黒龍(第七話)
夜。
崩壊しかけた高架下。
空間の歪みから現れたのは――
ジドバの王、サイド。
長身。静かな圧。
その手に握られている一枚のカード。
漆黒の縁。
中心に刻まれた龍。
宇佐美の心臓が強く打つ。
「……それは」
サイドが口元を歪める。
「プロトカード。
暗黒龍ブラックドラグーン」
空気が重くなる。
「かつて玉木隼人が使用した失敗作」
宇佐美の拳が握られる。
「それを、なんでお前が持ってる」
サイドは淡々と言う。
「原型は我らが管理していた。
貴様ら人間が“盗んだ”だけだ」
カードを掲げる。
「ブラックドラグーン」
闇が噴き出す。
地面が裂け、黒い龍の幻影が空を覆う。
装甲が形成される。
重く、禍々しい。
漆黒の龍戦士。
目が紫に光る。
圧が違う。
暴力そのもの。
「玉木はこの力を制御できなかった」
サイドの声が低く響く。
「だが王である私ならば可能だ」
瞬間。
ブラックドラグーンが消える。
次の瞬間、宇佐美の腹部に衝撃。
吹き飛ばされる。
壁を砕く。
立ち上がる。
血の味。
「……上等だ」
宇佐美はデバイスを握る。
「レッドドラグーン」
赤い光。
炎のようなエネルギーが体を包む。
龍の咆哮。
装甲が展開。
鮮烈な赤。
機動型。
推進力重視。
レッドドラグーン融合体。
サイドが笑う。
「模倣品が」
「違う」
宇佐美の目が燃える。
「これは、俺の力だ」
加速。
赤い残像が夜を裂く。
ブラックとレッドが激突。
火花。
衝撃波。
地面が砕ける。
ブラックは重く、圧倒的破壊力。
レッドは速く、連撃特化。
だが差は歴然。
ブラックの尾撃で宇佐美が地面に叩きつけられる。
サイドが見下ろす。
「玉木はこのカードで敗北した」
ブラックドラグーンの胸部が発光。
「過去をなぞるだけか?」
宇佐美が息を吐く。
「違う」
立ち上がる。
「俺は玉木の続きだ」
赤いエネルギーが強まる。
ブラックの攻撃を受け流す。
「過去は奪わせない」
拳がぶつかる。
黒と赤。
空間が軋む。
サイドが一瞬、目を細める。
「……興味深い」
ブラックドラグーンの闇が揺らぐ。
「貴様の赤は、原型とは異なる」
宇佐美が前に出る。
「玉木は失敗した」
低く言う。
「でも俺は違う」
レッドドラグーンの胸部が発光。
炎が龍の形を取る。
「過去を抱えたまま、進む」
激突。
爆発的な衝撃。
ブラックドラグーンの装甲に亀裂。
サイドが後退する。
だが完全決着ではない。
サイドはカードを収める。
「面白い」
闇が収束する。
「オメガも絡む以上、ここで潰すのは惜しい」
空間が裂ける。
撤退。
静寂。
変身解除。
宇佐美は膝をつく。
息が荒い。
手の中には、ブラックドラグーンの残留データの断片。
「……玉木」
小さく呟く。
「お前の失敗は、俺が終わらせる」
夜風が吹く。
遠くで雷鳴。
四天王の一角、アダバイス。
そしてバキドの王サイド。
戦いは、まだ序章。




