資格(第五話)
廃ビル群。
夜。
宇佐美と孝太朗は、瓦礫の上に立っていた。
目の前には――
戦闘民族、ジドバ族の上位個体。
黒い装甲。
異様に静かな殺気。
「お前らの“正義”には飽きた」
低く、冷たい声。
宇佐美が構える。
「ここで止める!」
孝太朗も前へ出る。
「俺が相手だ」
戦闘開始。
レッドドラグーン融合体で応戦する宇佐美。
人工ジドバの力を解放する孝太朗。
だが――
敵は圧倒的だった。
音速級の移動。
重撃一発でビルの壁が粉砕される。
孝太朗が吹き飛ばされ、血を吐く。
宇佐美が叫ぶ。
「くそっ……!」
敵ジドバが静かにカードを取り出す。
銀色の紋章。
Ωの刻印。
宇佐美の動きが止まる。
「……それは」
孝太朗が目を見開く。
「まさか……」
ジドバは笑う。
「知らなかったのか?」
カードが光る。
「“この世界の住人ではないこと”」
低い声。
「それが資格だ」
宇佐美の背筋が凍る。
敵は続ける。
「我らは元より、異界の存在」
カードを装填。
装置が展開する。
空気が震える。
重低音が響く。
《Condition Clear.》
《Omega Authorization.》
宇佐美が叫ぶ。
「待て……!」
だが、遅い。
光柱が立ち上がる。
黒と銀の装甲が形成される。
背部ユニット展開。
エネルギー翼発光。
《OMEGA》
変身完了。
立っていたのは――
宇佐美と“同じ姿”の戦士。
完全に同一のビジュアル。
違いは、瞳の色だけ。
冷酷な赤。
宇佐美が呟く。
「……敵も、変身できるのかよ」
オメガが一歩踏み出す。
地面が砕ける。
次の瞬間。
視界が消える。
宇佐美の腹部に衝撃。
吹き飛ぶ。
速すぎる。
孝太朗が立ち上がる。
「オメガは一人しかなれないはずだろ……!」
敵オメガは振り向く。
「“一人しか存在できない”とは言っていない」
静かな一言。
「同時に複数は不可能。だが今、この瞬間――」
宇佐美がまだ未覚醒である以上。
資格者は、敵。
拳が振り下ろされる。
圧倒的な力。
宇佐美は倒れ込む。
空を見上げる。
(俺じゃ……ないのか)
敵オメガが歩み寄る。
「力に善悪はない」
見下ろす。
「選ばれたのは、私だ」
トドメの構え。
その瞬間――
孝太朗が割って入る。
「……ふざけるな」
血を流しながら立つ。
人工ジドバ。
「その資格なら……俺にもある」
敵オメガの視線が揺れる。
宇佐美がかすれた声で言う。
「孝太朗……」
だが孝太朗はまだカードを持たない。
敵だけがオメガ。
突きつけられる事実。
「正義だから変身できるわけじゃない」
敵オメガが跳躍。
オメガは宇佐美に殴りかかる。
フラッシュバック。
研究施設。
崩壊する並行世界。
誰かの声。
《玉木隼人、緊急転移開始》
宇佐美の呼吸が乱れる。
敵オメガが続ける。
「お前は選ばれたのではない」
「逃がされた」
その瞬間――
胸部コアが不安定に明滅。
出力が落ちる。
敵オメガがトドメを放とうとする。
孝太朗が割り込む。
吹き飛ばされる。
「ぐあっ…!」
宇佐美が叫ぶ。
「孝太朗!」
敵オメガが冷酷に告げる。
「力は覚悟に比例する」
「お前は“この世界で生きる覚悟”がない」
静寂。
宇佐美の中で何かが折れかける。
だが――
思い出す。
未来の栞。
笑顔。
孝太朗の言葉。
浅倉ひよりの言葉
「大丈夫だよね…玉木なら。」
宇佐美の目が変わる。
「……逃げた?」
ゆっくり立ち上がる。
「違う」
胸部コアが強く発光。
「俺は選んだんだ」
エネルギーが逆流する。
装甲のラインが赤から深紅へ。
背部ユニットが再展開。
敵オメガが一歩下がる。
「出力が…」
宇佐美が静かに言う。
「俺はこの世界の住人じゃない」
一歩踏み出す。
地面が割れる。
「でも――」
拳を握る。
「ここで生きるって決めた」
システムが再起動。
《Omega Core Re-Sync》
《Limiter解除》
雷鳴。
オメガの全身から蒼白のオーラが噴き出す。
敵オメガが構える。
高速戦闘。
今度は違う。
視界が追いつく。
音が遅れる。
敵の攻撃を完全回避。
一撃。
装甲が砕ける。
敵オメガが初めて苦悶の声を上げる。
宇佐美が至近距離で言う。
「力は善悪じゃないんだろ?」
拳を溜める。
「だったら――」
《Omega Break》
直撃。
巨大な衝撃波。
敵オメガが地面に叩きつけられる。
撤退。
静寂。
変身解除。
宇佐美が膝をつく。
孝太朗が笑う。
「やっと戻ったな」
宇佐美が空を見上げる。
「取り戻したんじゃない」
静かに言う。
「思い出しただけだ」
風が吹く。
Ωの光が完全に安定する。




