ドラゴン戦記
「あ、師匠。おかえりなさい」
マナがペコっと頭を下げる。
「師匠、お先に失礼していました」
カルラもペコっと頭を下げる。
「君たちね・・・まぁいいや・・・ん?何かまた木彫りの物が増えているね?これは・・・イモリ?」
俺は木彫りのイモリ?が机の上に置いてあるのに気付いた。隣にはちょっと悲しそうな伸びたドラゴンちゃんが置いてあった。
「ドラゴンちゃんが伸びている・・・・世界樹ってこんなに自在に操れるもんなんだな・・・にしてもこのイモリみたいなのはなんだろう。ファイアリザードでも無さそうだけど・・・これはマナが作ったのかな?」
俺はマナの方を見ると、マナはドラゴンちゃんを頭に戻し、首を横に振った。
「師匠、これは私の小枝が変化したものです。魔力を加えると光るんですよ。魔力ちゅーにゅー!」
イモリ?の首の突起からキラキラと青い光が散り、すっと首の周りに固まった。
「成る程・・・これはアイスドラゴンだね!ほら、よく見てごらん、顔がイモリよりしゃきっとしているでしょ。それに水かきが無くて鋭い爪が生えている。これで岩盤を掘って進むんだ。その岩盤の崩落に巻き込まれて冒険者が死ぬ。そしてこの光、氷と一緒に魔石を食べるんだけど、余分な魔力をこの鰓がら放出して辺り一面を凍らせるんだ。その寒さで凍り付いて冒険者は死ぬ。そして一番特徴的なのがこの襟巻だね。魔力をここに集めて特大のブレスを吐くらしくて、町一つ消し飛ぶ威力らしいよ」
俺が二人に説明するも、マナはボケーとっした顔で
「つまり、アイスドラゴンですね!!」
と笑顔で返していた。
「成る程・・・伝説のドラゴンですね・・・まさか実物の前にこうやって出会えるなんて・・・」
カルラがすっと頭にアイスドラゴンを乗せる。なんでこいつらは頭に乗せるんだろうか・・・
「カルラ、名前を付けてあげないといけませんよ!名前を付けてあげると喜ぶのです」
マナはそういうとドラゴンちゃんの目をピカピカ光らせた。しっぽも振っている・・・
「え、そこまで動くんだ・・・・ま、まぁアイスドラゴンは俺も見たことがないよ。文献で見ただけだから」
世界樹が動くのを初めて目の当たりにした。ちょっと驚いた。
「あなた、すごく安易な付けてるけど、そんなのでいいの?私は・・・アイスちゃんでどうかしら?」
アイスドラゴン像改めアイスちゃんの光が少し眩しくなった気がする。
「いいじゃないですか!!アイスちゃん、喜んでますよ!!」
マナがアイスちゃんの頭を撫でる。
「・・・カルラも動かせるんだね、それ・・・」
アイスちゃんとカルラがこちらを向いて笑顔で手を振っていた。
俺は夕食を済ませ、お茶を3人分用意して外に出た。机の上で二人は何かをしていた。
「いけいけ、ドラゴンちゃん、アイスちゃんを舌でしばくのです」
「今よアイスちゃん、かぎづめでドラゴンちゃんの舌をひっかくのよ」
「おのれー、ドラゴンちゃん、次は破壊光線です!」
「アイスちゃん今よ、ブレスだわ!」
どうやら、二人は木彫りのドラゴン達を戦わせているらしい。凄くぎこちない動きであるが、ゼンマイ式のおもちゃのようにゆっくりと二人の指示に従って動いている。
「あ、師匠。見てください、自立して動くようになりましたよ」
マナがドヤ顔でこちらを見てくる。
「師匠、見てください。アイスちゃんもニコニコですよ」
アイスちゃんがこちらをみて微笑んでいる・・・気がする。
「お茶持ってきたよ、みんなで飲もう。自立ってすごいね、どうなってるの?」
俺はマジマジと二つのドラゴンを見る。ドラゴンは不思議そうな顔でこちらを見ている。
「魔力を注入して光らせないようにするんですよ。師匠言ったじゃないですか、グランドドラゴンは爆発するって、じゃあその直前まで魔力を注いでみたんです。そして簡単な指示を出せば・・こうです!ドラゴンちゃん、師匠に手を振ってあげなさい」
ドラゴンちゃんがこちらを見ながら、手を振る。
「私も光を出さないように、ため込むような感じで魔力を注いでみました。この子達、ほっといてもある程度自立して動くんですよ。口頭でもいいし、念じてもいいし、ほっといてもいいし。まるでペットみたいですね」
いつものカルラのクスクスとした仕草をアイスちゃんがしている。
「見れば見るほどわからないな・・・・まぁ世界樹だしそんなもんか・・・お茶冷めちゃうよ」
「「いただきまーす」」
月夜に映える二人を横目に、アイスちゃんとドラゴンちゃんが取っ組み合いを始めた。
「お、ドラゴンちゃんがんばれ~」
マナがウキウキしながらドラゴンちゃんを応援する。
「アイスちゃんも頑張れ~あ、負けてしまいましたね」
アイスちゃんがお腹を見せて降参したようだ。さっきより動きがスムーズになっている。
「遅くなったね、カルラは明日も休みだろ?今日は泊っていくといい」
カルラは負けたアイスちゃんを胸元に入れている。マナと違って二つくらいしか入らなさそうだ。
「いいんですか?宿も無かったので野宿しようかと思っていたので、有難いです。では準備をしてきますね」
カルラは大事そうに胸に手を当てパタパタと歩いていった。歩いた後に青い光の粒子が散っていく。
「あ、私もいきますよ~」
マナもドラゴンちゃんを胸に入れパタパタと追いかけていった。
「まだまだ世には俺の知らないことがたくさんあるんだな・・・・」
二人の不思議が俺の心を少し動かしたような気がした。
基本的にはドラゴンに会うことはあっても、生きて帰れる人は少ないです。
生きて帰った人たちが伝記として残していたりするので、知る人はこうして特徴を知っています。
ハジメは暇つぶしに首都の本を読みふけっていたので知識は豊富です。




