マナ、ドラゴンと化す
「さて、みんなお疲れ様。これで今回の修行は終わりにしよう。ヤンとエンデ、よくがんばったね。この二人の斬撃を防御できたなら・・・まぁ今の人類の剣での攻撃はほとんど防御できると思う。それと最後に剣の頂きを見て行ってもらおうかな」
ズズン・・・ズズズズ・・・・と大きな音を立てて大きな蛇が近づいてきた。
「あ~、この間のヘビウサギですね!!相変わらずきもいです、こいつ変に早いし・・・・あ、でもなんだかおいしそう・・・」
マナが嫌そうな顔で涎を垂らしながらキマイラを見る。器用なやつだ。
「マナ、よく生きていましたね。これ相当強いんですよ?後ろの二人じゃ秒殺でしょうね。おいしそうって、ついに頭が・・・」
カルラがキマイラの動きを慎重に見ている。
「き、キマイラ!?なんでこんなところに?そんなことより町から応援を!!」
ヤンが慌てる。
「キマイラって初めて見ました!!強いんでしょうか・・・!」
エンデだけはワクワクした顔でキマイラを見ている。
「そうだね、君たちが今かかって行っても、三人くらい死んでしまうかもしれないね。この間通りすがりの魔法使いが倒してくれたんだけど、回復しちゃったんだね。それでは・・・見ているといい。ソニックブレードをお見せしよう。そしてこいつは食べ物ではない」
俺は魔剣を抜き放ち、正面に構え・・・斬る。
刹那、風圧で周りの木が倒れ、貫通した斬撃が雲を切る
キマイラはみじん切りとなって少し大きめの魔石とともに肉片が落ち、肉片のみ消え去った。
「ふぅ・・・久しぶりにちゃんと斬ったよ。どうだった?ソニックブレードの見本だよ」
俺は爽やかに後ろを振り向くと
「「「「いやいやいやいやいや」」」」
何故か四人は声を揃えて首を横に振っていた。
「あれ、どうなってるんですか、何も見えなかったですよ。あの筋肉だるま何をしたんですか・・・」
「私もわかんないわよ・・・師匠の本気なんて見たことないんだから・・・ソニックブレードとか言ってたけどあれこそ次元斬よね・・・」
「剣の頂とか言ってましたけど、あの人人間なんですか?」
「俺はきっと死後の世界にいるんだ・・・これは夢だ・・・・」
「夢じゃないですよ、エンデしっかりしてください。雲まで切れてますよ。やはり次元斬のネーミングは正しかったのですよ・・・」
四人とも口々に好き勝手なことを言いながら帰り支度をしている。
「では、師匠、お世話になりました。次は私一人でお邪魔しようと思います。マナもまたお会いしましょう」
カルラはペコっと頭を下げた
「寂しくなんかないんだからね!!次来たときは首を切ってやるんだから!!」
マナが俺の後ろから顔を出し、やいやい言っている。
「最後まで物騒なこと言ってますね・・・マナさんは・・・お世話になりました」
ヤンがペコっと頭を下げる。
「ぜひまた手合わせしたいですね、是非主都までおいでください!」
エンデが笑顔でペコっと頭を下げる。
「マナ、それはこちらの台詞だ。首を洗って待っているがいい・・・では」
カルラは笑顔で小枝をクルクル回しながら歩いていく。
ヤンとエンデもそれについて帰って行った。
昼食を済ませ俺は椅子に座る。芳醇な茶葉の香りが午後の陽気と相まって俺を眠りに誘う。
マナは部屋の隅っこでキマイラの魔石を叩きながら何かを言っていた。
「師匠!!起きてください!!師匠!!」
ガタガタとマナに肩を揺らされている。寝てしまっていたようだ。
「ああ、おはよう。どうしたんだ?」
ふとマナの方を見ると、なぜか体のあちこちが黒焦げになっている。
「この魔石で遊んでたんですよ。これがまた硬くて・・・師匠が割っていいっていうもんだから木刀で叩きのめしてやったら光ったんですよね?触ったり舐めたり投げたり蹴ったりしてみたんですが、よくわからなくて、稲妻キック食らわせたんですよ。じゃあ急に黄色く光って。楽しいから繰り返していたら急にバリバリバリーって!!」
どうやらマナは魔石を本当に割ろうとしたらしい。
「マナ、魔石は俺でも割れないよ・・・遊び道具になったみたいでなによりだけど・・・魔石は魔力をためる性質と、ものによっては増加装置の役割もあるんだ。マナの魔法の力が増幅されて放出されたのかもしれないね。加工するには、それこそ空間ごと切るような魔法か、熟練の鍛冶が魔石の境目というものを叩くらしい。石が語り掛けてくるらしいよ」
まだちょっと眠いなぁ・・・そう思いながら答える。
「そうなんですね・・・あ、そういえば少し魔力が上がったのか稲妻キック連発しても倒れなくなりましたよ。そうかぁ・・・これが魔石かぁ~サンドバック代わりにはなるかなぁ・・・」
