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12/17

ギィィ……と扉が軋む音。

外の護衛たちが力任せにこじ開けようとしている。


「先輩、どうする?」

「やるしかねぇ」


俺はアイナの手を握ったまま、深く息を吸う。

胸奥に宿る《魂干渉》の力を解き放ち、周囲の空気を震わせた。


「来るぞ!」


ドンッ、と扉が吹き飛び、屈強な護衛がなだれ込む。

だが俺の視線は、その奥にいた──

顔を隠した女幹部に釘付けになった。


「“阻止官ユウト”ね。高値がつくわよ、その魂」


不気味に微笑む彼女が投げた短剣から、異界の呪符が展開する。

魂を強制的に“異世界チケット”に変換する禁呪。

まともに喰らえば、即異世界行きだ。


「ふざけんな!」

 

俺は青白い光を纏い、斬撃のように空間を裂いて呪符を弾き飛ばした。


だが、横でアイナが怯えたように俺の袖を掴む。

 

「先輩……守ってくれるんでしょ?」

「当たり前だ。お前だけは絶対に行かせねぇ」


言葉に偽りはない。

だけど、アイナの瞳にほんのり熱が灯るのを見て、胸がズキリとした。

これは戦場の緊張感だけじゃない──。


「ちょ、ちょっと! 戦闘中に見つめすぎです!」

「……見惚れただけだ」

「そ、そういうの今言う!? わ、私だって……!」


顔を真っ赤にして言葉を詰まらせるアイナ。

その瞬間、幹部の呪符が再び放たれた。


「アイナッ!」

 

俺は彼女を抱き寄せ、体ごと床に転がり込む。

背後で呪符が爆ぜ、倉庫の壁がえぐれた。


「先輩……」

「泣くな。ここからは反撃だ」


俺とアイナは息を合わせ、立ち上がった。


魂市を揺るがす、決戦の幕が上がる。

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