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松宮桃子(まつのみや ももこ)内親王の奮戦

作者: 航空母艦


1941年、12月8日、


海軍の艦隊、陸軍の師団、その全てを投じ決行された『真珠湾侵略』

しかし、


世界には必ず居るのが、裏切り者だ















ここはトルコ国境近くの走行中の快速列車、

黒く硬いボイラーが一生懸命に一心不乱に煙を吐き出し、

爆走する、


「追いつかれますねぇ」

側近の『青井 瑶子』が窓から体を乗り出して呟いた


「当たり前だ、こっちは貨客車を引いた丘蒸気、あっちはBDT装甲列車と殴り込み部隊用貨車、圧倒的にこっちが不利だ」

そう言って的確に部下に指示を出すのは護衛隊隊長『小野賀 幹久』


「本土もあんな状況なのに俺達まで狙われるか」

後部車両に早足で小野賀は向かった


「た、隊長、我々には小銃と拳銃しかありません、」

部下の一人が木箱を開けながら報告する


「...殴り込み部隊さえ何とかなればいいんだ、それ以上は求めない」

胸ポケットから煙草の箱を取り出し、

部下に配っていく


「戦いが終わったら吸え、高級品だぞ?」

部下の表情を確かめるとニヤリと笑い、

貨車の扉に小銃を向けた


曇り硝子の窓に浮かぶ漆黒の影はドンドン大きくなっていく

そしてついに、

列車に衝撃が走り、扉が吹き飛ばされた、


「撃てぇぇぇ!!!!!!」

全員が小銃を発射し、

ソ連の兵士を撃ち倒す


しかし相手も人海戦術を駆使し

何とか乗り込んでこようとする、

するとここで、


「隊長!!有りました!!」

担架で運ばれてきたのは『九二式重機関銃』であった


「でかした!!早くしろ!!ここは食い止めておくから!!」

運んできた部下は慌てて設置作業に取り掛かる


まるで蜂の巣をつついたかのように、

ソ連兵は一行に衰えを知らずにうじゃうじゃと出てくる


「貨車を狙え!!大本を絶つんだ!!」

設置された重機関銃が任せろとばかりに唸り声を上げ、

ソ連兵の乗る貨車にその熱せられ、真っ赤な光の痕跡を残した銃弾を叩き込む


ここで漸く、

ソ連兵の勢いが急速的に落ちた、


恐らくもう人が居ないであろう、

しかし、

なおもその血塗られた貨車はこの列車に付いてくる、


「しつこい野郎だ、連結部を確認し...」


ソ連兵の居た貨車が、

勢い良く吹き飛ぶ


「な!!しまった!!装甲列車の存在を忘れていた!!」

吹き飛んだと同時に、

設置された重機関銃が懸命にその弾を相手の砲塔に叩き込むも、

軽い金属音だけを残し全て弾かれる


相手の砲身は、

こっちに向けられていた


「南無三......!」
















物凄い衝撃と砲撃音が聞こえた

側近がしきりに窓から後部車両に向かって叫んでいた

『小野賀隊長』、と


「ねぇ、嘘でしょ?瑶子さん?」

私は気が狂いそうだった、

あの憎い装甲列車を、爆破してやりたい気分だった、

人はこれを、『キレた』と言う


ヨーロッパ親善訪問の帰りにもかかわらず、

この事態は耐えるに耐えられなかった、

本土の件もあるからだ、


「松宮殿、絶対にここを動かないで下さい、貴方さえ生きていれば、日本は救われるんです!!」

涙目で訴える青井は、

何処か説得力が無かった


「...私も戦うわ、日本人は、やられるだけが能じゃないって、叩き込んであげなきゃね?」

そう言って、

青井の返事を待つ、


なにやら後部の車両が騒がしくなってきた、

恐らく、来てしまったのだろう、


勢い良く装飾されたドアが弾かれる


「...貴方が、ジャパニーズエンペラー、お目にかかれて光栄です」


嘘だ、


「あなた方の隊長さんには、途中下車させてもらいました」


嘘だ!