そう言うと木刀で魔石を打ち上げ、キックをかましていた。
そしてそれを拾いに行く・・・まるで自分で遊び続ける犬の様だ・・・時折バリバリいいながらあちこち火傷している。
「まぁほどほどに・・・精神力が高いからほとんどダメージがないんだな・・」
しかし・・・いつ魔素を吸収する機会があったのだろう?マナがここに来てから何かを殺したことはない。魔力が上がる機会はなかったはずである。
「うーん、だとすると・・・・いてっ」
マナの蹴り飛ばした魔石が飛んできて俺の頭に当たった。
「ああ・・なるほどね・・・マナ、ちょっとこっちにこい」
俺はマナを手招きしたが
「頭に魔石当てたからって私を殺すつもりね」
等と言っている。
「そんなんで殺してたら、お前のこと百回以上は殺してるよ。ちょっとステータス見せてみろ」
「乙女の中身を覗くなんて、変態ですね。ステータス!」
名称:間野 加奈
通称:マナ
種族:エラー(今日はグランドドラゴン)
筋力:30
体力:25
魔力:5
精神力:20
魔力の数値が5に上がっている。
「確かに上がってるな。ていうか精神力が20か・・・この間まで15だったのに・・・お前、魔石齧っただろ?」
俺はマナを横目で見る。マナは慌てながら
「いくらお腹が空いたからってこんな硬いもの・・・・少しだけですよ齧ってみたの・・・なんだかおいしそうに見えて」
マナは頬を赤らめながらくねくねしている。
「種族エラーがなんだと思ったが、その日によって変わるのかこれ・・・グランドドラゴンは魔石を食べる。そして魔石を飛ばして遊ぶ。その遊びに巻き込まれて冒険者たちが死ぬわけだが・・・一説では魔石の残存魔力を食べて力をつけるという話だ」
マナはボケーとした顔で聞いている
「ほぇー、つまり・・・私はドラゴンなんですか?」
頭の上にいくつも?が見えるようだ。
「あ、ああ、種族エラーってのは前も見たが、今日は変な文字が横に追記されている。今日はってことは・・・その通り、今日はグランドドラゴンの特性が付与されているのかもしれないね。無性に魔石で遊びたくなったり、人に当てたり、魔力を吸収したり・・・」
俺は魔石をクルクル回すとマナがじーっとそれを見て、時折飛びついてくる。トカゲというより犬だ。
「そうなんですね~じゃあそれを食べたら私もっと強くなるんですね?齧らせてくださいよ~フギャッ!」
俺は飛びついてくるのを避けながら
「しかし、問題がある。グランドドラゴンは魔石を食べすぎて内部から魔力が暴走、爆発して死ぬんだ。そして転生を繰り返している。膨大な魔力の爆発だから、半径数キロが消し飛ぶ。これは困る。それに奥に置いている魔石を齧られても困る・・・なのでこうだ」
俺はマナの頭を掴むと、猿轡を噛ませる。
「むーーー!!(何するんですか)むむーーー!!(この鬼畜、変態)ムッムー!(外せこの野郎)」
「・・・心の声が手に取るようにわかるぞ・・・。爆発して死にたくないだろ。ほらよっ!」
俺は魔石を遠くまで投げ捨てた。マナは喜んで走っていきキャッチ、稲妻キックとやらを魔石に当てていた。
「よくわからん種族だが・・・こういうこともあるのか。世の中は拾いもんだな・・・」
夕方になると種族はエラーに戻っていた。特にステータスの変化はない様子だ。
「戻ってよかったな」
俺が横で焦げて倒れているマナに話しかける。どうやらグランドドラゴンの耐性が無い状態で電撃を食らった様子であった。
「いやぁ・・・まさかこれほど強力な電気だとは・・・なんですかこの石・・・なんの魅力ももう感じませんね。これが倦怠期ってやつですか」
マナがぽいっとキマイラの魔石を放り投げ、魔石は無残にも外の草原をころころと転がり続けていった。
「一応それも貴重な魔石なんだぞ、魔石の大きさによって魔道具の出力が決まるそうだ。俺もよくわからんが、あの大きさだと・・・・二年間は食べていけるくらいの勝ちはあると思う」
そういうとマナは飛び起き
「それを早く言ってくださいよ!!!あ”あ”っ!!川に!!!」
マナは急いで追いかけるも時は既に遅し。川に落ちてしまい、流されて行ってしまった。
「残念だったな。先日の雨が無ければ・・・・良い奴ほど先に逝ってしまうものだ」
俺は流れていった魔石を目で追った
「良い奴ですか?あれ人じゃないですよ。ただの石っころです!」
どうやらマナは魔石のことを嫌いになってしまったらしい。齧った反動であろうか。
「そうでもないぞ、今日はマナと半日遊んでくれた良い奴だろ?」
マナは苦虫を噛んだような顔でこちらを見ていた。
この世界のドラゴンは死んでも転生を繰り返します。記憶は引き継がれません。
いつか真っ二つにされるのでしょうか。




