ハジメの小さな気持ち
「やれやれ・・・」
俺は気を失った哀れな姿の弟子達を引きずってベッドに放り込んだ。
そういえば、この部屋は以前カルラが修行をしていた時に増築した部屋なのだが、前回カルラが来てからマナ説得もあり、ベッドを二つに増やしていた。
どうやら、カルラが来るときに一つのベッドでは狭すぎるからという理由であったが・・・
何故か離してあったベッドをくっつけている・・・仲がいいのか悪いのかわからない二人である。
「そういえば、忘れてたな・・・」
完全に動きを止めて目を閉じているドラゴンちゃんとアイスちゃんを、それぞれの持ち主の頭の上に乗せてやった。
二匹のドラゴンは目をうっすらと開け、こちらをちらっと見た後目を閉じた。
「本当に不思議だ・・・持ち主が意識を失っても動くんだな・・・ああ、服も置いといてやろう」
二人の頭もとにマナの服をいくつか置いてやる。
「こんちくしょー」
「なめんなぁ」
二人はそう寝言を言い合い抱き合っていた。
昼食の準備をした後世界樹の項に加筆をし、ふと自分も木彫りのドラゴンが欲しくなった。
俺は小枝を持ち出し、じーっと眺めてみる。
「こいつがドラゴンにねぇ・・・ふーん・・・よし、やってみるか」
小枝に魔力を込めてみた。ほわほわ光るだけで特に何も変化はない。
「本当に不思議だ・・・俺のドラゴンが何になるのか・・・少し期待したのだけどね・・・」
俺は魔王討伐の旅でグランドドラゴンとだけ出会ったことがある。その時は自分たちも未熟だったので逃げ出すだけだったが・・・あの恐怖はまだ覚えている。
「勇者はいつも見てるだけだったな・・・ハハハ・・・」
あの頃の記憶が蘇り、少し寂しさを覚えた。
「そろそろ回復してるだろうし、起こすか・・・」
寝室をちらっと覗くとドラゴン達の様子が普段とは違っていた。
「あれ??色が付いてきているのか・・・?」
アイスちゃんはうっすらと水色に、ドラゴンちゃんは木目が薄くなってきている。
「うーーーん・・・全然わからないな。こういう時にリョウコでも居てくれたら相談できるんだが・・・北に行くとか言っていたな・・・まぁいいか。起きろよー」
俺は二人の木刀を持ち、二人の頭の上でカンカン鳴らした。
「カルラの肌はきもちぃですねぇ・・・ふえっ」
マナが涎を垂らしながら起きた。
「マナのもちもち・・・ふえっ」
カルラも涎を垂らしながら起きた。
どうしてこいつらはこういう時は全く同じ行動をするのだろうか・・・・
午後からはカルラの服を買って首都まで競争するとのことであった。
二人は手早く着替え、食卓にやってきた。
「カルラはいつまで休みなのかな?」
俺は昼食を摂りながらカルラに問いかける。
「はい、思った以上に剣を早く手に入れることができたので、少し休みが余っていたのです。明後日までお休みをいただいております。我々の足であれば・・・首都まで半日といったところでしょうか。師匠も一緒に行きますか?」
「あっ、カルラまた頬っぺたにご飯がついていますよ」
マナに頬っぺたを拭かれながらカルラがこちらを振り向く。
「議長には会いたいけどね・・・話をしたいこともあるし。まぁでも今はいいかな・・・ということはマナも今日から明日はここに居ないんだね?」
マナに話しかける。マナは珍しくこちらの話を聞いていた様子で
「そうですねぇ。これからカルラのお金で服を買って、首都まで走って、向こうでカルラの奢りでご飯を食べて、明日走って帰ってきます。ああ、カルラ・・・宿代も出してくださいよ~」
そう言いながらカルラの腕に纏わりついている。
「マナは本当に仕方ないですね・・・・まったく・・・何が食べたいのですか?」
昼食を終えると二人は部屋に引っ込み出かける準備を始めた。
「はぁ・・・カルラもなんだかんだでマナに甘いね?」
取り残されたドラゴン達は静かに部屋のほうを向いていたが、俺が声をかけるとこちらを振り向き、アイスちゃんがドラゴンちゃんの頭を撫でた。
「君たちも仲が良いみたいで何よりだよ・・・うん、今日もお茶がうまいね」
俺はドラゴン達の様子を見ながら小さな決意をし、食後のお茶を楽しんだ。
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さて、次は少しだけ時間が飛びます。そして、マナの修行もそろそろ終わりとなります。




