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「先輩! こっちこっち」
僕とノエルは、試合会場に来ていた。とは言っても今日は僕らが戦闘をするわけではない。ただ観戦に来ている。一緒に試合観戦することが、ノエルが僕に頼んだ望みだった。
三人とも、結局僕も楽しめるような事になったから、結局僕が祝うというより一緒に楽しむみたいなことになっている。嫌じゃないけど、ちょっと不完全燃焼だ。
「先輩は、他のチームの試合をよく見たりする?」
「次に戦う相手の研究とかはするけど、娯楽で見に行ったりはしないかな。ノエルは好きなの?」
「うん。昔からずっと好き。今日はAランクの試合だし、楽しみだね」
そう言って、ノエルが嬉しそうな顔をするのだから、本当に好きなのだろう。
通常、Aランク帯の試合は人気だからほぼ満員になる。僕らは少し遠めの場所から、闘技場での試合を見物することに決めた。
「今のAランクの状況、どのくらい知ってる?」
僕が知っているのは、レオンたちのチーム。クロがいるチーム。そして誰もが知っているミュウのチーム。全部で六チームいるはずのAランク帯の半分。それが僕の知っているチームだ。その他は、まだ研究どころか名前すら知らない。
「全然分からないよ。自分のことに必死だったから、あんまり調べる時間がなかったんだ」
正直に答えると、ノエルはニヤリと笑う。
「ふーん。そうなんだ。…………それじゃあ、私の口から説明しましょう!」
仰々しい口調で、自慢げに話し出すノエルが可愛い。
「まずは現在勝率一位。リーダーのミュウが筆頭のチームだね。誰も寄せ付けず、一気に頂点まで駆け上がった、人気、実力どちらもトップのチームだよ」
今の学園の頂点。僕らの前にランク飛ばしで上がることになった有名なチームだ。僕も一度ミュウの姿を見たことがある。
噂では、この街に留まらず、四年生の今の段階で既に国の方からスカウトが来ているのだとか。それほどの実績と知名度を誇っている。
「そして二位。リーダーのセシルを含めて、全員が凄い魔法使いで、総合戦力が最も高いチームだと思う。ここかミュウのチームがAランク一位をいつも競っている感じかな」
そして、クロがいるチームだ。最近は実力を伸ばしているみたいだね。前まではAランクで勝てないって嘆いてたから。
「説明ありがとう。そして今日見るのが、三位、四位のチームだったよね」
「そうだよ。後は試合を見ながら、じっくりと説明してあげる。私詳しいんだよ」
胸を張ってそう言うノエルは、本当によく試合を見に来るようだ。色々な情報を話してくれた。
そうして始まった試合は、想像以上に熱く見ることが出来た。ハイレベルでありながら拮抗しているので、見ている方も熱狂的になれる。どっちかを応援しているということはないけど、楽しかった。
試合があっという間に終わったような気がする。そのくらい目の離せない戦いだった。
「凄かったね。特に最後の大魔法。フィアより威力高かったと思う」
ノエルの感想を、認めざるを得ない。最後の決め手に使われたものは、凄まじい威力の魔法だった。あれがAランク基準では必要になってくるのだろう。でも、フィアならAランクに上がるまでにあのくらいに到達しそうな予感はある。それを感じることが出来たのも、今日の収穫だ。
「あれが三位、四位…………」
でも、そのレベルの高さに少しも恐怖を感じることはなかった。ただ、早くあのレベルで戦いたいというワクワクする気持ちだけが、心の中で疼いている。
「さすが先輩だ。仮想敵だし、戦力分析は当たり前ってことかあ」
そう言われると、素直に楽しむ気持ちと真剣に観察する気持ちが半分ずつだったから反応できない。
「言い忘れてたから、今の五位、六位の事も教えておくね。五位のチームはもうそこでずっと停滞してる。もう上のチームに勝つことは諦めたんじゃないかな。だからあまり気にする必要はないと思う。そろそろ落ちていくだろうから」
最上位であるAランクまで昇った以上、それ以上頑張るつもりはないってことか。そんな事もあるのか。
「そして、現在Aランク帯で最下位のチーム。先輩が前に所属していたところだね」
ノエルの発言に、少し驚いた。知ってたのか。サラとレイラ先生くらいにしか、僕が直接言っていない。ロイドさんも言ってたし広まってはいるんだろうけど、誰から聞いたんだろう。
「サラから聞いたの?」
質問に、ノエルは首を振る。
「違うよ。…………少し、私の話をしてもいい?」
何か、言いたいことがあるなら聞きたかった。了承すると、話し始める。
「私物心ついた時にはこの街に居て、ママもあんなだったから、この学校にはよく連れてこられた。だから、試合を見るようになるのもずっと昔からの習慣みたいなものだったの。ランクの低いところも、高ランクの綺麗な魔法もたくさん見てきた。思えばその時から魔法というが好きだったのかもしれない」
それは、羨ましい環境だ。英才教育というより、ノエルにとって、ただ魔法というのが当たり前に感じていたんじゃないだろうか。
「でね、ある時見つけたの珍しい魔法使いを。ちょっとしか魔法は使わないけど、それ以外の場面で、大きく試合に影響を及ぼす凄いリーダーだった。最初は奇妙で見てたんだけど、そのチームがどんどん上がっていくから、いつの間にかファンになっちゃって…………」
段々話が見えてきた。それは――
「もしかして、僕の事?」
「当たり!」
元気に笑ってノエルは答えた。何となく、僕のことを前から知っているのかなと思う節はあったけど、そういうことだったのか。
「フィアたちとチームを組むって聞いた時に驚いたから、事情を調べたの。私は許せないと思った。だってどう見ても先輩があのチームを成長させて、引っ張っていた。それは最初から見ていた私が保証する。追い出すなんて酷いことをされる理由はなかったと思う」
僕はもうあまり気にしていないけど、それでもノエルにとっては、大事なことだったのかもしれない。
「今先輩と同じチームで戦えていることが嬉しい。私にとっては誰よりも憧れの人だったから。フィアの事もあるし、私は先輩の為に全力で戦うよ。頂点にたどり着くまで…………今日はそれを聞いてもらいたかったんだ」
その覚悟が本気だと、僕にすぐ伝わってきた。
「ありがとう。明日から、また頑張っていこう」
「うん!」
今日は良い日だ。上の景色を見ることが出来て、ノエルとの会話は楽しかった。早く、あの時のランクに戻らなければならない。ノエルが期待してくれているだろうから。
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