日課
静かで騒がしい部屋、独特のにおい。
長枕に身体を預け、薄手のタオルケットを掛けられて。
いつも通りに、彼の人は寝ている。
「おはよう」
「今日は良いお天気だよ」
「庭のお花が綺麗に咲いたよ」
たまに目を開いて。
おとがいも動いて。
それでももう、意思の疎通が図られることは無く。
彼の人にあったと言って。
一方的に話しかけ。
一方的に手を握って。
「今日はもう帰るよ?」
「ゆっくり寝ていて良いんだからね」
「また明日来るからね」
消毒液の容器の頭を押し。
少しがたつくエレベーターを降り。
小さな駐車場へ。
ただそれだけの、実質10分前後。
往復約二時間の日課。
それが終わることは、不幸なのか幸せか。
今日もオドメーターが18キロ分増えた。