表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/17

《魂市》の開催場所は、都心にある廃ホテルの地下。

俺とアイナは潜入のため、夜の街を歩いていた。


「……なあ、本当にこの格好で行くのか?」


俺は自分の姿を見下ろした。黒のジャケットに、妙にピッタリしたシャツ。

普段スーツ姿の阻止官には慣れたが……これは明らかに“デート仕様”だ。


「当たり前でしょ。魂市は“生きてる人間”が客として紛れ込むんだから、自然に見せないと」


隣で歩くアイナは、ワンピース姿だった。

普段の制服や戦闘用装備とはまるで違う。

正直、目のやり場に困る。


「……似合ってるな」


「っ!? な、何急に言ってんの!」


「いや、偽装カップルに見せるんだろ? なら褒めとくのも仕事のうちだ」


「そ、そういうのは演技で言うものでしょ!? 素で言うとかずるい!」


耳まで真っ赤にして俺を睨んでくる。

どう見ても可愛いのに、本人は必死に怒っているあたりがまた……。


「ほら、腕組んで。カップルっぽく見せないと怪しまれるから」


「お、おう……」


差し出されたアイナの腕に、自分の腕を絡める。

近い。思ったより距離が近すぎる。

アイナの体温が、直接伝わってきて心臓が跳ねる。


「……なんか緊張してね?」


「してねぇよ」


「耳、赤いけど」


「……それはお前だろ」


言い返すと、アイナはさらに顔を背けて、足早に歩き出す。

俺も無言でついていった。

手を離そうとしたが、アイナの腕は意外としっかり絡みついたまま。

──仕事のため。仕事のためだ。

そう自分に言い聞かせる。


ホテルの地下への階段に辿り着いた瞬間、

アイナが小声で囁いた。


「……もし、バレたら」


「?」


「……そのときは、ちゃんと守ってよ。彼氏役なんだから」


息が詰まった。

普段の反抗的な態度と違う、か細い声。

これは、ただの“偽装”の一言じゃない。


「……任せろ。彼氏役でも、阻止官でも、守るのは得意だからな」


俺が答えると、アイナの唇がかすかに震え、そして微笑んだ。

──その笑顔に、思わず見惚れてしまう。


だがその瞬間、地下から漏れる異様な気配が俺たちを包んだ。

甘い空気は一瞬で消え、戦場の緊張が戻る。


「行こうか。魂市へ」


「……うん、先輩」


互いに腕を絡めたまま、俺たちは暗い階段を降りていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