歌ってみた(プロローグ)
カクヨムにて連載作品ありますので、そちらも合わせてご覧ください。
7/13 内容修正しました。
僕の名前は時鳥 恵
身長150㎝ 高校1年生
髪は黒髪で軽めの天然パーマ
昔、容姿も声も女の子みたいと言われ
それが嫌でトラウマ状態となり
前髪で顔を隠していたら
陰キャでボッチの落胤をおされた
そんな陰キャでボッチな僕は現在
クラスで虐められていた。
肉体的な暴力はないが
「陰キャがうつるから向こう行け!」
「ボッチくんはママと仲良くやってろ!」
「天パ!不潔だから近寄らないでくれる?」
「本当になんでこんなのが、一緒のクラスなんだか。」
などとクラスカースト上位の皆さんに言われる日々。
そんな僕にも趣味がある。
学校が終わり家に帰ると、中学校の時のジャージに着替える
ヘッドホンを装着し、お小遣いを貯めて買った電子ピアノを弾く
一曲弾き終わると少しの充実感に満足する。
その時、スマホの通知が来ているのを見て内容を確認する
普段ならスルーするようなニュースの通知だったが、ある一文に興味を惹かれる。
(ピアノ超絶技巧テクニック?)
気になったのでタッチしてサイトを開く
ReTubeという動画投稿サイトが開き、動画が自動再生される
その動画は顔は見えないが女性がピアノを弾いている様子を映していた。
関連動画には色んな人のピアノ動画があったので
片っ端から再生していたら
女性がピアノを弾きながら歌を歌っていた。
楽しそうに声を弾ませて歌う女性を見て
まだピアノを弾き足りない僕は
好奇心から真似をして歌ってみたら
すごく楽しかった!
楽しかったけど何か物足りなさを感じた
色んな曲で歌ってみたけど
空白を埋める事はできなかった。
そうこうしているうちに姉さんが帰ってきた。
時鳥 霧恵 僕の義姉
今のお父さんの連れ子で、高校2年生 身長161㎝
テニス部に所属し全国クラスの実力を持っている
その上、容姿端麗で男女問わず人気がある。
学園美少女10傑に名前が上がっているとか。
「恵!あんたまた洗濯物一緒に洗ったわね!?」
「入ってたの知らずに入れちゃったから。ごめん……。」
「全く使えないわね!」
そう言うと姉さんは部屋に戻っていった。
僕と姉さんは、ハッキリ言うと仲が悪い
何をしたかわからないけど、嫌われているのは確かだ
趣味のピアノも帰宅してから姉さんが帰ってくるまでの
ほんの僅かな間しかできない。
以前、うるさいと怒られた事があったのだ
高校を卒業したら一人暮らしでもしようと思う。
次の日、学校に行く用意を済ませた僕は家を出る
すると隣の家から女の子が出てきた。
都島 咲
高校1年生 身長158㎝
吹奏楽部所属 恵の幼馴染
可愛い系の美少女で告白が後を絶えないらしい。
姉さんと同じく学園美少女10傑に入っている。
「おはよう……。」
「………………。」
僕は挨拶をしたが無視される
咲はこちらを見ると早足で学校へ向かった。
(昔は仲が良かったんだけど、なんでこんな事になったんだろ?)
今日も学校での虐めを耐え抜いた僕は
家に早足で帰宅する
いつものようにピアノを弾こうかと思ったが
昨日の動画を思い出し
もう一度見ることにした
(作詞作曲ポンデル って、この曲ってオリジナルだったんだぁ)
僕もやってみたい!!と
天啓が降りてきた感じがした僕は
夢中で作詞作曲に取り掛かった
学校へ行き、帰って作詞作曲を繰り返してようやく1曲完成した。
自分で歌ってみると以前のような空白は無くなっていた
満足感や達成感で嬉しくなり
ベッドで悶えていた時にふと思う
(僕も動画の人たちみたいに配信できたらなぁ。)
気になったので必要なものをネットで調べて
小遣いと相談した。
僕の貯金でも何とかなりそうだったが
今後のことも考えて、良いものを揃えておこうと思い
「お母さん、やりたい事があるんだけどお金が足りなくて……」
バイトして返すと言ったら、お母さんは快く貸してくれた
そして6月、体育祭も間近に迫った頃
機材を揃えようやく動画を撮り終えた僕は
早速ReTubeに動画をアップした。
(ああ、どんな反応が返ってくるんだろ。アンチコメントがついたら嫌だなぁ)
色々な事を考えながら、待っていた。
だが再生数は0のままで
世の中はそんなに甘くない、という現実に肩を落とした。
再生数が動かないので僕は諦めて
次の曲を作ることにした。
(まあ、その前にバイト探さなきゃなぁ〜)
お小遣いの前借り分を返すため求人誌を漁る。
面接に来たのは漫画喫茶アムーレのホール・調理スタッフの募集
接客は陰キャだからお察しで
料理は家でも作る事があったので調理スタッフで応募した。
(少しでも綺麗にしていかないとなぁ。 第一印象が大事だよ!)
髪の毛を後ろで縛り、少しワックスでサイドの髪を整えた
アムーレは最寄駅のビルの3階で徒歩でも行ける距離だ。
店舗の中は清潔で
まだオープンして間もない感じだった。
「あの〜。すいません……」
「いらっしゃいませ、当店のご利用は初めてですか?」
綺麗な女性の店員さんに少し緊張してしまう
「いえ、その面接に……」
「え? あ、ごめんなさいね。すぐに店長呼んできますので。」
(綺麗な人だったな〜 大学生かなぁ?)
