2.アレル誕生
「おぎゃー!!」
俺、爆誕!
どうやら無事異世界転生できたみたいだ。
「奥様、旦那様、おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
「ありがとうマーサ…。ふふ、目元は貴方に似てるかしらね、レオン?」
「そうかもな…小さい耳たぶはお前にそっくりだ。マリア、お疲れ様。」
良し、スキル:言語理解も正しく発動しているようだ。
レオンと呼ばれたのが俺の父さん、マリアが母さんだな。
文句のつけようのない美男美女だ。2人とも30代前半くらいか。父さんは茶色い髪に翠の目、母さんはウェーブががった金髪に、綺麗な青い目だ。
父さん似…てことは、俺も翠の目なのかな。
「お嬢様、そうっとですよ。」
先程マーサと呼ばれたメイドさん?が小さな女の子を連れてきていた。
ぅゎょぅじょかゎぃぃ。5歳くらいだろうか。母さんそっくりの女の子が俺のことをじっ…と見つめている。
「おとーと?」
「そうだぞシェリル。弟のアレルだ。仲良くするんだぞ、お姉ちゃん。」
「うん!しぇりる、めんどうみる!」
「うふふ、頼もしいわね。学園にいるライルにも、早く会わせてあげたいわ。」
どうやら上にお兄様もいるらしい。
三人兄弟末っ子か、後継問題とかもなさそうでラッキー!
そして今世の俺はアレルと名付けられたようだ。
「奥様、ゆっくりおやすみになってくださいね。何かあればマーサにお申し付けください。」
「ありがとうマーサ。ふふ、それにしても本当に可愛いわ…」
ああ、いいなぁ。暖かい。
前世の両親は俺が小さいころに事故で他界し、祖父母に育てられた。両親も祖父母も、俺の体質には手を焼いていたが、とても大切に育ててくれていた。だが祖父母も数年前に相次いで亡くなり…家族の暖かさが、とても懐かしい気分にさせてくれる。
異世界、上手くやっていけそうだな。
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俺が産まれてから、数週間が経過していた。
うーん…
『赤ん坊って暇なんだなぁ…』
ミルクを飲んで寝んねして…。マーサや母さんに鑑定を試してみようとしたけれど、上手く発動しない。発声が出来ないからなのだろう。自力で動けないし、できる事と言えば周囲の会話に耳を澄ますことだけだ。
そうして集めた情報(と言っても大した情報は得られないが)を整理すると、俺はギブソン家の次男らしい。
アレル・ギブソンか…そこはかとなく嫌な予感がするが、気にしないようにしたい。
貴族ではないようだが…家は割と裕福そうだ。父は毎朝早く出かけ、夕方には帰ってくるが、なんの仕事をしているか不明だ。商人とかなんだろうか?これは引き続き調査だな。
使用人はメイドのマーサが1人。マーサは某シチューのおばさんそっくりだ。まあ俺は食べたことないが…今世では是非食べたい。シチューがあるかは不明だが…なければ作ればよかろうなのだ。異世界グルメチートをするのも楽しかろう。
母は毎日俺と姉のシェリルに子守唄や童謡を歌ってくれる。
歌詞にエメラダ様が登場する曲が何曲かあり、これは事実なんだろうな。その曲らから得られた情報によると、産まれてから3歳までは神様に護られており、病気をしないらしい。
加護のようなものなのだろうか。人類の守神として広く信仰されているようだ。よかった、これで何かあったときすぐに教会に行けるな。
そして俺は皆に愛されすくすくと育ちー…
3歳の誕生日を迎えた。