修行①マナの苦難
「おいおい、食いすぎだろう・・・・」
俺は知っている。マナがろくな路銀を持っていなかったことを。
先日服を切り裂いてしまったときに床に落ちたのは100ガルド一枚。これはパン一つ買うのがやっとな硬貨だ。
ガルドというのはこの大陸の名前であり、大陸の名前を称した通貨が流通しているのだ。
「もう少しで飢え死にするところじゃなかったのか?」
「師匠。満足です。私、死にそうでした(テヘペロ)」
口から舌をだし目はどこかを向いている。無性にぶん殴りたくなった。
その衝動を抑えつつ
「はぁ・・・で、これからどうするんだ?剣の修行でもしていくか?」
「はい、しかし路銀がないので困っています。見ての通り私の全財産は100ガルド、あなたの首をとって金稼ぎをしようとしていました。どうでしょう、これで何とかなりませんか?」
マナが真剣な顔でこちらを見てくる。自信満々に出した右手にはちっぽけな硬貨が握られていた。
「交渉にもなってねぇから・・・。仕方ない。小間使いで雇わせてもらうか・・・いいか?」
「はい、お金がないので仕方ないです。体力には自信が・・・・ないですね」
何故か壁の向こうを見透かしたようにすがすがしい顔であった。マナの横顔が無駄に美人なのが癪に障った。
「じゃあ、とりあえず水汲みと・・・何か魔法は使えるのか?」
「あー、ピリピリするやつと・・・・石投げるやつが使えます。使えるだけでほとんど使ったことはないですけど」
「なんだその魔法は。石を投げてどうするんだ」
「そうですね、外で実践して見せましょう」
「石はこのくらいでいいのか?」
俺はマナにこぶし大の石を手渡す。
「これじゃあ大きすぎますね、このくらいですそこの隣の石に当てますよ!!」
小指の先ほどの意思をマナは拾いあげると何かを呻き始めた
「万物に宿る精霊よ・・・私に力を!」
ポンっと石が飛び、マナの指定した石にこつんと当たった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうでしたか、すごい魔法でしょう・・・はぁ・・はぁ・・・」
どうやらマナは魔力を使い切ったらしい。肩で息をしながらガッツポーズをとっている。
「こんなポンコツがあいつらの仲間なわけねぇか」
俺は小さく呟いた。
「休憩は終わったか」
俺がそう尋ねると
「いつでも何でもいけますよ師匠。何をしましょうか」
何故か自信満々である。
「買い物を頼む。食材と、お前の服だな」
食材はある程度分かる様子で、服については好きな服を買えるようある程度余裕を持たせて預けた。
「これだけあれば・・・おにぎりがいっぱい買えますね・・・・ふふふ」
「食い意地がやべぇな・・・あとこれももっていけ。地図だ。自分の居場所がオートで記されている。お前絶対方向音痴だろ」
「わ、私が方向音痴なわけないですっ!!!でもこれは使わせてもらいます!!」
「・・・・あと、外套も羽織っていけ」
俺はマナに金糸で刺しゅうされたマントを渡した。これも懐かしい品だ。
「ありがとうございます。では行ってきます!!!」
「あ、あとこの周辺は・・・むぅ・・もう行ってしまった。まぁいいか。いい修行になるだろう・・寝るか」
俺は疲れた。精神的に疲れた体を癒すために眠るのだ。
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「ぎょええええええええええーーーーーー」
「うひゃあああああああーーーーーー!!!しぬうううううううう!!」
私は今、非常に大きなウサギとヘビが合体したような生物に追いかけられている。
あの男の家を出て町に向かって走っていると、急にエンカウントしたのだ。
どうせ温厚なお隣さんだと思って、見た目もかわいらしいし・・・
挨拶をして横を通り過ぎると噛みついてきた。この世界の生物は訳が分からない。
ウサギのような生物に体当たりされると1メートルくらい吹っ飛ばされるし、ネズミに至ってはライオンみたいな鳴き声をする。
あまり生き物を殺すことは得意ではない、この世界では生物を倒すと魔力素というものが倒したものに譲渡される仕組みである。だが私はほとんどそういったことを経験していない。騎士団に入り訓練だけで能力を上げてきた。
だから今の状況はとっても辛いのだ・・・そんなことを考えているうちに背後に迫るヘビウサギ
「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああもうきたーーーーー!!!」
逃げ足だけは鍛えている。だが向こうも早い。何せウサギの足がついているからだ。飛び跳ねるヘビなんて卑怯だ。
「ひょえええええええええええええええええ!!!」
坂びながら逃げていると、遠くから
「万物の・・・・・ランス!」
と聞こえ、炎の槍がヘビを貫いた。
うぅーん、親切な人もいるもんだな!
そう思って私は町に駆け出した。
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「こんにちは。あら、寝ているのね。久しぶりに来たっていうのに。ていうか外にキマイラが居たわよ・・まったく・・・・ちゃんと討伐しないと町が消えるところだったわよ」
外にいる男を横目に
「ん?このばらばらの鎧は何かしら?」
マナのばらばらになった鎧を見て不思議に思う。
「まぁいいわ。また依頼書を置いていくわ、しかし・・・カナはどこにいったのかしらね。時間差と言ってももう召喚されてるはずなのに・・・次は北側諸国でも回ってみようかしら。彼女も誘っていこうかなぁ」
そんな独り言を話しながらふくよかな胸を揺らしながら女性は去っていった。
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「へぇー、この町にもいろいろあるのね・・・うーん、やっぱりスカートがいいかしら、剣士としてはやはりもっとかっこいいのを・・・・」
ふんふん鼻を鳴らしながら服を両手いっぱい買ったマナは上機嫌で帰路に着く。
地図も見て道に間違いはない。昼ごはんも食べてお腹はいっぱい。上機嫌で帰路に着く。
「ヘビうさぎってなんか変な名前ね~、ま、いいか。あんな槍で殺されるくらいなんだからよわっちいのね」
マナは上機嫌で帰路に着く。
「ただいまー!」マナは上機嫌で男を起こす。
「ぁぁ、お帰り。もう昼過ぎたのか・・腹減ったな。服新調したんだな・・・いやいや余分に持たせたけど買いすぎだろう・・・」
俺はまた頭が痛くなるのを感じる、お構いなしにマナは
「そうよ、あなたに刻まれた服の変わりだから仕方ないわね。というか道中に変なウサギが出たわよ。何よあれ」
マナはぷりぷりしている。ウサギ?なんだかよくわからないが
「ウサギならワイルドラビットだろう。あのぴょんぴょん跳ねて蹴ってくるやつ。蹴られると以外に痛いあいつだろ」
「そうかしらね・・・まぁなんか変な槍で死んでたし、たいしたことないわね~」
マナは上機嫌である。
「そうだな・・・キマイラじゃ槍ごときで死ぬわけがねぇからな・・・ん?」
俺は大切なことに気付く
「お前、食材は?」
マナは、上機嫌ではなくなった!
こうして食材マラソンが再開され、なぜか俺の昼飯が抜きになった。
「つら・・・もう寝よう・・・・・」
依頼書の存在に気付くのは翌日であった。




