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保護した女性を待機班に引き渡し、現場の鎮静化を確認する。

残ったのは俺と──まだむくれている新人、篠ノ井アイナ。


「……で、どうして黙ってんだよ」


「別に。答える義務ないし」


「新人の分際で“魂市”なんて単語を口にできる時点で、ただの研修生じゃねぇ。上に隠されてんだろ、何か」


「……先輩こそ、口うるさい。

 さっきだって無茶して鎖に絡まれて……死ぬかと思ったんだから」


「お、心配してくれたのか?」


「ち、ちがっ……! 現場で死なれたら、私の査定に響くってだけ!」


わざとらしく顔を背けるアイナ。

だが、その頬がうっすら赤く染まっているのを、俺は見逃さなかった。


「ふーん。新人のくせに、先輩を心配できる余裕あるんだな」


「だから違うって言ってるでしょ!?」


声を張り上げた瞬間、足元の瓦礫に躓き、アイナがよろける。

思わず俺は手を伸ばした。

彼女の身体が腕の中に収まり、数秒間の沈黙。


「……」


「……」


至近距離で、アイナの瞳が俺を射抜く。

反射的に離れようとするが、アイナの指が俺の袖を掴んでいた。


「……その……ありがと。落ちるとこだった」


「どーいたしまして」


「勘違いしないでよね。別に、手……握ってて欲しいとかじゃ、ないから」


「言ってる時点でだいぶアウトだぞ」


「~~っ!」


アイナは耳まで真っ赤にして飛び退くと、必死に話題を逸らした。


「と、とにかく! “魂市”の件、報告あげなきゃ! 行くよ先輩!」


そう言って先に歩き出す背中は、さっきよりも速い。

……新人のくせに、ペース乱されっぱなしだ。


俺は小さく苦笑しながら後を追った。

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