修行④育つ小枝、穿つ心
「今日は・・・朝から騒がしいな・・・」
俺の朝のティータイムを邪魔するものが現れた。異郷の言葉でまくしたてる女が来たのだ。
「ちょっとあんた。この間の依頼書読んだん???返事もよこさんと何してんの。早く首都まできてや。ほんま平和ボケしてしもたなぁ・・・そういやこの間キマイラ出たて聞いたんやけどホンマに?こんな辺境まで出てくるとかえらいこっちゃな。そうそう、あの勇者とかいうやつおったやん、あいつほんまに腑抜けになってるんやけど、なんか結婚式がどうのとか、まぁそんなん相手すんのもめんどくさいから出てきてるんやけどな。ほんでな、また北の方にいってくるわ。なんか加奈の手掛かりがあるとかあいつ言いおってん。ほんまにおるんかどうかわからんけどな。まぁお前の方はどうなんよ、ちゃんと依頼こなしてくれるんやろな?今日はその確認で来てん」
「・・・わかりました。受けます。依頼書もお渡し致します」
俺は顔を背けながら依頼書を渡す。
「ええわええわ、ほなまたな」
「あ。ちょっとまっ・・・・・消えたか」
とんでもないスピードで飛んで行った。魔法剣士ってのは恐ろしい。人智を超えたスピードで飛ぶし、笑いながら魔族を刻むし、あれにだけは勝てないな・・・と思いつつ。マナのことを話そうと思ったら消えてしまった。
「本当に話を聞かない連中だなぁ・・・うん、茶は・・冷めたな・・」
「おはようございます師匠!!!」
頭が痛くなってきた・・・・
「じゃぁ、今日は・・・マナの得意な分野だな」
俺はマナに小枝を渡しながらニヤッと笑う。
「ぇ”っ・・・また小枝・・・・ほんとなんですかこの小枝。なんかでっかくなってません?」
明らかに嫌そうな顔で小枝を見つめている。小枝が光っているのに気づいていない様子だ。
「まぁまぁいいから、今日からマナの相棒になるんだし、大切にね。じゃあ今日の修行は・・・北部騎士団でいう流剣、いわゆる連続剣だね」
「あ、はい、それならある程度はできるかなと思います・・・?」
「よしじゃあ打ち合ってみようか」
俺はマナが喋り終える前に木刀で袈裟斬りを左右から繰り出した。マナの首筋にピタッと木刀を止める
「ほぇー?今師匠が二人にみえましたあ~」
マナの視点が定まっていない。
「それが正しい表現だ。一撃目で左、二撃目で右から切った。一撃目はフェイントに近いもので、あえて半歩前に出ることによって錯覚させる、では打ち合うぞ。構え」
「え”っ・・・いみわかんな・・・ひゃあああああ」
ガンガンガンガン・・・・小枝と木刀とは思えない音が草原に鳴り響く
「あばばばばばばばばばば、ひぃいいいいい」
マナは叫びながらもこちらの剣に合わせてくる。フェイントも読んでいる様子だ。二連撃、三連撃、四連撃・・・軽く打ち込み続ける。
「ひゃあああああああああ・・・あ?こうか!」
マナの足が半歩前に進む、小枝が左右上下から襲い掛かる。
「そうだ、上出来だな。だがその程度では・・・せい」
それを6連撃で潰す。最後の二撃を同時に小枝で受けたマナが吹っ飛ぶ・・・
吹っ飛んだはずのマナが2mほど離れた場所で立っていた。
「ふふふふふふふふふふふ、小枝の使い方、わかってきましたよ!!」
小枝が光っている。魔力を注入することで硬度が変わるのだ。
「そうか、じゃあ何連撃でもこいよ。ははは」
「その言葉後悔させてやらぁ!!!!しねえええええええええええ!!!ふぇっ!!あひゃあああああああぁあぁぁぁぁああーーー・・・・」
今日もマナは空高く飛んで行った。
午後はいつものマナが何かを叫びながら素振りをする時間だ。
俺は家に届いた依頼書をもう一度見る。
近衛騎士の訓練・・・・うーん・・・本当に面倒くさいな・・・・あ、ちょうどいいや、マナに相手をさせよう。
「おーい、ぶつぶつ言ってないでこっちにこいよー」
「今日も空に飛ばしやがって・・・くそったれが・・・ちくしょう・・・・くそが・・・あ、なんでしょうか師匠」
マナがにこやかに走ってくる。聞こえてるんだよ全部・・・
「近衛騎士って言ってね、首都の一番強い騎士さんたちが訓練をつけてくれって言ってきてるんだ。相手してみない?」
俺はにこやかに提案する。
「いやいや、無理でしょ。こんな得体のしれないおっさ・・・とても強い師匠のような方々と戦えってことですよね?」
「ほぼ全部言ってんじゃねぇか・・・こいつめ・・まぁ、俺ほど強いのは滅多に居ないから安心しろ。いい練習相手になると思うんだがな・・そうだな、新しい剣を作ってやるから、それでどうだ?」
明らかにマナは喜んでいる、喜んでいるが
「でもぉー、お願いがあるならぁー、それなりの態度が必要じゃないんですかぁーー??」
「クッッソうぜぇ!!!」
俺は心の中で叫んだ。
「マナ様お願いします。近衛兵なんかマナ様の剣術でコテンパンにしてやってください」
俺は首を垂れた。
「しかたないわね、今回だけよ」
マナはとても上機嫌である。
それから続いた午後の素振りは、珍しく静かに過ぎた。




