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魂干渉ソウル・リンク》──それは、物理ではなく“魂”に直接作用する、俺たちリジェクターの戦術だ。


《アザーロード》の放った黒炎の魔弾を、ギリギリの距離で躱しながら、俺は接近戦を仕掛ける。


「遅い」


アザーロードの仮面が僅かに揺れた瞬間、視界が歪む。


しまった──!


脳に直接響く異音が走り、次の瞬間、俺の意識は引き裂かれたような感覚に包まれた。


「っ……クソ、“魂揺動”か……!」


魂そのものに干渉する攻撃。

防御不能。心の“核”に揺さぶりをかける、異界神特有の干渉技だ。


そして、脳裏に“見せられる”。

──俺の過去。


* * *


数年前。

俺には、一人の親友がいた。


名前は、ハル。


陽キャで、頭も良くて、みんなに好かれてて……でも、誰よりも脆かった。


「なあ、ユウト。異世界って、さ……もしあったら、行ってみたいと思わない?」


笑いながら言ったその顔を、俺は忘れられない。

──その一週間後、ハルは飛び降りた。


俺は、間に合わなかった。


異世界へと旅立った彼の魂を、引き戻す術は、当時の俺にはなかった。


「そんなの、ありえないだろ……!」


誰が決めたんだ?

誰が、救われる魂と、逃げ出す魂を分けた?


“死んだら異世界”なんて、そんな都合のいい再出発──許されるはずがない。


俺は、誓った。


もう誰も、死んでまで救われた気になるような世界に渡らせない、と。


* * *


「──悪いが、もう昔の俺じゃないんでな」


幻影を振り払うように、俺は地を蹴り、アザーロードの前へ一気に躍り出る。


《魂打》の刀身を両手で構え、一直線に突き出した。


「《魂貫通ソウル・ペネトレイト》!」


魂の波長を刃に集中させ、相手の精神核を貫く技。

アザーロードの身がぶれ、仮面が亀裂を生じた。


「……ほう。貴様が、あのときの少年か」


「覚えてたかよ、チート神」


「貴様は、良い“触媒”になり得る。いずれ、貴様も異界を求める時が来よう」


「来ねえよ。俺の人生は、現実にしかねえ!」


再び飛び込んだ俺の一撃が、仮面を割った。


アザーロードの正体は……人だった。

正確には、元・人間。かつて転生した魂が“神”に変質した存在──異界が作り上げた「人間の成れの果て」だ。


「……愚かなる選択だ。だが、次は、また別の者が来よう」


アザーロードの身体が、砂のように崩れて消えていく。


転生ゲート、消滅。

干渉、遮断完了。


魂の波動、正常範囲──任務、完了だ。


俺は深く息を吐き、インカムに手を当てた。


「こちらユウト。新宿地下構造、対象消滅。魂の回収および転移痕跡の浄化を要請」


『了解、すぐ向かう。……無事で良かった。』


「ま、なんとかね」


振り返れば、まだ世界はどす黒くて、めんどくさいことだらけで。

だけど、誰かが“生きる”ことを諦めない限り──俺は戦う。


異世界転生? ハーレム? チート?

──そんなの、こっちで作ればいいじゃん。


誰かが言った。現実はクソだって。

だけど、だからこそ、人生は面白い。

▶次回予告:第二章「異世界斡旋屋、現る」


異世界への転生を“商品”として仲介する地下組織《斡旋屋エクスチェンジャー》が暗躍を始める。

転生願望者を誘拐し、魂を売買する闇のビジネス。

ユウトは少女・アイナの魂を救うべく、最大級の異界介入戦へ挑む。

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