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11/17

「奴らだ! 阻止官だ!」


フードの客が叫ぶや否や、会場は一斉に騒然となった。

異界商人の護衛たちがこちらへ殺到し、鋭い刃と霊弾が飛び交う。


「クソッ、バレたか!」

「先輩、こっち!」


アイナに腕を引かれ、俺は会場の裏手へ走った。

霊力の矢が壁に突き刺さり、爆ぜた火花が頬をかすめる。

咄嗟にアイナを抱き寄せ、転げ込むように階段下の倉庫へ滑り込んだ。


──ガシャーン!

扉を閉めた瞬間、背後で無数の衝撃音が響く。


「……っ、危なかった……」

「息、止めて!」


倉庫は暗く狭い。

物資の木箱が積まれ、隙間はほとんどない。

必然的に、俺とアイナの体はぴったりと密着した。


「……っ」


アイナの吐息が首筋にかかる。

心臓の鼓動が、やけに大きく響く。


「……先輩、鼓動……速すぎ」

「お前のもだろ」

「ち、違っ……! これは、その……」


小声で囁き合うたびに、互いの唇が触れそうになる。

距離が近すぎて、息をするだけで甘い空気が混じり合った。


「……先輩」

「……なんだ」

「もし、ここで死んじゃったら……」

「死なせねぇよ」


即答した俺に、アイナの目が揺れる。

ほんの一瞬、彼女の唇が震えて──


ドンッ!

 

外から扉を叩く音がした。


「ここに隠れているはずだ!」

「……行くぞ」

「うん」


名残惜しそうに体を離したアイナの手を、俺は強く握り返した。

戦場でも、離さないと誓うように。

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