光りはじめていた。
道にはもう生首も蟹もなく、熟れた柿が落ちているばかりだった。
-了-