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国に使われた内政チートが、静かに捨てられるまで ~成功例を真似したら国が動かなくなった話~  作者: レオン・クラフト


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第33話 静かな人事

 通達は、事故報告よりも簡潔だった。


王国改革顧問 レオン・アルヴェルト

職務内容の一部変更について


 理由は、書かれていない。


 だが、それで十分だった。


「……来ましたね」

 エマが、紙を見て言う。


「ああ」

 レオンは、淡々と受け取った。


 内容は三行。


・現地視察業務からの除外

・制度設計会議への出席は任意

・記録整理および報告業務への専念


 顧問は続投。

 だが、口は封じられた。


「左遷……ではないですね」

 エマが、言葉を選ぶ。

「隔離だ」

 レオンは即答した。


 処分ではない。

 罰でもない。


 安全な場所に置かれただけだ。


 その日の会議。


 レオンは、後方席に座っていた。


 発言を求められない。

 視線も、向けられない。


 彼がいなくても、

 議事は滞りなく進む。


「改革達成度ランキング、

 上位三地域を表彰します」


 拍手。


 整った笑顔。


 誰も、

 水路の話をしない。


 クラウスが、ちらりとこちらを見る。


 目が合う。


 すぐに、逸らされる。


 彼は、分かっている。

 だが、何もできない。


 昼休み。


 レオンは、記録局にいた。


 山のような文書。


 事故報告。

 運用改善案。

 住民アンケート。


 だが——

 どれも、同じ結論に収束する。


 「問題なし」

 「改善傾向」

 「引き続き注視」


 ペンを走らせながら、

 レオンは思う。


 これは、隠蔽ではない。


 最適化だ。


 都合の悪い情報を消すのではなく、

 意味を薄める。


 夕方。


 若い文官が、恐る恐る声をかけてきた。


「……あの」

「何だ」


「水路事故の、

 追加資料が届いています」


「どこから」

「現地の……農家です」


 封は、私的なものだった。


 中身は、短い。


補修の話は、

何度も出ました。

でも、

決めていいと言う人が

いませんでした。


 それだけだった。


 レオンは、その紙を閉じる。


 そして、記録箱に入れない。


 記録に残らない言葉だ。


 夜。


 王都の外れで、

 小さな会合が開かれていた。


 非公式。

 記録なし。


 地方の実務官、数名。


「……改革、どうですか」

 誰かが聞く。


「数字はいい」

「でも、動かなくなった」

「決めると、損をする」


 声は、低い。


 レオンは、そこにいた。


 招かれたわけではない。

 自然に、集まってきただけだ。


「名前を出さないでください」

 実務官の一人が言う。

「問題ありません」

 レオンは答える。


「今日は、聞くだけです」


「失敗しても、

 責任を引き受ける人がいない」

「だから、何もしない」


「それが、

 一番安全だから」


 誰も、笑わない。


 別れ際。


 一人が、ぽつりと言った。


「……国じゃ、

 無理なんですかね」


 レオンは、すぐには答えなかった。


 王都に戻る道すがら。


 エマが、低く言う。


「……もう、

 ここでは何も変えられませんね」

「ああ」

 レオンは、頷く。


「だから、

 ここではやらない」


 王都の灯りは、変わらず明るい。


 だが、レオンの視線は、

 その外側に向いていた。


 国の枠の外。

 制度の外。


 まだ、名前のない場所へ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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