変身(第二話)
雨。
都心の高架下。
戦闘民族ジドバ族の残党が暴れている。
宇佐美が吹き飛ばされる。
「くっ……!」
融合体も、今は使えない。
敵が笑う。
「この世界は我らの実験場だ」
後藤が前に出る。
人工ジドバ。
人間に近い存在。
だが、“この世界で生まれた存在ではない”。
敵が嘲る。
「裏切り者」
後藤の拳が震える。
宇佐美が叫ぶ。
「やめろ! 一人で行くな!」
後藤は振り返らない。
「俺は守る側だ」
敵が突撃。
後藤は真正面から受ける。
だが、圧倒的。
腹を貫かれる。
膝をつく。
雨が血を流す。
敵がトドメを刺そうとする。
その瞬間。
胸の奥が、鳴る。
心臓ではない。
もっと深い何か。
“適合条件確認”
頭の中に無機質な声。
「対象、異世界由来」
「世界不適合因子、検出」
「条件達成」
後藤の視界が白くなる。
敵が一瞬ひるむ。
地面に紋章が浮かぶ。
円環。
その中心に“Ω”。
後藤が低く呟く。
「……なんだ、これ」
声が続く。
「戦士:オメガ、起動可能」
敵が叫ぶ。
「何を――」
後藤がゆっくり立ち上がる。
腹の傷が塞がる。
雨が弾かれる。
「変身」
瞬間。
世界が歪む。
光ではない。
重力の圧縮。
空間の収束。
黒と銀の装甲が形成される。
無駄のないシルエット。
全身が“完成形”のような存在感。
仮面の目が赤く点灯。
低い電子音。
「Omega.」
空気が重くなる。
敵が後退する。
「ば、馬鹿な……」
後藤が一歩踏み出す。
地面が沈む。
「力は」
低く。
静かに。
「暴力じゃない」
瞬間移動。
敵の背後。
拳。
衝撃波だけが残る。
敵が吹き飛ぶ。
二体目。
三体目。
圧倒。
無駄な動きゼロ。
数秒で殲滅。
最後の敵が震える。
「な、何者だ……」
後藤が見下ろす。
「異物だよ」
拳が振り下ろされる。
爆発。
静寂。
雨が止む。
変身解除。
後藤が膝をつく。
宇佐美が駆け寄る。
「今の……なんだよ」
後藤は空を見上げる。
「知らん」
少しだけ笑う。
「だが」
拳を握る。
「俺は、この世界の住人じゃないらしい」
遠くで、誰かがそのデータを観測している。
“オメガ、確認”
“護衛兵装、正常稼働”
本来は、敵側の護衛として設計された存在。
だが。
最初に選んだのは、裏切り者だった。