「初めまして、とりあえずこちらに来てくれるかしら?」
「はじめまして、よろしくお願いします」
店長も女性でキャリアウーマンみたいな人だった
「私は店長の天王寺 綾香です、とりあえず履歴書をもらえますか?」
僕は履歴書を渡す
「《《ときどり》》でいいかしら?」
「はい!」
「時鳥メグミさんは、今までバイトの経験はあるかしら?」
「あ、その。メグミじゃなくてケイです。」
「あら、ごめんなさい。それで時鳥さんはバイトの経験はあるかしら?」
「いえ、ありません。」
「それじゃあ家で料理とかの経験は?」
「母さんと2人だった頃はよくしてました。」
「じゃあ、最後になぜうちを選んだの?」
「料理には自信があったのと家から近かったので選びました。」
「宜しい、採用します!こんな可愛い子、逃す手はないものね。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
(可愛いって、なんか恥ずかしいな。)
「じゃあ、いつから来れるかだけ教えてくれる?」
「明日以降ならいつでも大丈夫です」
「それじゃあ、明日からお願いしていいかしら?」
「わかりました。」
「今日はお疲れ様でした。」
天王寺店長に見送られたあと
そのまま家に帰ると姉さんがいた
「あんた。どこ行ってたの?答えなさい!」
(なんでこんなに怒ってるんだ。僕が何かしたの……。)
姉に強い口調で言われた僕は
流石に理不尽だと思ったので言い返してしまう
「姉さんには関係ないよ…………」
「なっ!?」
僕は逃げるように部屋に入った。
次の日、学校へ行くと
「昨日駅前でめっちゃ可愛い子見つけてさ、声かけたんだけどダメだったわ」
「ヘェ〜。ちなみにどんな子だった?」
「パーマかけてて髪を後ろでまとめてる感じかな、胸はなかったけど顔はめっちゃ可愛かったぜ」
「今度見かけたら俺も声かけようかな〜」
(そんな可愛い子なら僕も駅前にいたし見てみたかったかも……)
罵倒されながらも授業を乗り切り
僕は制服のままバイトへ向かう
アムーレには昨日会ったバイトのお姉さんが受付に居た
「おはようございます。今日からよろしくお願いします」
「え? えっとぉ〜。店長とお約束ですか?」
「ま、まあお約束というか………」
「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「時鳥 恵です。」
「店長を呼んできますので少々お待ちください」
(あ、髪の毛あげてなかった!!)
「時鳥さん、お待たs……え?」
僕は軽く前髪を上げながら
「えっと、時鳥です」
「あら。髪の毛下ろすと、全然違うから分からなかったわ。」
「すいません。」
「じゃあ早速着替えてもらえる?」
「はい。」
僕は制服を受け取ると更衣室に案内された
指定されたロッカーには僕の名前が貼られていた
店長がいなくなったのを確認して着替え始める
髪の毛も後ろで纏めてワックスで少し整える
(これでオッケーかな……)
更衣室を出ると店長と大学生?の人がいた
「すいません。お待たせしました」
「えぇ! さっきの子って昨日の子だったんだ。」
「髪の毛でここまで変わる何てね。とりあえず自己紹介からお願いね、澪」
「岸和田 澪です。大学1年生で趣味はゲームで嫌いな物はピーマン宜しくね♪」
「と、時鳥 恵です。えーと、趣味はピアノです。よ、よろしくお願いします。」
「今日は澪についてもらって仕事のやり方を学んでちょうだい」
「じゃあ、けいちゃん行こっか?」
(けいちゃんって………)
「岸和田さんよろしくお願いします。」
「澪でいいよ。女の子同士仲良くしよ♪」
「え? あ、あの……僕は男です。」
「ええええええええええええ!?」
驚きながら店長を見る澪さん
「………………」
無言で頷く店長
「ご、ごめんなさい。けい………くん」
「いえ、大丈夫です。」
そして僕は澪さんに一通りの仕事のやり方を聞いた
アムーレは漫画喫茶だが店内にダーツやビリヤード
さらにカラオケまである。
従業員も澪さん以外に3名の女性を紹介してもらった
全員、僕を女性だと思っていた。
調理の仕事を教わるのかと思ったが
調理のオーダーはあんまり入らないらしく
たまに注文が集中する時があるらしいが
ない時は基本ホールだけだとか
ブースの清掃、本の整理、ドリンクバーの管理
その他、諸々を教わった。
集中して仕事をしていたら
あっという間に時間が過ぎて終業時間になる
「お疲れ様。時鳥さん、仕事はどう?」
「一通りは教わりましたけど、なんとかやっていけそうです。」
「けい君は将来有望ですよ店長!」
「ふふ、そうね。それとシフトを組んだんだけど、確認してダメな日は言ってちょうだいね」
シフトは概ね店長が組んだシフト通りで問題なかった
バイトが終わって帰ろうとした時、声をかけられる
「けい君けい君。なんで髪の毛下ろしちゃうの?勿体無いよ?」
「え、あ。こ、このほうが落ち着くんです。すいません」
「別に謝らなくてもいいよ。こっちこそゴメンね」
「いえ、あ、すいません。」
「ぷっ。あはははは!けい君、謝りすぎだよ。」
「ははは。そうですね、すいません。………あっ!!」
アムーレの皆さんは優しくて、店長や澪さん
他の従業員の方達も話しかけてくれて
本当の仲間になれた気がして幸せな気持ちになれた。
それからしばらくは学校が終わったら
バイトに行くという日々を繰り返していた
とにかく楽しかった、自分の居場所がここにはあった
だから忘れてたんだ。
ReTubeにアップした動画の存在を………。
皆さんの、ご意見ご感想お待ちしております。