「抵抗さえしなければ御身分は保証します、どうか、捕まってください


「嘘だ!!」


車内一杯に響いたのは、

青井の声だった


「貴方は嘘をついている!私には分かります、小野賀さんをあんな無残に殺す貴方は少なくとも、人ではありません!!!」

松宮をかばうように青井は前に出る


「...仕方が無い、こんなことはしたくなかったが、力ずくで奪おう」

男の顔が一気に冷酷に成る、


それと同時に、

青いも身構えた、


「国も何も無いエンペラーが調子をこくなよ」

男は懐から縄を取り出し、


まるでサーカスの鞭の様に自由自在に振り回す


「未だ有るわよ、仲間が居る」

そう言って、

松宮が懐から取り出した短刀を構える


「松宮殿、ここは、村辺さん呼んだ方がいいと思います、ここは任せて下さい」

暫くの沈黙が流れ、

松宮は、こくりとうなずくと、前方の車両に消えた


「さぁて、女が男に勝てるかね?」

相手はニヤリと笑い、

縄を振るう、


それを身軽な青井がギリギリで避け、

列車の天井からぶら下がる手すりに摑まり、

振り子のように、相手にけりを入れる、


見事、ハイヒールのかかとが相手の額に命中し、

よろけた所にとび蹴りを打ち込んだ、

流石の相手も顔面蒼白で此方を睨むことしか出来なかったぐらいだ、


「例え、あなた方が日本を占拠しようとしても、我々は、必ず取り戻しに行きます!!」

可憐な回し蹴りを相手の腹部に叩き込んだ


この時点で相手は唇を血で染め上げており、

真紅な色をしていた


「ック!!小娘が!!」

その手に握った縄を振り、

青井の首に巻きつけ引き寄せる


「どうだ!!苦しいだろ、調子こきやがって」

ギリギリと、

青井の首が絞まっていく、


先ほどまで水の中の魚だった少女が、

今は漁夫に釣られた魚の様な少女と化した


「待たせたな、」

聞き覚えが有る声が耳を撫でた、


次に瞬間、

何かが突き刺さる様な音と共に

縄が緩み、相手がひざを付く、


ふらふらと立っていた男は、

知ってる人だった


「小野賀さん!!」

咳き込みながら、

彼の名前を叫ぶ


「まだまだ来るぞ、気を付けろ、」

そう言って、

彼は倒れる、


ギリギリで青井が支え、

抱きかかえる、

全身から吹き出る真っ赤な液体で青井の服も見る見る染まっていく


「大丈夫ですか!!?小野賀さん!!」

「瑶子さん!!早く!!駅に到着しますよ!!」

前部の貨車から帰ってきた松宮が叫ぶと、


青井は、

小野賀を背負いあげる


「...すまねぇ、迷惑ばっかで」

「いいんです、行きますよ」

一行は、前方の列車に急いだ















オリエント急行の最終着駅、

ここは、『イスタンブール』


ここでは、

日本の天皇を迎えるために、

沢山のトルコ軍の軍人が隊列を作っていた


イスタンブールの直ぐ南西には港があり、

現在そこには御召艦の『五十鈴姫』が停泊していた、


この専用御召艦『鋼龍型』は同型艦が『黒曜』と現在停泊中の『五十鈴姫』しかない

とても貴重な専用艦である


鋼龍と黒曜は現在天皇陛下を乗せ、

トラックで待機停泊中である


話を戻そう、


「...来た、」

双眼鏡で蒸気機関特有の煙を捕捉する

しかし、

長年の勘が何故か警告を放っている


「様子がおかしい、」

そう言ってる彼は陸軍の『イズミル』だ


間もなくして、

列車は駅に滑り込む


その無残なまでに破壊された後部車両がただならぬ雰囲気をかもし出していた


「襲撃か!?」

イズミルが慌てて車内を確認する、


「誰一人と乗っていないぞ!!どういう事だ!!」

長年の勘の警告で自然と焦りが出始める


しかし、

前方の貨物車両で突然、

内燃焼機関独特の回転音が聞こえ始める


そして、

木製の貨物車の扉を蹴破り登場するは

『LT-38』である、

この戦車は日本陸軍が研究目的で購入したものだ、


イズミルが急いで駆けつける


「え、エンペラー!何があったんですか!?」

「いいからここの会場に居る者を非難させよ!!」


すばやく指示を出し

民間人や部下を非難させる、

間もなくすると、

黒い鉄の塊が駅のホームに突っ込んできた、

客車を見るも無残に踏み潰して、


装甲列車の扉が開くと、

ソ連兵の雪崩が押し寄せる


「村辺!!出して!!」

「おおせのとうり!!」


アクセルが踏み込まれ

エンジン回転数が一気に上がり、

戦車が急発進する


「ここは我々に任せてください、」

イズミルはそう言うと、

駅のホームの銃声がする土煙の中に消えた


「有難う、トルコの戦士たち、我々も急ぐ」

目と鼻の先にある御召艦五十鈴姫へ、

一行は足を速めた、


彼女の戦いは、

ここから始まり、

1945年の8月に転移するまで続いた、


あの日を境に

ドイツはイギリスと一時停戦条約を結び、

対ソ連戦に本腰を入れた、

ヒトラーのスターリン嫌いも有り、

準備は順調に進んでいった


そしてまた、

彼女、松宮桃子内親王は後に英雄としてあがめられるが、

それはまた何時か、

別の機会に話そう、


日本奪回戦争の

始まりだった




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