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国に使われた内政チートが、静かに捨てられるまで ~成功例を真似したら国が動かなくなった話~  作者: レオン・クラフト


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第22話 助けられない理由

 手紙は、机の上に積まれていた。


 封蝋の色も、紙の質も違う。

 だが、内容は同じだ。


我が領地でも、

リューン式改革を導入したい。

ご助言を。


 エマが数えた。

「……十五通です」

「まだ増える」

 レオンは言った。


 事実だった。


 ガルドが、苛立ちを隠さず言う。

「無視するのか」

「読む」

「返事は」

「出さない」


 ミラが、不安そうに聞いた。

「……見捨ててるように、見えませんか」


 レオンは、否定しなかった。

「見える」


 だからこそ、説明が必要だった。


 数日後。


 レオンは、王都の公開討論会に呼ばれた。


 名目は、「地方改革の成功例に学ぶ意見交換」。

 実態は——

 なぜ、助けないのかを問いただす場だった。


 席には、官僚、貴族、地方代表が並ぶ。


 中央の壇上で、司会が問う。


「リューン領主レオン・アルヴェルト殿。

 各地から助言要請が届いています。

 なぜ、積極的に支援しないのですか」


 会場が、静まる。


 レオンは、立ち上がった。


「助けないのではない」

 一拍置く。

「助けられない」


 ざわめき。


「理由は、三つあります」


第一の理由

信用は、外から持ち込めない


「制度は、移せる。

 だが、信用は移せない」


 レオンは、セルジュの領地を例に出した。


「同じ制度を置いた。

 同じ言葉を使った。

 結果は、崩壊だった」


「なぜか」


 答えは、単純だ。


「信用は、時間と失敗でしか生まれない」


第二の理由

助言は、責任を奪う


「私が助言すれば、

 皆は“正解を持つ人”を見上げる」


「すると、決断は私のものになる」


 レオンは、はっきり言った。


「それは、統治ではなく依存です」


 会場の空気が、重くなる。


第三の理由

成功例は、失敗を隠す


「成功した例だけが共有されると、

 人は“同じことをすれば成功する”と誤解する」


 セルジュの名は、出さなかった。


 だが、誰もが思い浮かべた。


「失敗を含めて初めて、学びになる」


 沈黙。


 それは、反論できない静けさだった。


 官僚の一人が、問い返す。

「では、何もしないと?」


 レオンは、首を振った。


「やるべきことは、一つだけある」


 全員が、身を乗り出す。


 レオンは、続けた。


「制度ではなく、

 失敗の記録を公開する」


「成功ではない。

 失敗だ」


 会場が、ざわめく。


「リューン領の改革も、

 失敗から始まった」


「それを隠さない」


「やりたいなら、

 失敗する覚悟ごと持って行け」


 それが、彼の答えだった。


 討論会の後。


 評価は、割れた。


「冷酷だ」

「無責任だ」

「だが、正しい」


 レオンは、どれも受け入れた。


 その夜。


 エマが、静かに言う。

「……敵を作りましたね」

「最初からだ」

「中央も?」

「特に、中央だ」


 ガルドが、腕を組む。

「それでも、やるのか」

「やる」


 レオンは、即答した。


「失敗を、共有する」


 机の上に、新しい文書が置かれる。


 表紙には、こう書かれていた。


 地方改革失敗記録集(暫定)


 それは、

 英雄譚ではない。

 指南書でもない。


 世界が、遠回りするための地図だった。


 レオンは、窓の外を見る。


 灯りは、まだ小さい。

 だが、確実に——

 世界の別の場所で、

 同じ灯りが点き始めている。

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