4.15 Large cardinals 巨大基数
この世界に僕を殺した魔神が存在している。
「殺しが悪だとでも思ってんのか? 生命は隣の奴を殺して生き残ってんだよ。他の命を喰らって生き残ってんだよ。殺す覚悟も殺される覚悟も無ェ奴が正義面するんじゃねェッッ」
「僕の興味は命や正義や善悪の定義にはない。もちろん君にも」
「だからどうしたッ」
僕を斬殺した。
僕を圧殺した。
僕を撲殺した。
僕を刺殺した。僕を絞殺した。僕を焼殺した。僕を惨殺した。僕を射殺した。僕を虐殺した。僕を溺殺した。僕を凍殺した。僕を熱殺した。僕を殴殺した。僕を鏖殺した。僕を屠殺した。僕を薬殺した。僕を挌殺した。僕を轢殺した。僕を禁殺した。僕を電殺した。僕を撃殺した。僕を毒殺した。僕を磔殺した。僕を爆殺した。僕を扼殺した。僕を抹殺した。僕を呪殺した。
だからどうしたというのだろう。
この世界では、魔神が僕を殺したとして、殺されていない僕が否定されるのか、その真偽はわからないのだ。
わからないけれど、それでも確かに、僕はこの世界を感覚している。わからなくても、僕がまだこの世界にいることを感覚している。
この世界だけじゃない、たくさんの世界を感覚している。
10↑10↑6にも満たない個数の物質からなる有限の世界を。
1, 2, 3, ...と階層が終わりなく続く可算無限ω₀の世界を。
ω₀の全ての組み合わせを集めた非可算無限ω₁の世界を。
ω₁よりもさらにサイズが大きい超限基数ω₂の世界を。
あるいはω₀とω₁の間、不連続体にある基数の世界を。ω₀, ω₁, ω₂, ... と超限基数を増やしても絶対に到達できない、もっとずっとずっと巨大な基数の世界を感覚している。
巨きな世界にはたくさんの存在がいて、それは例えば神のような何かだったり、僕が神と呼んだ何かだったり、僕の言葉では表せない何かだったりするのだろう。
僕にはわからないことばかりだ。
有限の世界のことだって、僕にはきっと一生かけても未知で未明なことばかりで。
だからこそ、まだまだ知ることができる世界がそこにある。
わからないことばかりの世界でも、知らないことばかりの世界でも。いつかきっと、その世界に歩みを進めるときが来るのだ。
「気でも狂ったか? この期におよんで何を笑ってやがる」
「いつか君にもわかる刻が来ると良い」
「何を考えてるか知らねェが、逃げようってんなら、テメェの帰る世界を先に殺すだけだ。生命の壮絶さに目を瞑るテメェらの世界を殺すだけだッ」
「その相手は君の周りにいる、神話の神々がするだろうな」
そして僕は自分自身に魔法を行使し、この神々の世界から移動した。




