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サンチャイルド  作者: ノーリターン新
8/13

市街地は血の雨模様

雨がやまない。


サン・チャイ曹長は北部方面カツアゲ駐屯地にて重歩兵に搭乗。

敵軍、マルス民主主義国軍の猛攻から脱出。

カムイ中佐指揮のピース中隊と東へ13キロの地点で隠れている。

すべての重歩兵が偽装カモフラージュ、肉眼の目視では見えない。

濡れた緑の湿地だけ不自然なヘコミが前進を続ける。


「見えた、あの街か」


外部カメラ・ズームしても見えない。


「カメラレンズ・オート洗浄ウオッシャブルコーティング・・・」

「なんで手動でやるの?」


「チャイ曹長・・・お前の新型機体の強奪が作戦目標」

「強奪されたものを強奪するだけだからな」

「作戦計画は用意周到な準備と金が掛かっている」

「工作要員が数人都市に潜入済みだ」

「善良な市民のフリをして爆薬や地雷を設定してあるから」

「詳細レーダーにマーキングが出ている」


「出ていません」


「アップロードしろ、衛生からのリンクウェイトが出ているから」

「モニタのシークエンスガイドに従え」

「解るか?」


「はい」


カタカタピピ・・


「・・・・」


「誰も正面から突破するとは言っていないぞ、曹長」


「雨が」


「亜熱帯雨林の湿地帯に近代都市を造っただけだからな」

「いまが雨季だ」

「泣いてる暇なんてないぞ!」


「時間だ」

「中隊は作戦通り左右から中心点の駅舎ホームへ攻撃を繋げる」

「反撃する猶予を与えるな」

「これが奇襲だからな」


シュゥワ・・・


信号弾が上がったが・・・誰かがどこかで観測をしている。


重歩兵9機が左右へ別れてすっ飛んでゆく。

ホバリング高速走行は、静かな音で目立っていないが。

もう肩ウィングを広げた・・・一斉に飛ぶのか?


ブン!


手前の雑居ビル群を飛び越えた、離れた左右の区画で同時に。


「サーカス技術団だ」


俺は後方から見ているだけだ。俺の新しい機体が目当てなのだから。

俺を温存する。


上空を滑空しながら、集団によるライフル射撃とナパーム弾の投擲。

爆煙と炸裂音が平和な街を破壊し始める。

本当に平和だったのだろうか。

左翼につく俺のHPアイスマンも跳躍して飛翔を続ける。

雨の中、手前の雑居ビルを飛び超えると、地獄が見えた。


何も知らない一般市民が泣き叫んで逃げ惑う。赤い血、黒い血で海が出来る。もの凄い破壊音と物理的衝撃。

金髪に染めた若い女性が走りながらバラバラになった。

数人の市民の肉片とカラダのパーツが飛散。

血のスープに浮かぶ肉の食材。


「気持ち悪い・・・」


嫌悪感と罪悪感で、自分が悪魔だと錯覚する。

まだ何もしていないが・・・


破壊されたビル群の間と死体の道をホバリング走行。


タン!


嫌気がさして思わず跳躍をしたが、あちこちに敵勢力が隠れている。

市民を盾にする戦術は、無駄な殺戮が終わらない。


平和の盾を破壊して敵の重歩兵を破壊する。

血液の道が出来た。


だいぶ前方、俺が追従する左翼の部隊が道を切り開いている。


「星のため・・・」


これが星のためな訳がない、この死んだ人たちも星ではないか。

間違っているのは、全てなのだろう。


「サダコさんは俺に何を期待している」

「破壊の先に何を望むのだ」


指にハマるシルバーリングは光り輝く。

涙で濡れ落ちるティアドロップスは銀の輝きを増すのか。


「サダコ」


なぜ彼女が親密な男女に成る事を急ぐのか、何となくだが・・・


市民を殺すのも敵兵を殺すのも、同じことなんだな。



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