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豆乳の恩返し?

作者: 雨流吟遊

生暖かい目で読んでね!

昔々ある所に、ブラックすれすれの灰色会社に勤めている平社員のアラサー男がおりました。

その男が毎日のご褒美、チータラとビールを飲み食いしようと取り出したときです。


《ドンドンドン!》


「へ?」

チャイムがあるのに何故かノックで男を呼び出す夜中の訪問者がありました。

男はノックに気を取られ、インターホンで相手を確認する事なく扉を開けました。

「こんばんは!」

扉を開けると、ひとりの…


《バタン!》


…男は扉を閉めてしまいました。

「えぇ…?何あれ幻覚…?働きすぎ?」

男は自分の過労、それによる幻覚を疑い目を擦りました。

ブラック間近のグレー会社勤めです、当たり前の反応でしょう。

そして男は扉を開けました。

「開けたくない…放置したら帰らないかな」

そして男は扉を開けました。

「えー…絶対不審者だよ…チラッと見えたけど絶対不審者だよアレ、開けちゃいけないやつだって」

そして男は扉を開けました。

「いや開けないって。このご時世だよ?普通に考えて開けないから」

開・け・ま・し・た。

「ハイ」

扉の先にはひとりの人(?)がちょこんと佇んでいました。

豆乳パックに可愛らしいイラスト風の顔が付いて、よくある棒に丸くっつけた腕と脚が生えている存在がいました。

日曜朝に放送される、児童向けの某菓子パン頭のヒーローのアニメに出てくる登場人物がまんま現実に出てきた感じです。

更に掘り下げるならば、某細菌的な敵が召喚する三色のカビのアレな感じです。

「すみません、道に迷ってしまいまして…今晩泊めて頂けませんか?」

The・豆乳な生物はそう切実に聞きました。素晴らしい。まさに王道、昔話でよくある恩返し関連での理想的な展開です。

「いやもうちょっと頑張れよ!まんま豆乳じゃん人間要素薄ッ!豆乳が恩返しに来た感隠す気ないじゃん!」

「…これでいかがですか?」

おっと豆乳的生物のファンシーな顔面がリアルな実写顔面に。

人間要素増し増し、泊める一択。これでもう何も問題はありませんね。

「いや有るよ!なんで髭ボーボーの中年のおっさん顔なの!?」

間髪入れぬ男のクレームに豆乳的生物は少し困り顔をしてから、美人な女性になればいいと思い至ります。

豆乳的存在は、再び顔を変えてみせました。

麻呂眉、鉤鼻、切れ長の一重の目。しもぶくれの頬に、若干体型?も変わってぽっちゃり気味に。

なんて完璧な平安美人。かぐや姫も尻をまくって逃げ出す事間違いなし、確実に「俺の嫁さん美人だろー」とマウントをとれるでしょう、歯噛みして悔しがる事請け負いです。平安貴族達が。

「なんでー!?なんでそうなるのー!?現代の価値観で考えようよ!」

文句の多いやつだな。

「ちょっとナレーション、本音出てますよ」

…こほん、三度目の正直、顔を変える豆乳っぽい何か。

なんて健気なんでしょう、恩返しのためなら細かい要求もこなす。涙がちょちょぎれそうです。

豆乳っぽい何かの顔は、現代で100人中99人が超絶美人と答える顔に変わりました。

橋本○奈と石原○とみ…その他もろもろ。

とにかく美人の良いとこどりした感じです。

え?100人中99人なら、あと1人はどうなんだって?忘れるなかれ、人には好みというものがあるのですよ。

ああ失礼脱線しました。男は豆乳的存在のあまりの変わりように驚いて、少しの間声が出ていませんでした。

その沈黙を肯定的なものと受け取ったらしい豆乳っぽい何かは、うきうきと室内に入ろうとします。

それを、部屋に入る寸前で他ならぬ男が止めました。

「これの題名って『豆乳の恩返し』だよね」

おお急にメタいメタい。でもそうですよ、その通りです。

「昔話の恩返しの形式に則ってるなら…君を家には入れられない。だって昔話だと『泊める=結婚』じゃん!」

ハッ、何を今更。

「ハッ、何を今更」

「ハモるなナレーションと豆乳!」

昔話における恩返しの様式美、『泊める=結婚』。部屋に入った時点でこの方程式は成立とみなしていいでしょう、言い方は悪いですが既成事実扱いです。

「ですので、失礼しますね♡」

サッ(部屋へ行く先を塞ぐ音)

スッ(かわして部屋に入ろうとする音)

サッ(更に行く先を塞ぐ音)

さぁー始まりました、恩返しに来た豆乳vs豆乳を嫁に取りたくない男の家侵入攻防戦!

