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「あの、レンさんですよね? 前の試合見てました。応援してます」
僕とサラが二人で歩いている時にそう声を掛けられる。すぐに去っていったが、こうして知らない一年生に話しかける機会が最近増えてきた。Fランクなのに派手な試合を繰り返しているのが人気なのかもしれない。僕らの勢いは衰えることがなく、とうとう九連勝まで辿り着いたくらいだった。
「最近の私たち、妙に人気が出てきてませんか?」
「フィアやノエルは元々の知名度があったし、注目される要素はあったのかもね」
本人は全く気にしてなさそうだったけど、天才王女復帰みたいな噂が何度も聞こえてきた。
「まだFランクですから、過剰に言われていると恥ずかしいです」
「そうだね。ゆっくり成長して、その期待に見合う魔法使いになればいいよ」
まだまだサラには発展の余地がある。ゆっくりと強くなっていけばいい。
「それは分かってるんですけど……でも、最近は手応えが無さ過ぎて成長しているのかか分からないんですよね……」
それは僕も思っていた。Fランクじゃもう相手にならなさすぎるのだ。モチベーション面を考えても、何か考える必要がある。そう思って、すでに手は打ってあった。
「その対処はもう考えてるんだ。明日の練習、楽しみにしておいて」
サラは、僕の言葉に驚いていた。そんなに早く対応してくれるとは思ってなかったのだろう。
「何をするんですか?」
「今は秘密」
「ええ。隠さないでくださいよ」
別に言えないわけじゃないけど、僕も少し頑張ったし驚いている姿が見たいんだ。許してくれ。
僕らはそうして楽しくその日を過ごした。
次の日の練習室。いつものサラたちに追加で、三人の男女が来ていた。
「レン、この人たちは?」
フィアが真っ先に聞いてきた。
「今日は模擬戦をしてもらおうと思って、何とか頼んで引き受けてもらったんだ。こちらの男性が今回対戦してもらうCランクチームのリーダー、ロイドさん」
「Cランクとの模擬戦? そんなの聞いてないんだけど……」
「言ってなかったからね」
強者との闘いを今のうちに経験させておきたかった。黙っていたのは前情報なしで新鮮に楽しんでほしかったからだ。
僕は、他のメンバーにも自己紹介をしてもらえるようロイドさんに促す。
「私がリーダーのロイドだ。期待の新チームが模擬戦の相手を探していると聞いてね。一度見ておきたいと思ったんだ。こっちのでかいのがダンクで、そっちの赤い髪の女がヒューラ」
「うっす」
説明の通りでかくて筋肉質のダンクさんは、その風貌にも関わらず、おとなしそうだった。
そしてロイドさんがヒューラさんにも一言言うように伝える。
「あたしがヒューラよ。今日はよろしくね」
赤い髪が似合う明るい女性だ。ロイドさんとしか面識がなかったから、サラたちと同じように二人とは僕も初対面だった。ちなみに彼らは全員六年生で卒業間近だ。だからこそ受け入れてくれたという面もあるのかもしれない。
そして僕の方も一通りサラたちを紹介する。意外とこういう経験はなかったので緊張する。
「早速始めましょうか」
顔合わせも終わり、楽しみになってきて僕はそう言った。
「そうだね。時間もあまりない。迅速にやろう」
ロイドさんもそう言ってくれたので、僕たちは距離を取って準備を始めた。
「突然でしたけど、楽しみです。今の私たちがどれくらい通用するのでしょうか……」
サラの言葉に僕は頷く。
「先輩、魔力の温存は良いの? 魔法石まで用意しているみたいだけど…………」
「うん。出来るだけ節約するつもりだけど、真剣に勝つつもりでやるよ。Cランクとの闘いなんて今は貴重だし、何より僕も楽しみだから」
「そうなんだ……。作戦とかは決めてる?」
「今日は自由でいいよ。練習だし、何よりそうした方が発見も多いだろうから」
「わかった」
そうして準備が終わった合図をすると、模擬戦が始まる。
すると、赤い髪を揺らしてヒューラさんが凄いスピードで走ってくる。
「ノエル。行きましょう!」
サラがそう言ってノエルに呼び掛ける。そして二人でヒューラさんの相手をしに行った。満面の笑顔で直ぐに行ったのだ。サラも高揚していたのだろう。
「とりあえずあっちは二人に任せようか。僕らは一人ずつ相手してもらおう」
ロイドさんたちもそのつもりのようで、少し離れた場所に一人ずつ立っていた。
先手は譲ってくれるという事でもあるのだろう。
「じゃあ、頑張ってねフィア」
「うん。レンもね……」
散開して僕らはそれぞれで戦い始めた。
ロイドさんの元まで辿り着くと、彼はゆっくりと構えた。
「レンと呼んでもいいかな?」
「はい。是非、そう呼んでください」
そう聞いてから、何故かロイドさんは話を始めた。
「今、君の噂が上級生の間では話題になってるんだ。Aランクチームから、理不尽に追い出された人がいるみたいな感じでね。それは、本当なのかい?」
なんでそのことが広まってるんだろう。もしかしてクロかな。僕は事実を話しただけだ。って言ってる姿が頭に浮かぶ。
「理不尽かどうかは分かりませんけど、事実ですよ」
「そうか。私はそれを聞いてから、君に聞きたいことがあったんだ……。Aランクというのは並大抵で辿り着けるようなものじゃない。それ程の高みのはずだ。そこから一気に下まで落ちる絶望は私には想像すら出来ない。何故立ち上がれる?」
真剣な顔で言われたその疑問に、僕は答えなければいけない気がした。ロイドさんの気迫のようなものから、そう感じたのだ。
「それは……僕だって自分で立ち上がれた訳じゃないんです。ただ、僕を支えてくれる人がいて、その期待に応えたいと思って、そして夢を諦められなかったから。それだけですね」
そう。諦めが悪かった。それだけの事なのだ。
「君は、強いな…………。すまない。時間がないと言ったのにこんな話で使ってしまって。すぐに始めよう。先手は君に譲る」
再びロイドさんが構えて、ようやく試合が始まった。
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