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瓦礫を抜けた先、半壊した地下広場。

その中央に、昏倒した若い女性が横たわっていた。

だが、問題はそこじゃない。


彼女の胸の上に、何かが“覆いかぶさって”いた。


「……うげ、何だあれ」


全身を黒布で覆った怪人。だが、その頭部は人間じゃない。

異界の獣を模したような、歪んだ兎の仮面。

その手からは細い鎖が伸び、女性の魂を絡め取っている。


「《魂回収屋ソウル・コレクター》……斡旋屋の下っ端だ」


アイナが息を呑む。

その視線は、敵の手に捕まった女性の“魂の光”をしっかりと捉えていた。


「おい新人、突っ込むなよ。あいつは魂を鎖で切り離す。素人が近づけば即死だ」


「……だから言ってんじゃん、素人じゃないって!」


アイナは腰に吊るしていた小型の水晶装置を構える。

瞬間、結晶が蒼く輝き、円陣のような光が彼女の足元に浮かび上がった。


「《共鳴視覚エコーサイト》──展開!」


俺の目には何も見えない。

だがアイナの視界には、“鎖の結び目”がはっきりと浮かんでいた。


「結合点は三つ。今なら断てる!」


「マジかよ……じゃあ、俺が囮やる。タイミング合わせろ」


「了解! ……って、囮なんてやめなさいよ!」


「俺は阻止官。囮なんざ日常業務だ!」


会話を切り、俺は全力で地を蹴る。

《阻止印》を掲げ、コレクターの視線を引きつける。

その瞬間、黒布の怪人がこちらに顔を向けた。


「現世の犬ィィィ!」


仮面の口から、濁った声が響く。

同時に、鎖がうねり蛇のように襲いかかる。

避けるのではない。俺はそのまま突っ込み、敢えて鎖を絡ませる。


「今だ、アイナ!」


「わかってるっ!」


少女の叫びと同時に、水晶装置から鋭い光の矢が放たれた。

一直線に鎖の結び目を射抜き──バチン、と火花を散らして霧散する。


「……っ!」


魂を縛る力が消え、女性の体がドサリと崩れ落ちる。

同時に、怪人の仮面がひび割れた。


「新人のくせに、やるじゃねぇか」


「そっちこそ。囮、バカみたいに危なすぎ」


お互い息を切らしながら、だが目は逸らさない。

次の瞬間、コレクターが吠えた。


「この街はもうすぐ“魂市”となる! 逃げられると思うな!」


黒布の怪人は煙のように消え去った。

残されたのは気絶した女性と、冷たい地下の空気。


「……“魂市”?」


「転生希望者の魂をまとめて売る、闇オークションのコードネーム。まさか日本で動き出すなんて……」


アイナの表情は険しい。

新人とは思えない、その口ぶり。


「おいおい、なんでそんなこと知ってんだ。新人の情報網じゃねぇだろ」


「…………」


「おい、篠ノ井」


少女は視線を逸らした。

それは明らかに“何か隠している”態度だった。

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