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雲の狭間から

作者: 百井 江琳

初めて自作の小説を投稿します。拙い文書ではありますが、読んでいただけるととても嬉しいです。

少し前まで降っていた雨がやんでいた。雲と雲の狭間からは、傾きかけた太陽が顔を覗かせていた。

「虹が見えるかもな・・・」

僕寺田海斗は呟いた。

「なに言ってるの?お兄ちゃん。虹なら向こうにあるじゃん!」

顔も知らない少年は、小学校低学年だろうか、短い 腕を懸命に伸ばし、僕が見ていた方向とは真逆の空を指さした。

「・・・すっげぇな・・・」

僕は呆然と呟いた。鉛の様な空は風に吹かれて消え去り、赤みを帯び始めた青空、に大きな虹が掛かっていた。

僕はふと昔の事を思い出した。


3年前のことだから、僕が小学校5年生の時の話になる。

僕はその年、喘息の発作を何度も起こした。僕の住む街は交通量が多く、お世辞にも空気が綺麗とは言い難かった。僕は医者の勧めで、夏の間は空気の綺麗な海の近くにある叔父の家で暮らす事になった。

そんな時にひとりの少女と出会った。

その日の僕は1日中暇を持て余していた。そんな様子を見ていた叔父が、海の方を散歩する事を提案され、しぶしぶ家を出た。言われた通り、海の方へ出てみると、白い灯台が見えた。僕は灯台に吸い寄せられる様にふらふらと歩いて行った。

遠くからは見えなかったが、ひとりの少女が灯台のそばに腰掛けて、流れる様に鉛筆を動かしていた。

背中の方に流した艶のある長い黒髪、白色の地に水色の可愛らしい小花柄をあしらったノースリーブのワンピース。

僕はじっと彼女を見ていた。

しかし。

「何の用」

冷たく、よく通る声だった。僕が答えられないでいると、更に言葉を重ねた。

「さっきからずっとそこにいるじゃない。あなた、海産物屋の寺田さんの家に泊まっているんでしょ、療養で。」

「何で、その事を?」

「この町は小さいから。良くも悪くも何でも話が回っていくのよ。」

僕は驚いた。僕の街は他人に興味のない人が殆どだった。

「あの、僕の名前は寺田海斗。君は?」

「・・・凛。佐々木凛」

振り向いた少女は息を呑むほどの美人だった。

大きな目、形の良い眉、淡い桃色の唇。

僕が今まで出会った女性の中で1番の美人だった。

その日から、僕と凛は毎日会って話しをした。家族の事、喘息の事、周囲の人々の事、学校の事など。どれも当たり障りのない話しで、僕はとても嬉しかった。学校では皆に余計な気を使われ、親しい人がいなかったのだ。

僕はこんな日々が永遠に続く事を願った。

しかし、夏というものはとても短く、とうとう自分の街に帰る日がやって来た。

その日は朝から雨が降っていて、別れが尚更辛く感じた。

「また来るよ、凛。また来年、会おう」

「・・・ごめんなさい。私、父親の、都合で海外に行くことになったの。だから、ここで本当にお別れ。」

「・・・そっか。でも、またいつか会えるといいな。ほら、ちょうどこんな空の下で、ね」

いつの間にか雨は止み、雲の狭間からは太陽の光が一筋差し込み、大きな虹が掛かっていた。

「そうね。バイバイ、海斗くん。またいつか、ね」

「じゃあね、凛。またいつか」


「あれー?お兄ちゃん、何で泣いてんのー?」

はっと我に返った。確かに視界が少し霞んで見える。どうやら凛の事を思い出しているうちに涙が、出ていたらしい。

「いや、眩しくて、ね」

適当に言い訳をし、僕は少年に背を向けて歩き出した。

3年が過ぎた今でも覚えている。

凛の事、凛と約束した事。

凛は覚えているだろうか。

僕の事、僕と約束した事。

暑さが戻ってきた空の下で、ひとり呟いた。

「またいつか、会えるといいな。ちょうどこんな空の下で、ね」

通り過ぎた公園のブランコは風に揺れ、水溜りには色鮮やかな虹が輝いていた。

はじめまして。

百井江琳(モモイ エリン)と言います。


如何でしたでしょうか。

まだ学生なので、文章力があるとは思えませんし、良い作品になっているかもわかりません。しかし、もしも楽しんで頂けたら嬉しいです。

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