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「今回の実験は成功した。ありがとう」

 2週間前の夢の続きか。

「望み通り、大切な人への挨拶は出来たようだね。我々も14日とはいえ、君の延命をした甲斐があったというものだ」

 それに関しては感謝している。

 出来れば異世界への転移ではなく、元の世界に転移でも良かったのに。転移先の世界なんてどこでも良かったんだろう?

「いや、世界の移動が必要条件だったのだ、移動元と移動先が同じ世界では実験としての目的を達せられない」

 そうか。

「にしても、君は我々の想像よりもずっとこの世界に馴染めているようで良かったよ。君らの世界にはない魔法への親和性も高い。起きてすぐに、無意識に魔法を使った時は驚かされた」

 リュックサックのことか、それとも尻尾のことか?

「いや、違う。煙草というのか、我々の文明にはない嗜好品を取り出したことだ」

 これはお前らが用意したわけじゃないのか。

 そうそう、もうあと数本しか残っていないんだよ、どうしてくれるんだ。

「どうもこうも、それは君がこの世界に来て初めて使った魔法による代物だ。寝ぼけていたのかもしれないが、無意識に強くイメージを持ち、動作によって想像を補完して起こした魔法による物だ。我々が何かしたわけではない」

 すると、つまり俺は魔法でいつでも新しい煙草を手に入れられるのか。

 これで残りの本数を気にすることもないし、禁煙する必要も無いのか!

「そんなに喜ぶことなのであれば、入手の目処が立って良かったな。だが、調べたところ健康に害を及ぼすのではないのか?」

 今更、俺自身を含め、誰が俺の健康を気にするって? 周りに誰も居ないんだから受動喫煙とか肩身の狭いことを言われることもないし、この世界の文明がファンタジー世界、つまり中性ヨーロッパと同じようなレベルなら、平均寿命なんて他の病気や怪我のせいでもっと短いだろう。

「それはその通りだが。寿命を全うできる人間など、この世界には碌に居ない」

 あと、洞窟の奥のあの迷宮とやらはなんだ。

「与えた取扱説明書に書いてあるから、それを読んでもらおうか。わざわざ今、説明する必要はないだろう」

 書いてあるのか、ならいい。まだ全部を読めているわけじゃないからな。

 生きていくのに食うものが全然無いのはどういうことだ、生きていければ良いという条件だっただろう。

「人が住んでいる農村はすぐ近くにある。とはいえ、最短距離を知っている人間が朝から晩までひたすら歩き続けなければ、1日ではたどり着けないくらいには距離があるが」

 現在地も分からなければ、道も、地図や方位磁針もないのに、どうやってたどり着けと?

「強化した君の体なら、即死しなければ魔法で怪我は治るし3日くらいまったく食わなくても動ける。あの森にはそれほど危険な獣や魔獣も……いないこともないが、多くない。安心して踏破すれば良い」

 そんな、無茶な。

 煙草みたいに肉を出して食うか……。

「魔法で肉を出すことも、それを食することもできるが、魔法を使うのにもエネルギーが必要になる。永久機関は不可能だ、魔法で存在しないところから肉を出す方が、摂取するエネルギーよりも多いから、やがて限界を迎える。空腹を紛らせるのにどうしても必要なときや、存在しない調味料を入手するならともかく、栄養の摂取にはあまり勧められない方法だ」

 詰んでるじゃねえか!

「頑張ってくれ。我々と君との接触は今回限りだ。君らの文明レベルにとって我々は確かに神と言っても良いほどの技術を持っているのは確かだが、同時に神ではない。経路を維持するのも膨大なエネルギーがかかるのだ。手を出して放りっぱなしになってしまうのも心苦しいが、ただでさえ今回は14日分も長く経路を維持するためにとんでもないことになっている」

 おい、待てよ! そりゃねえだろうよ。

「その詫びとも言える取扱説明書だ。幸か不幸か、完成させるための時間は14日あれば充分だった。必要となることはすべて書いたはずだ。上手く活用してくれたまえ。この世界の住人さえまだ解明できていな……この世界のことも書い……いた」

 声が遠くなっていく。

「ど……らエネルギー切れが近……だ。健勝で……え」

本日の投稿は以上です。

気に入っていただけたようであれば、また明後日、お目にかかりましょう。

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