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国に使われた内政チートが、静かに捨てられるまで ~成功例を真似したら国が動かなくなった話~  作者: レオン・クラフト


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15/15

第15話 評価されるという、新しい圧力

 変化は、褒め言葉としてやって来た。


 それが一番、厄介だった。


「……視察、ですか」

 エマが文書を読み上げる。


 王都・財務監査局

 辺境伯爵領リューン

 行政運営状況確認のため、監査官を再派遣する


「確認、という名の……」

「評価だな」

 レオンは淡々と答えた。


 ユリウスの名は、書かれていない。

 だが、中央が“見ている”という事実だけで十分だった。


 数日後。


 今度は、使者ではなかった。


 四名の文官。

 帳簿係、制度担当、統計官、記録官。


 武装はない。

 だが、視線は鋭い。


「……整っていますね」

 最初にそう言ったのは、統計官だった。

「数字が、安定しています」


 レオンは頷いただけだった。


 評価は、最も無責任な行為だ。

 褒めた者は、結果を引き受けない。


「この“離脱対応指針”は?」

 制度担当が聞く。

「独自の判断です」

「……興味深い」


 その言葉に、エマの指がわずかに動いた。


 興味深い。

 それは、持ち帰られるという意味だ。


 監査は、三日間続いた。


 帳簿。

 議事録。

 掲示板の写し。


 すべて、整っている。


 ——整いすぎている。


「……これは、再現可能ですか」

 記録官が、ぽつりと聞いた。


 レオンは、少しだけ間を置いた。


「分からない」

「……?」

「人が違えば、同じ結果にはならない」


 その答えは、評価者を困らせた。


 夜。


 エマが言った。

「王都は、成功事例を欲しがります」

「分かっている」

「制度を、持っていかれます」

「その通りだ」


 成功は、所有される。


 そして——

 骨抜きにされる。


 最終日。


 代表の文官が、こう言った。


「王国として、前向きに検討します」

「何を」

「あなたの制度を」


 レオンは、はっきり答えた。

「条件があります」


 空気が、張る。


「これは、“模倣可能な制度”ではありません」

「……それは、王国にとって——」

「不都合だ」


 レオンは、否定しなかった。


「だから」

 続ける。

「人材ごと派遣するなら、応じます」


 ざわめき。


「制度だけ、持っていっても壊れます」

「責任を引き受ける人間が必要だ」


 評価官たちは、言葉を失った。


 その夜。


 ガルドが言った。

「……喧嘩売ったな」

「買われる前に、条件を出した」


 ミラは、少し不安そうだった。

「……ここ、取られませんよね」

「取らせない」


 レオンは、即答した。


 翌朝。


 王都への報告書が、出された。


 そこにはこう書かれていた。


 “リューン領の行政運営は、制度ではなく、関係性によって成立している”


 評価としては、最悪だ。


 だが——

 奪えない。


 未納率は、動かない。


 31% → 31%


 だが、誰も不安に思わなかった。


 数字が、信頼されているからだ。


 レオンは、帳簿を閉じた。


 この領地は、

 もう“実験場”ではない。


 選ばれる側に回った。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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