覚醒(第四話)
街が崩壊寸前。
宇佐美が瓦礫の中で立ち上がる。
息が荒い。
「くそ……」
目の前には上級ジドバ。
圧倒的。
後藤が吹き飛ばされる。
宇佐美の拳が震える。
「なんで……」
敵が言う。
「貴様はただの人間だ」
その言葉が胸に刺さる。
ただの人間。
本当に?
その瞬間。
世界がノイズを帯びる。
視界が歪む。
遠くで声。
「……やっと気づいたか」
胸の奥が強く脈打つ。
記憶の断片。
燃える世界。
別の空。
“玉木隼人”。
違う世界での名前。
違う世界での人生。
システム音声が鳴る。
「世界照合開始」
敵が動きを止める。
「何だ……?」
「存在波形、不一致」
「この世界の住人ではない」
宇佐美の目が見開く。
「……は?」
「条件達成」
地面にΩの紋章が浮かぶ。
後藤が叫ぶ。
「やめろ! それは――」
だが、もう止まらない。
宇佐美が笑う。
少しだけ。
「マジかよ」
手を握る。
「変身」
衝撃。
今度は、黒銀だけじゃない。
黒銀の装甲が形成されるが――
胸部コアが赤く脈動。
ゴットドラグーンの因子が共鳴している。
仮面が閉じる。
電子音。
「Omega.」
だが。
続けて低く、異音。
「Warning.」
空間が震える。
敵が後退する。
「二人目……だと?」
宇佐美がゆっくり立ち上がる。
視界がクリア。
世界がスローに見える。
(これが……)
(オメガ)
一歩踏み出す。
音速。
敵の背後へ。
蹴り。
衝撃波でビルの窓が割れる。
敵が吹き飛ぶ。
だが。
胸が焼ける。
システムが不安定。
「同一兵装、同時適合エラー」
本来、オメガは一人。
後藤が立ち上がる。
「啓太郎! 無理するな!」
宇佐美が振り返る。
仮面越しでも分かる。
笑っている。
「俺さ」
拳を握る。
「ずっと思ってたんだよ」
敵が立ち上がる。
宇佐美が構える。
「俺、どこかズレてるって」
加速。
拳と拳がぶつかる。
衝撃。
宇佐美が押し勝つ。
敵が膝をつく。
宇佐美が静かに言う。
「俺は、この世界の住人じゃない」
空が割れるように鳴る。
記憶が完全に戻る。
玉木隼人。
並行世界から流れ着いた存在。
宇佐美啓太郎は仮の名。
敵が震える。
「まさか……四天王すら知らぬ個体だと……」
宇佐美が拳を振り下ろす。
爆発。
戦闘終了。
変身解除。
膝をつく。
後藤が支える。
「……お前もか」
宇佐美が苦笑する。
「ああ」
空を見上げる。
「俺も異物らしい」
遠くで。
観測者の声。
“オメガ適合者、二名確認”
“計画、加速”




