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サンチャイルド  作者: ノーリターン新
7/13

ミンミ・チャイ

南部歴0291年。惑星チーズで世界規模戦争が勃発。


テーガ(帝河)列国とマルス民主主義国の営利的な殺し合戦。

あたしらがテーガで敵がマルス。

大戦は何回目かしら。人間てすぐ死ぬからね。寿命が短いし。隣接する小さな国家群が同盟を結んで軍勢力を肥やす、単純。連なる民族の列国テーガは大昔はこの地方にも戦火を呼んだ。森さんと田んぼと川のこの地は、よそ者に好きにされてきた。何回死んでも殺されるのね。河で区切られる小国の群れは団結せねば強国に侵略される。あたしの住む小国は東トンナム国。昔は大きな国土だった。でも大人の陣取り合戦は、ガキの遊びと同じだわ。まったく、この星の奴らは殺して稼ぐのが好きなサルね。オンナも子供も壮大な人殺しに加担させられる。

戦時下で国の造幣局が紙幣を刷りまくるから紙幣が便所紙よ。インフレって金額数えるの一苦労だし。金を持ち歩くのも辛い。

この国の通貨はキンタ。キンタを隠しても何の得には成りゃしないご時勢ね。大昔の貨幣ゼゼコを隠し持ってるけど。こっちのほうが良いカネに成るそうよ。



あたしはリトル・ママ。

あたしの本名はミンミ・チャイ。今頃言うのは遅かった?

お兄ちゃんのサンが軍に入ってから、この家は男手が居ない。農村のこのド田舎では仕事が無いから両親は都会で出稼ぎ中。あと子供の唯一の成人ががひとり居るけど、長男ね。あのお兄ちゃんは帰らないよきっと。行方不明。不明でもお金は送って欲しかったわ。

あたしはまだ子供なんだけど学校は自主退学。て言うよりもお金が無いから行けないんだけどね。兄弟が多すぎるから、一番大きいあたしが全部ガキどもの面倒を見るの。あたしの役に立つのは妹のチャムと妹のフェイ。


いつも来る借金取りにいつも言われているのですよ。



「ミンミちゃん、俺等の店で働けよ。大金稼げるよ?」

「あんた程の美人なら客が毎日通うぞ」


「あたしが身体を売る訳にはいきませんよ」

「あと3日待って下さい」

「兄のお給料が入りますから」


「ふ~ん・・・」

「ミンミちゃんはお兄さんが人を殺してカネを稼ぐのに」

「自分だけいい子ちゃんブッてるのかぁ・・・」


「ふざけんな!!」

「とっとと帰れっこのクズども!」

「あたしの純血は惚れた男にあげるんだよっ!」

「帰らねーと◯◯◯ちょん切るぞ!!」


大きな黒バサミを持ちだして斬りかかるあたし。


ジャキンッジャキンッ!!


「ひえ~!こいつはダメだ!清純ブッた家畜ブタだ!」

「逃げろ~!本気で殺されるぞ!」


クエっクエっ!クワクワックワ!


庭で飼ってるニワトリ達が暴れ出す。


「あああ、あなた達はまだ食べないからね」

「安心してください」


クエっクエっ!!


「お姉ちゃん、狙われてるんだよ?」


「へ?」

「チャム、あなた何を言っているの?」


部屋の奥で妹のチャムがあたしに言う。

あたしのオモチャの内職を独り無言で続けていたが。


「チャム、大人の言う事は信じてはいけません」

「バカだから、現代はバカの時代ですからね」


「もういいよ、ミンミお姉ちゃん」

「売春でもして稼いできたほうが楽なんじゃないの?」


「!」


ばっちーん!!


「痛い!」


「チャム!」

「あなたいつからスケベな大人の言いなりになったの?」

「チャイの家系は御先祖様の時代から戦う歴史よ!」


隣でチャムの1個下の妹、フェイが不安そうな顔で見ている。


「フェイ、変な人を見たら大声で叫びなさい」

「サンお兄ちゃん、もっと大金おくれ・・」


サンチャイルド宛に送った手紙の返事が来ないけど。

まさかヤギさんが食べているのでは?


昔からあるチャイ家の土地で、畑を耕して野菜を栽培する。先祖代々家族はそうして来たけど。

いま百姓が出来るのは、あたしとチャムくらい。フェイにはまだ早い、足でまといです。

苦労して栽培したヤクダイコンが、収穫の時期に畑に行くと。ヤクが全部失くなっているのですよ。

あたしとチャムには理解が出来なかった。まさか、ひと様の苦労して栽培した食い物を盗もうなんて。何度も繰り返し、イタチごっこだと役場の大人は言うけど。

あたしはまだ戦っていません。だから現在あの土地は放ったらかし状態。

今は家の庭で家庭菜園中です。チャムとフェイが育ててる。




夜になった。


何にもないし誰も居ないから、まるで地獄に居るみたいね。

地獄って死んだように静かなのかな。

いいえ、きっとうるさくて寝かせてくれないのよ。

じゃあこの死んだような夜は何?

自然は生きている筈なのに。


「やっぱ、ど~見てもこの国はオカシイですよ」


窓際で立ち、庭を見ながらウリボウ果実を食べているチャムが話しかける。


「ミンミお姉ちゃん、家に入ったほうがいいよ」

「私のウリボウあげるから」「まだ沢山あるし」

「ヘンな男が狙ってるのはミンミお姉ちゃんだよ?」


「まさか、サンお兄ちゃんの仕事が関係しているのかな」

「巷で変な噂を聞いたから、サンが悪魔の化身だって」

「こ、恐い~っ!」


ぶるぶるぶる!


「お、お姉ちゃん。変なこと言わないでよお・・・」


「チャム!」

「全部の鍵閉めて戸締まりして!寝るわよ!」



電気を全て消して、真っ暗な闇の中で寄り添い眠る。

暗くて、毛布にくるまる兄弟は誰が誰だか。

闇に話しかけます。


「チャム、フェイ、小さなガキらはもう寝た?」


「うん」

「もう着替えの下着がないよ」

「何で洗濯しないの?」



「・・・犬を買いますよ」


「え、お姉ちゃん。犬も食べるの?」


「アホかあんたは。番犬を飼います」

「この家を犬に守って貰うの」


「ミンミ姉ちゃん、呪いって何?」


「フェイ、あなたにはまだ早いお話です」


「私は知ってるよ、生きてる動物の血で魔法をかけるの」


「チャム、少し違うけど」

「この世は悪が支配して居るのです」

「さあ、もう寝なさい」

「明日の朝ごはんは、卵の円盤焼き作るから」


「はーい」




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