カツアゲの朝
朝焼けのカツアゲ基地は、殺気立ってるな。
到着した。北部方面基地・カツアゲ。
手前でHPから降りて、2人で基地のフェンスを見つめる。
出入口ゲートで武装した警備兵数名がこっちを見ている。
どうやら事情を知っているみたいだ。
草原に立つ2人は、もう別れる。
「サン殿、お土産ですよ」
「え、みやげ?」
後ろを振り向くと。
「うむっ!?」
サダコさんに抱きつかれて唇を奪われてしまった。
「・・・・」
朝日に映える彼女は、やはり美少女だった。
「サン殿、あなたはまだ運命を知りません」
「やがて己を知る時が来ますよ」
「サダコは知っています」
「それなんだけど」
「何でみんな知ってるの?未来のことを」
「いまは証かせません、星のためですよ」
「ホシ?」
「ええ、星の未来の為に、です」
「・・・・・」
そんな大切な彼女の助言よりも、
ファーストキスを奪われたことが大きな出来事だった。
しゅぅわ
きゅぅんきゅぅん
「ありゃ?」
彼女のHPがもうあんな遠くへ行ってしまった。
「・・・行くか」
警備兵に案内されて司令部に歩いて来た。
騒がしいな、なんかあったみたいだ。
「チャイ曹長をお連れしました!」
「ああ、来ましたねチャイさん」
「ゴンゾ少佐です」
「は!チャイ曹長であります。遅れました」
「いいからいいから」
「もう敵の猛攻が来てますから、早く逃げなさい」
「はあ?」
「いや、あなたの命が狙われるんですよ。何処に居てもね?」
「はあ?」
「時間がない、整備ハンガーに駐機している」
「重歩兵に搭乗して逃げて下さい」
「チャイさん用にチューンを施してあるから」
「すぐに熟練兵並みに扱えるはずです」
「待っている中隊があなたをカヴァーします」
「カムイ中佐の中隊、ピース中隊があなたを守りますから」
「東部の都市まで行きなさい」
「チャイさんの新機体が、そこまで運搬されてきましたから」
「良いですか?マニュアル全巻を大切に!」
「は、はあ・・・」
どどどーーん!!
「警報発令、敵襲!訓練じゃないわよ!実戦なのよ!」
「ゴンゾ少佐!あんたも逃げるのよ!」
「判ってますよ!チャイさん、そ~言う事です」
「チャオ!」
「うわああ、もう基地がムチャクチャになってるぞ」
敵の戦車部隊とHP部隊の連携は凄いな。
攻撃ヘリ数機の脅威が半端じゃない。
この基地の防御態勢が壊滅状態だ。早くハンガーへ!
「ハンガーだ、あれ?」
「おい坊主ここだ、ここ!」
「ああ、これか!」
HP「アイスマン」普通の現役の重歩兵だが。
「早く乗れ!全部を高速設定でお前さんに合わせてあるぞ」
「はい!すぐに起動します」
真横の机に置いてある装備一式を身に付ける。
コックピットハッチ・フルオープンで待ってる重歩兵に搭乗。
ヘルメットバイザを起動、バイザ上でカウントが始まる。
初回起動成功、マスタチェック終了。
エネルギ臨海まで3秒、続いて稼働可能まで9秒。
ぶぅん!
ばいんばいん
きゅぅうん!
もう整備兵は退避したな。
武装チェックオン・・・使えるのは。
肩兵装マルチパック、ミニリニアカノン。
右腕部サブマシンガン、左腕部デュアルハンドガン。
「こんなに凄いの初めてだぞ」
バカンッ!!
来た!敵だ。
無線が入る。
「チャイ曹長、そんなのは相手にするな」
「カムイ中佐だ、早く来い」
「中佐殿、この機体の特性を見ますので、少し待って下さい」
「・・・早くやれよ?」
「了解!」
バーチャルモニタには見えないが、壁越しに敵戦車が居る。
蛍光色デジタル表示が教えている、捉えて離さない。
ズムン!!
壁コンクリを貫通してミニカノンが命中した。
きゅうーん!
ハンガーを飛び出して敵勢力へ突進。
居た、敵攻撃ヘリが狙ってる。
バシュバシュバス!シュンシュンシュン!
対地ロケットポットを連射してきた。機動を真横にスライドホバ。
横に滑りながら隣に居る攻撃ヘリをロックオン開始。
目の前の攻撃ヘリに、
サブマシンガンとハンドガンを狂った様に撃ちまくる。
精度を気にしない弾痕の集約効果だ。
バーチャルモニタ上で半透明デジタルマーカが狂った様に踊る。
ずずーん!!
次だ、真横の攻撃ヘリ同機種。
ピィィ!
ボシュボシュボシュ
マルチミニミサイルの雨が敵攻撃ヘリへ飛んでゆく。
撃墜確認はしないで、真下のうろたえている重歩兵にかかる。
4機小隊だな。
味方の兵力はまだ生きている。基地内が黒煙と爆炎とで赤く燃えている。
死体と肉片が散乱している。破壊された機械パーツも転がる。
暴力の嵐、生き地獄だ。
きゅん!!
横スライド強制停止。リニアカノンを撃つ。
ズム!
デジタル照準が遅くて待てない。速射性に優れるが連射はダメ。
やはり外れた。
サブマシンガンでコックピット装甲の破壊に務める。
バルバルバルバル!!
破壊された装甲ハッチから赤い鮮血が飛び出す
搭乗員は即死。
次!
「チャイ曹長!」
「いつまで遊んでいるのだ、置いていくぞ!」
「了解!合流します」
ばいんにゃ!
キュルキュル
きゅんきゅうん
「ふう・・・血が燃えているな。今まで死んでいたのか?」
「火薬の声が聴こえる、硝煙の匂いが俺に戦術を知らせる」
カツアゲ基地はまだ落ちてはいない、敵勢力はかなり叩いたはずだ。
「味方のHPがまだ戦っている」
「チャイ曹長、ピース中隊に合流します」
「よし、レーダーに出ている筈だ。2キロ東だぞ、3時方向だ」
「はい、判ります」
サダコさんがお土産をくれたシルバーリングと・・・
熱い抱擁とキスが俺を変えたと思いたい。