顔に合わせて現状モデル並みに細身の豆乳的生物が掻い潜ろうとしています!「内容量少なくね?」というツッコミはスルーしこの体型を維持している豆乳的存在が優勢です!

おおっとここで男が豆乳的何かを完全ホールド!見事な上四方固めです!コンクリート上で行なっておりますが膝は大丈夫なのでしょうか!

やはり辛そうだ!暴れる豆乳なホニャララを抑えるために膝をコンクリートに押しつけて力むことを強要されています!

…おっとここで?男が?いつの間にか持っていた白旗を?…あげました!

勝者!恩返しに来た豆乳の化身(仮)です!

「部屋に入ってもよろしいですね?」

「…ワカリマシタ、ドウゾ」

漸く素直になった男は豆乳(暫定)を部屋の中に招き入れるべく体をずらしました。

それを確認した豆乳(家庭)は

「待て『かてい』の文字が不穏すぎる」

…チッ、豆乳(仮定)は、どこからかホイッスルを取り出して思いっきり吹きました。


《ピュルルルルルルルルィ!》


安物の子供向けホイッスルの、転がるような、詰まったような不思議な、かつ間の抜けた音が空高く響き渡りました。

その音を近所迷惑を一切考慮しないまま数秒吹き切って、ふぅ、とどこか満足げな顔をして室内に入りました。

その瞬間、どやどやどや、と複数人の足音が聞こえたかと思うと、次から次へと豆乳もどきが入ってきました。微妙に顔つきが違います。

「え何何何何!?」

「はいみんな集合ー!」

それらを呼んだ豆乳(超美女)が号令をかけると、洗練された軍隊の如き速さで整列しました。

「苺だぞ!よろしくな!」

「チョコミントだ」

「甘酒やで〜…ヒック」

「バニラアイスですぅ」

「プリンでございますのよ!オホホホホ!」

「で、私プレーンですね!改めてよろしくお願いします!」

「ちょっと待てちょっと待て一人キャラ濃すぎんだろ!なんで酔ってんの!?」

それはまあご都合的なあれこれですよ。

6パック合わせてとにゅレンジャーですね。

「5人じゃないのか…」

常日頃あなたが飲んでる味の豆乳大集合ですからね。文句はご自分にどうぞ。

そして、豆乳たちはお互い顔を見合わせてひそひそと話始めました。

「恩返しするぞー!」

「具体的に何するのぉ?」

「やはり家事でございましょう!恩返しの基本でしてよ!」

「酒用意するんはだめなん〜?…ヒャック」

「いや決めてなかったんかーい!決めとこうよそこはぁ!」

さあ男のツッコミをフルスルーして話し合いを進めていく豆乳たち。

スルースキルはマックスまで鍛え上げられているようです。

そしてチョコミント豆乳がパソコンを取り出して高速タイプを始めました。

他の豆乳たちは家事を開始しました。

統率の取れた動きです。

綺麗になっていく部屋、出来上がっていく中身入りタッパー、消えていく洗濯物の山。

そしてチョコミント豆乳が唐突に、唖然としている男の方にパソコン画面を向けました。

そこには株式会社のホームページが。

「え、なにこれ」

「あなたの会社ですか?」

「豆乳専門の会社ってゴリゴリに書いてあるんだけど?身に覚えないんだけど?」

「グレー企業よりこちらの方があなたに向いてますから」

「え!?いや、うん、え!?」

「経理運営は任せてください、あなたは方針を固めていただき、その毎日豆乳を飲み続けて肥えまくった舌を商品開発に役立ててくださればそれでいいので」

「展開早くない!?」


ちなみにこの後男はグレー会社を止め、新しい投入株式会社初代社長になりました。

重役社員はもちろんとにゅレンジャーです。

やたら美味し過ぎる中毒性のある豆乳は売れに売れ、男の生活は安泰のものとなりました。

なお、さらに掘り下げますと。

「幸せになろうな!俺たち!」

「なんで結婚するのは苺味となんだよぉぉぉぉ!」

苺味豆乳と結婚し、しあわせになったとか。

貴方も毎日何か食べたり飲んだりすると、恩返しに来るかもしれませんよ?

ヤマもオチもない、そんな馬鹿らしい肩の力を抜いて読めるかもしれないお話は、ここでおしまい。

はい、ちゃんちゃん。

ありがとうございましたー!

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― 新着の感想 ―
肩が楽になったわ〜。 良く効いたわ〜。 ありがとう〜。
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