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魔法には、支配権というものがある。例えば、僕が生成した魔法。これは僕に支配権がある。だから自分が最も制御しやすいものであり、他人が僕の魔法に干渉することは難しい。
次に魔法で生成していないものに干渉する場合。これにはいくつかの制限がかかる。まず適性を持っていないと操作することすら難しい。次に魔力消費量が通常より増える。これらの制限の他にも、各属性によって色々な制限がある。
そして、空間魔法の制限の一つが、空間内の物体に対する干渉が出来ないというものだ。空間自体を捻じ曲げたり交換しても、中に入っている人や物体が対応して歪んだり変わったりはしない。ただ空間という外枠を動かすだけ。それが絶対のルールだった。
しかし、生成したらどうなるのかというのを僕は知らなかった。サラも同じように分からなかったから試したことがあるのだろう。
そして、結果はあの通りだった。自分の生成した空間の中に人や物体を入れることが出来る。そしてそれに干渉することが出来るということだ。もちろん空間の中で避けたり、防いだり出来るだろうし、あの空間から抜け出す事だって不可能ではないだろう。だけど、それはかなり難しいことに違いない。
サラはヒューラさんを倒した後、魔力を使い果たして倒れた。相当の魔力量を消費する魔法だったのだろう。
「何、あれ?」
隣にいたフィアも驚いているようだった。
「サラだって成長してるってことだよ。さあ、模擬戦も終わったことだし、サラを回収してロイドさんたちに挨拶と感謝だけ伝えに行こう」
「わかったわ」
「ロイドさん、今日はありがとうございました」
サラが起きるのを少し待ってから、僕らは協力してくれた三人に挨拶している。本当に有意義な体験になった。
「いや、私の方こそありがとう。君との闘いは貴重なものだったよ」
謙虚にそう言うロイドさんの顔は、晴れやかだ。
「リーダーを立ち直らせてくれて感謝する。お前は凄い奴だ。もちろんお前のチームの仲間もな」
「そうよ。なんならあたしたちの全敗だし、こっちの方が得られるものは大きかったと思うわ」
ヒューラさんは悔しそうにそう言った。ほんとよく勝てたと思う。サラたちは、勝てたことで自信がついただろうし、早く上に行かないといけないという思いも強くなった。そしたらこのレベルの戦いをずっとしていける。
「今回の恩は返させて欲しい。私たちにはもう卒業まで時間がないが、それまでの間に何か困ったことがあれば、協力しよう」
そこまで言ってくれるのか。僕は大したことはしてないんだけどね。
一通り僕がロイドさんと話して、その日の模擬戦は終わった。
僕とフィアの部屋で、その日の感想を僕らは話し合っていた。
「あれがCランクの強さなんですね。楽しかったです」
確かに強かったけど、あの人たちは実際Bランクくらいの力があると思う。それを倒してしまうのだから、やはりフィアたちのポテンシャルの高さはおかしい。
「それはそうだけど、サラの最後の魔法。あれは何だったの?」
ノエルが疑問に思っていたようでそう聞く。僕も、種は分かっているけどサラの口から一応聞いておきたい。
「今まで通りの空間魔法なんですけど、少し前に思い付きまして、実際一か八かだったんですよね。練習の時は成功しませんでしたから」
そうだったのか。それを思いつくセンスもそうだけど、終盤の終盤、ぶっつけ本番で成功させるその制御能力は、やはりサラが逸材であることを表していた。これから、サラはどうなっていくのだろう。
「そうだったんだ。私、完全にやられたと思ったよ。良かったあ……」
「言っておいたら良かったですね。すいません」
そう言って、サラは少し笑った。
「私、また活躍してないし、サラの見せ場を作っただけだよ……」
そんなことはないと思う。あの制御技術があってこそ、隙が生まれた。ヒューラさんがサラの近くまで来た。狙ってなかったとしても、いたことによって利益があったのだから間違いなくノエルだって貢献している。
「ノエルはまだいいじゃない。私なんて、レンに一言貰えなければ勝てなかったかもしれないのよ」
フィアが、ノエルにそう言った。
「それこそ僕なんて何の関係もないよ。フィアが自分で考えただけだ」
フィアは、褒められて嬉しそうだ。そしてそれをノエルが指摘して、喧嘩になる。その様子を見て僕とサラは笑う。この和やかな空間が僕は好きだ。こうしてずっと仲良くしていきたい。
そんなことを思っていた時、僕らの部屋の扉をコンコンと叩く音がした。誰だろう。あまりこの部屋を訪ねてくる人というのは思い浮かばない。
「誰だろ?」
フィアも思い当たる節はないようだ。僕が代表して扉を開けに行く。
「ハロー。ノエルはいるかしら?」
「え……ママ?」
その姿は、僕だって何度も見たことがある。この国で最も有名な魔法使い。ノエルの母であり、この学校を運営している理事長。名前はアメリアさんという大魔法使いだ。
「何の用があってここに来たんですか? もしかしてノエルを探してたとか?」
僕がそう言うと、アメリアさんは首を横に振る。
「まあノエルに会いたかったことは否定しないけど、用件は別。あなたがリーダーのレン君よね? なるほど、ノエルが懐くのも納得ね……」
そう言ってジロジロと見られるのは、少しくすぐったかった。僕が嫌がっていることに気付くと、直ぐにアメリアさんは止めて話し出す。
「ごめんなさいね。手短に話すわ。用件は一つだけ。あなたたちのチームの昇格が、今朝の会議で決まったから知らせに来ました。明日からあなたたちは一つ飛ばしてÐランクになります」
その知らせを最初、僕は信じられなかった。それほどランク飛ばしというのは珍しい。僕が聞いたことがあるのは二年程前、あの有名な女子生徒の時だけだ。
「それじゃあ、私も忙しいから……またね」
言いたいことだけを伝えると、ノエルに笑顔で挨拶してから、嵐のようにアメリアさんは去っていった。雰囲気がとても大魔法使いとは思えないけど、僕が感じる魔力量や、強さは相当なものだった。
「ええ……。重要なことを軽く言ってしまうのね」
フィアも驚いているようだった。
「ごめん。ママはそういう人だから」
普段からずっとあの調子の元気だというのはそれはそれで凄いな。
「なんだか、実感が湧きません。この間まで退学間近だったのに、急にÐランクまで上がれるなんて……夢みたいです」
サラは今、ふわふわとした気持ちなのだろう。それだけ、努力してきたという事だって僕は伝えたい。
そうして、僕らはÐランクまで昇格した。ロイドさんたちも合わせて負けなし十連勝。聞いたこともないような大記録だ。
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